或るルポライターについて
涼月琳牙
或るルポライターについて
※ 一部、やや猟奇的な描写が含まれます。ご了承ください。
昭和三十二年八月七日
身辺調査対象は男性。推定年齢が二十五歳前後。
職業はルポライターを生業としているらしい。記事を書いて出版社に売り込み、原稿料で生計を立てているそうだ。
しかし対象は銀幕スタアの特ダネや政財界の暗部などを追いかけているのではなく、誰かが体験した「怪奇譚」を記事に仕立てているらしい。
出版社を訪問する対象を張り込んで、同日一〇時〇六分、尾行を開始。
以下、対象の動向。
十一時三十五分、大衆文化誌を発行する出版社・甲社(仮名)を訪問。
十二時十五分、甲社を出る。そのまま街を歩き移動。
十三時〇四分、対象は
羽振りはいいのかもしれない。ルポライターとは儲かるものなのだろうか?
怪しい素振りは見せない。
十五時〇七分、対象は
(
ああ、あの若いお客さんですよね? ハンチング帽を被った。
いやあ、見ていて気持ちのいい食べっぷりでしたねえ。
うちの海鮮丼はネタの豊富さが売りなんですよ。マグロ、タコ、アジ、そしてイカね。イカはこだわってて、コウイカとヤリイカの二種類を載せているのよ。
店の裏手に
あのお客さん、イカを気に入っていたね。好きなの? って尋ねたら、
「最近、大好きになったんです」
って言ってたねえ。
(築地 大衆食堂・店員の話 八月七日)
ああ、あの若いお客さんでしょ?
あの人、最初は普通にもんじゃ焼き食べてたんだけどね、突然こっち来て「今、あの場所が割れたみたいだ」って天井を指さすんですよ。
でも見た感じ何もないんだけど。からかうなよって
気になって調べてみたら、天井板の裏で、本当に梁に亀裂が入ってやがったんだ。
いや、あれ放っといたら危なかったね。
でもさ、ひびって言っても、ぱっと見にわからない細いものだったんだ。
あれが割れる音がした、とか言っていたけど。まさかねえ。
とにかく助かったよ。他にも客がいて賑わってて、全然わかんなかったから。
あの兄ちゃんに感謝だ。
(
昭和三十二年八月三十一日
この日は夕方から調査対象を尾行。
以下、対象の動向。
十八時二〇分、
十九時二十七分、対象は新宿から移動。中野方面に歩いていく。
二〇時〇一分、
二〇時〇七分、中野の同地区にて。対象を見失う。曲がり角を曲がったらもう姿が消えていた。おかしい、近くの家に入った様子もないのに。
(四十万探偵事務所 調査記録より ――調査員 四十万)
昭和三十二年九月五日
調査対象について、幾つかわかったことがある。
まず、対象は「怪奇ルポライター」という肩書で文筆業を生業としているそうだ。特別に話題になるような記事は書かないが、読み物としてなかなかおもしろいものを書くために、一定の人気があるらしい。
しかし対象本人はというと、どうも得体が知れない人物らしい。
まず、ルポライターを名乗って活動を始める以前の素性が不明である。
彼がどういう経緯で、いつ頃に業務契約を結んだのか、出版社に探りを入れたところ、誰もその経緯を知らなかった。
現時点でわかる限りの情報としては、
一.現在「迫りくる怪異」という題名で不定期に連載をしている
二.不定期に東京を離れ、取材のためにあちこちを訪れている
三.以前、数ヶ月だけカストリ誌の
対象がいつ頃から採用されていたのかを知る社員はいなかった。先代の編集長なら知っているかもという者もいたが、その編集長は故郷の北海道に隠居したから確かめられない。
引き続き、調査を続行する。
(四十万探偵事務所 調査記録より ――調査員 四十万)
境内のあそこの木のとこに、
そいつ、福引をやっていてな。一回五十円(現代の二五〇円くらい)でガラポンの器械回して、一等賞の黄色玉が出たらブリキの
その戦艦大和がなかなかの品でね。うちの息子も欲しがったから、一緒にガラポン回しに行ったんだよ。
でも、ああいうのってイカサマが多いじゃないか。だから的屋に確認したら、目の前で黄色玉をガラポンに入れて見せて、さあ回してみろ、黄色玉が出るまで何回回してもいいって言うんだ。
でも何回回しても外れの
子供が小遣いはたいてんのに景品がもらえないから。かわいそうでよお。
んで、俺ぁ少し躍起になっちまってよ。人形焼屋の
でも全然一等賞が出ないんだ。玉砕ってやつ。
イカサマだろう、ってケチつけてみても、的屋はその都度黄色玉をポケットから出して、器械の中に入れるんだよ。確かに黄色は入っているはずなんだ。
でも何回回してもそれが出ないんだ。
困ってたら、ハンチング帽被った兄ちゃんがどこからかやってきて、こう言ったんだ。
「器械の中には白玉しか入っていない」って。
的屋が怒って「よく見ろ、黄色玉をこうして入れてるじゃないか」って、新しい黄色玉を出して見せるんだ。
でも兄ちゃんが言ったんだ。
「白玉に黄色いチョークで色を付けている。器械の中で回っているうちにチョークの粉が取れて白玉になるんだ。何回も回せって言うのは、チョークを落としやすくするためだ」
それ聞いた鉄ちゃんが、的屋の野郎から黄色玉奪って見てみたらさ、本当に黄色いチョークの粉がついてやがるんだよ。
んで、兄ちゃんがまた言うんだ。
「器械を開いて玉を全部見てみろ。全部白玉だから」
今度は俺がガラポンの蓋開けて、中身全部出したんだよ。
そうしたら、本当に全部白玉しか入ってねえんだ。絶対に五個以上は黄色玉が入っていなくちゃならねえのに。んで、よおく見たら、全体的に粉っぽいんだよ。
そうなんだ、チョークの粉が中で散ってやがったんだ。
とりあえず、俺と鉄ちゃんと八っつぁんとで、的屋の野郎はシメといたんだがな。
例の帽子の兄ちゃんに礼を言って、よくイカサマがわかったな、って言ったら……。
兄ちゃん、こう言ったんだよ。
「器械の中が見えたからわかったんだ。全部白玉ばかりだった」
どういう意味かわからんが、あの兄ちゃんに感謝だな。
(
あの記者の方ですよね? あっ、ルポライターって言うんでしたっけ?
先生とお知り合いみたいで。僕は面識がありませんけど。
つい昨日にまた大学にいらっしゃったんです。本に挟んでいた――あっ、本っていうのは、その方に渡した外国語の本です。
話したら長くなるんですけど。先生の書置きに従って、とある本を一冊その方に渡したんです。
その本に千円札が挟まっていたからって、わざわざ返しに来てくださったんですよ。
律義な方だなって。
そう言えばこんなことをおっしゃっていましたね。
「頂いたこの本とてもおもしろいです。ありがとうございます」って。
でもね、その本って外国語なんですよ。
しかも
あの記者の方、羅甸語が読めるなんてすごいですね。研究職じゃないのが不思議だなあ。
――ところで、そちらの探偵事務所って、行方不明人の捜索とかやっています?
先生の行方がわからないままなんです。
どこにいっちゃったのかな。心配です。
(某国立大学 言語学研究室助手の証言 十一月十五日)
ルポライターの方ですか? えーと、あだ――嫌だわ、忘れちゃった。何か変わったお名前の人ですよね?
あの人、うちの入院患者さんに取材に来たんですよ。なんだかいろいろ訊いていらしたみたいです。
患者相手に無茶をしたか、ですって?
いいえ。わたし、同僚の看護婦と一緒に遠巻きに見ていたんですけど、そのルポライターさんはとても丁寧に取材をしてましたよ。
でも、その患者さん……ちょっと、心の治療をしている方だったんです。
それで、話をしている最中にまた様子が変わってしまって。
ルポライターさんはすぐに取材を打ち切って、帰られました。なんだか申し訳なかったですね。
そういえば――あのルポライターさん、帰り際に妙なことを言っていたわ。
「あの人から目を離さないほうがいい」……って。
その患者さんですか?
あの……亡くなってしまいました。つい先日でした。
その患者さんの死因? 言えません。守秘義務です。言えない決まりです。
でも……今思えば、ルポライターさんの言葉って、そういう意味だったのかしらって。
わかっていたのかしら。まさかね。千里眼でもあるまいし。
もう、いいでしょう? わたし忙しいんです。
(某総合病院・入院病棟担当 看護婦の証言 十一月二十九日)
ハンチング帽の
ええとな、一昨日の夕暮れのことだったんだけどよお。
突然、
で、よりにもよってそいつ
でさ、そこにあの帽子の兄ちゃんが通りかかったんだ。
そのあとがすごくってよう。
逆上して襲い掛かってきた酔っぱらいを、一瞬で投げ飛ばしたんだ。
ほらそこの板塀、割れてるだろ? 酔っぱらいがそこに叩きつけられたんだよ。
あんな細っこい兄ちゃんがだぜ? いやあ、たまげたね。何か武道とかやってんのかなぁ。とてもそういうふうには見えなかったけど。
でももっと驚いたのは、その後だ。
あの兄ちゃん、酔っぱらい相手にメリケンの言葉で何ごとか言ってたんだ。それも一言、二言じゃなくて、しっかり会話してたんだよ。
何で暴れたのか理由を訊いたらしい。俺はその理由を知らねえけど。
とにかくすごかった。
もし見かけたら、露天商連中がみんなで礼を言ってた、って伝えといてくれるかい?
(上野アメヤ横丁・露天商の話 十二月四日)
昭和三十二年十二月九日
対象について調査を続けるが、不可解な情報ばかりが集まる。
以下にそれらを羅列してみる。
一.ルポライターを名乗る以前の経歴が不明
二.現住所不明
三.本名、年齢、家族構成不明
まず「一.経歴が不明」についてだが、対象はルポライターとして編集部にいつからか出入りをしていて、いつ契約を結んだのか、誰も把握していない。どこの学校を出ているのか、それまで何をしていたのかすら、誰も知る者がいない。
次に「二.現住所不明」についてだが、これは、十二月五日~七日の毎晩、尾行を試みたのに突き止められなかった。
まさかルンペンのような生活をしているのかと勘繰ったが、それにしては身なりが整っているし、金銭に困っている様子はない。先日も尾行の最中、対象は
話が逸れたが、対象は夕暮れ時になると中心街から離れ、帰路につくような動きを見せる。
十二月五日は
十二月六日は
十二月七日は
三日間ともすべて方向も土地もばらばらで、住居の特定に至らず。
そして「三.本名、年齢、家族構成不明」についてだが、これが幾ら調べても不明なままである。
編集部の人間によると、対象は
現時点でわかったことは以上である。
というか、なにもわかっていないままである。
引き続き、調査を続行する。
(四十万探偵事務所 調査記録より ――調査員 四十万)
供述調書
本籍 東京都■■市■■の■■
住居 東京都■■区■■-■■
職業 不詳
氏名 ■■ ■■ 昭和12年4月29日生(満20歳)
上記の者は、昭和32年12月21日、警視庁
12月18日の深夜、事件現場で見た様子について説明します。その日は、被害者2名とともに新宿ゴールデン街にいました。自分たちはこのあたりをナワバリにしていて、気の弱そうな者を狙って、恐喝行為を繰り返していました。悪いことだと知っていましたが、仕事をクビになってしまい、生きる術でした。
その日に目をつけたのは、なよっちい男でした。あんな裏路地を歩くには不釣り合いな小綺麗な恰好が
男は最初怯えた表情を浮かべました。でも、仲間1名(以下、Aと記述)が男の胸ぐらを掴むと、男はしばらく黙った後、にやりと笑みを浮かべました。
もう1名の仲間(以下、Bと記述)が、「なめてんのか!」と男に怒鳴りつけると、男はAの腕をぐっと掴み返して、こう言いました。
「君たち、やめたほうがいいよ」
それでも、Aがもう一度すごんで「ぶっ殺す!」と叫びました。
すると男は、たいした抵抗もせず、もう一度言いました。
「先に手を出したのは君たちだから、恨むなよ」
男は、被っていた帽子(注:供述よりハンチング帽と推察)のつばを持ち上げて目元をはっきり見せると、男の目が光ったように見えました。
次の瞬間、Aが突然身体を引きつらせました。そして全身を糸で吊られたように体を伸ばすと、きりきりと数回転した後に、血を吐いて倒れました。
それを見たBが「てめえ!」と叫んで、男に殴り掛かろうとしましたが、突然Bの体が背後に吹っ飛ばされたあと、手足を上下に引っ張られたように身体を強張らせて、こっちも目や口や鼻から血を噴き出して倒れました。
自分(注:被疑者)は男に対して何もしなかったせいか、無事でした。
男は何事もなかったかのように、裏路地を歩いて去りました。それから先はわかりません。
自分は恐ろしくなって裏路地を飛び出して、屋台が軒を並べる表通りを必死に走って逃げました。そこを警官に捕まりました。ヒロポンをやっていると思われたんです。
でも、自分はヒロポンなんかやっていない。本当です。
× × ×
捜査員備考:昭和32年12月18日深夜、新宿ゴールデン街裏路地において発生した男性2名変死事件における供述。被疑者はひどく慌てて人混みを逃走していたため、
翌19日、被疑者が恐喝の常習犯と発覚。
同日10時06分、被疑者の供述により、被害者2名の遺体を発見する。
被害者の身元は、無職 ■■■■と、同 ■■■■。両名ともいわゆるチンピラで、新宿界隈を拠点に犯罪行為を繰り返していた。
被害者は全身の骨や筋肉、内臓が断裂しており、恐ろしい力で引っ張られたかのような様相で死亡していた。とても人間の力では不可能な状況のため、重機等の使用の可能性あり。被疑者、及び被害者が以前勤めていた
尚、被疑者の薬物中毒および錯乱状態が疑われたため、医師の診察手配を要請する。
作成日:昭和32年12月24日
警視庁 淀橋警察署 防犯課警部補 ■■■■
(とある警察官の書いた供述調書)
しょうわ三十三年一月九日 はれ
今日は、へんな犬をみかけました。
だがしやさんのさきにある、こげたれんがべいの四つかどのところに、そのへんな犬はいました。犬は目がぎらぎらひかって、うなりごえをあげていました。
おかあさんがいつも「きょうけんにはちかづいちゃだめ」っていうから、わたしはとおくからみていました。
でも、犬がわたしのほうをみて、はしってきたので、とってもこわかったです。
わたしはにげようとしたけど、こわくてうごけませんでした。
そこに、しらないおにいちゃんがやってきて、犬になにかをはなしかけると、犬はとまりました。そしておにいちゃんが犬をなでると、犬はおとなしくなりました。
わたしが「おにいちゃんの犬なの?」ってしつもんすると、おにいちゃんは「ちがうよ」っていいました。
おにいちゃんは、もうじゅうつかいなのかな?
その犬は、まっくろい犬でした。あおい水でぬれていました。
なんだかこわかったです。
一年四くみ ■■ ■■■
(とある女子児童の日記より)
何なんだあいつは。明らかにおかしい。
昨夜、
否、あいつは姿を消した。
物の例えではない。奴は確かに俺の前を歩いていた。そして袋小路に入り込んだあと、忽然とその姿を消してしまったのだ。
しかも俺が途方に暮れていると、
「どうしたんですか」
って、突然に俺の背後から声をかけられた。
飛び上がって振り向くと、あいつが俺の後ろに平然と立っていやがるんだ。
言っておくが、袋小路とそこに続く道は、ずっと塀や壁に囲まれているから、脇に逸れる事はできない。周りは全部が高い塀で、手や足をかける場所が無く、よじ登れるような場所ではなかった。
そして、俺は絶対に奴を追い抜かしていない。
なのに、あいつは俺の眼前から姿を消して、いきなり背後に現れやがった。
あいつはにっこりと笑みを浮かべて、こう言うんだ。
「私のこと嗅ぎまわっているようですけど。やめてください。危ないので」
静かだけど有無を言わせない口調だった。
俺は
奴はもう一度念を押すようにこう言った。
「それでも止めないというのなら、知りませんよ。私は優しくないんです」
脅しかと思ったが、その割には回りくどい言い方ではあった。
奴はそのまま、俺を残して無言で今度こそ立ち去った。
ここで調査を止めては、探偵としての俺の名が廃るってもんだ。
調査は続ける。
しかし……一体何なんだあいつは?
(とある私立探偵の手記より 一月十八日)
■■新聞 1958年(昭和33年)2月10日 月曜日
私立探偵怪死 深まる謎
2月2日に発覚した東京都■■区■■の男性怪死事件において、警視庁捜査本部は、被害者の身元が、都内■■■の四十万探偵事務所所長・四十万■■さん(41歳)だと発表した。関係者によると四十万さんは最近までとある調査を行なっていたが、失踪する前日に件の調査資料がすべて失われていたという。従業員の供述から、資料は四十万さん自身が持ち出したことは間違いがないが、その理由は不明。事務所関係者によると、彼が脅されているような様子はなかったという。
尚、四十万さんの自宅からも資料は発見されず、捜査当局が行方を追っている。
(大手新聞社発行の朝刊より)
事件資料
分類番号 33-2のイ
事件名:■■区■■私立探偵怪死事件
被害者:四十万■■(41歳)
発生日:昭和33年2月2日 6時53分
東京都■■区■■の商店街近くの河原にて、成人男性の変死死体が発見される。
第一発見者は現場近くの呉服店に勤める女性(30歳)で、開店準備をするため店に向かっていたところ、被害者を発見した。
被害者は持ち物や身分証などから、身元を四十万■■ 氏と断定。
被害者は自らの手の爪で顔や首元の皮膚を激しく掻きむしり出血し、腹部に大きな損傷と出血をしていた。内臓にも致命的な損傷アリ。
検屍の結果、死因は腹部裂傷による失血及びショックと推察。
× × ×
以下、
い:衣服(上着1点、シャツ1点、ズボン1点、革靴1足、鞄1点)、被害者が着用
ろ:身分証(普通自動車運転免許証)、鞄の中から発見
は:タバコ(パール20本入)1箱、開封済 吸った形跡ナシ。上着
に:アドニス型オイルライター1点、上着
ほ:万年筆(インク色は黒)1点、シャツ胸
へ:手帳1点、シャツ胸
と:文章が記された紙1枚
財布や現金の類は未発見。現場から持ち去った者がいないかも捜査中。
このうち、「と:文章が記された紙1枚」については、被害者の筆跡と断定。手帳と同じ紙質に思われる。現在鑑定中。
以下、紙に記述されていた内容を記す。
知ってはいけなかった■■■
あいつはむしろ警告していた
ああもうだめだ ■おれ■もうもどれないもどれないもどれない■■■■■
くらやみからあれがくる たすけて
くる■■■な■■■■■(以下、血痕により判別不可能)
× × ×
(私立探偵怪死事件における警察資料より一部抜粋)
最近ずっと違和感があったけど、やっとそれが何なのかわかった。
わかってみれば、すっきりしたものだ。
急に知らない言葉が読めるようになったのも、いろんなものが見えたり聞こえたりできるようになったのも、外国人と会話ができるようになったのも、全部「あれ」のおかげだったのだ。
理由は知らない。たまたま向こうが気に入って、私を選んだだけなのだろう。
私は人間なのだけど、もうたぶん普通の人間じゃないのかもしれない。
最初は不安だったけど、理由がわかったから安心した。
よかった。
(或るルポライターのメモより)
或るルポライターについて 涼月琳牙 @Linga_Ryogetsu
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