鎖を断ち切る時

コラム

***

遠い異世界の片隅に、冷酷な王に支配される王国があった。


彼の命令は絶対であり、逆らうことは即座に死を意味した。


村の片隅に住む貧しい農民の娘――リリアナ。


彼女は厳しい生活を送りながらも、命令の鎖を断ち切り、自由と幸せを手に入れることを夢見ていた。


「リリアナ、急げ! 王の命令だ!」


周囲の騒ぎ声に耳を傾けると、王国中の若い女性が王の城に召し出されるという知らせがあった。


彼女は心の中で抵抗を感じながらも、命令に従わざるを得なかった。


城に到着すると、リリアナは冷酷な王の目にとまり、無慈悲な試験を強いられた。


試験は過酷で、体力も心も限界まで追い詰められたが、彼女は決して諦めなかった。


過去の命令に背いた者たちの話を思い出し、勇気を奮い立たせたのだ。


試験会場は寒々しい石造りの構造で、薄暗い光が差し込む中、リリアナは孤独に戦い続けた。


選ばれた他の女性たちが次々と倒れていく一方で、彼女は最後まで立ち続けた。


「ふむ、素晴らしいぞ、お前」


冷酷な王の声が響く。


彼女は冷たく光る王の眼差しを受けながら、寵愛を受けられる候補に選ばれたが、その代償は大きかった。


心は疲弊し、身も心も傷ついていた。


王の城での生活が始まり、リリアナは冷酷な命令に日々苦しめられていた。


夜ごとに、自らが囚われた夢を見るなか、心の闇が深まっていく。


そんなある夜、彼女は城の図書室で一冊の古い書物を発見する。


「これは……?」


リリアナは不意に手に取った。


それは、命令の鎖を断ち切る方法を示す魔法の本であった。


本を隠して読み進めるうちに、リリアナは光明を見出す。


希望の光が心に灯り、彼女の決意は揺るぎないものとなった。


リリアナは秘密裏に準備を進め、信頼できる侍女たちと協力し計画を練った。


「きっとこれが最後のチャンスよ」


「失敗は許されないわね……」


彼女たちは夜闇に紛れて魔法の本の指示に従い、慎重に動き始めた。


しかし、恐怖と不安が彼女たちを苦しめ続けた。


リリアナの手には命令の鎖を断ち切るための魔法の本があった。


彼女は城の図書室でその秘術を学び、心の中で繰り返し練習していた。


そして、ついに決行の時が来た。


城の暗い廊下を音も立てずに進むリリアナ。


彼女の心臓は高鳴り、手に汗がにじむ。奥深い地下牢には、多くの侍女たちが集まっていた。


彼女たちはリリアナの指示に従い、魔法の準備を整えていた。


「みんな、準備はできた?」


リリアナは静かに訊ねた。


侍女たちは恐れと不安の目を向けつつも、彼女に頷く。


「これが最後の試練。王の命令に縛られた私たちの未来を解放するために戦おう!」


リリアナの声に全員が険しい決意を感じた。


魔法の力を解放する瞬間がやってきた。


リリアナの手から放たれる光が、冷たい地下牢の壁を照らした。


王の守護者たちが次々と現れ、彼女らに襲いかかる。


しかし、リリアナと侍女たちは力を合わせ、立ち向かった。


「これが私たちの力……王に屈しない意志!」


リリアナは剣を振りかざし、守護者に立ち向かった。


剣と魔法の力が交錯し、激しい戦いが繰り広げられた。


戦いの中でリリアナは、何度も挫けそうになった。


しかし、彼女は過去の苦しみと犠牲を思い出し、自らの手で未来を切り開く決意を新たにした。


「みんな、最後まで戦おう!」


リリアナの叫び声に応え、侍女たちは一丸となって戦い続ける。


王の部屋へと進む彼女たちの前に待ち受けていた最後の守護者は、彼女らの決意の前に敗れ去った。


王の独裁から解放されたリリアナたち。


彼女の勇気と決意が、ついに王国に自由をもたらした。


リリアナは晴れやかな表情で村に戻ると、その姿を見た村人たちは歓声と共に迎え入れた。


彼女は新しい暮らしを自らの手で築き、人々に希望を与え続けた。


村人たちは彼女の勇気を称え、リリアナを支えた。


リリアナと侍女たちによって新たに築かれた秩序の中、国は平和と繁栄を享受し、誰もが幸福に過ごす時代が始まる。


そしてその自由で幸せな時代は、彼女たちが亡くなるまで続いたのだった。


〈了〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鎖を断ち切る時 コラム @oto_no_oto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ