世界はパズルでできている。

たくや

世界はパズルでできている。

 世界。それは時に残酷で美しい、情緒不安定なものである。もので例えるとパズルである。パズルはパターンを一度でも間違えるとそこから先もパターンが狂ってしまう。そして時に困難になり、時にきれいになる。そしてここは、「感情」が虚無と化した世界パズルである。


 「無感情な世界」にただ一人、特別な人間がいた。彼の名は白井樹しらい いつき。心を持っていないまわりの人間とはちがい、心を持っている。当たり前のことのように聞こえるがすごく特別なことなのである。80億粒の白ゴマの中に紛れ込んだたった1粒の黒ゴマくらいだ。彼はほかの人間を助け、無意識に助けられ、感謝している。そして彼は今日も家を出た。


「行ってきます!」

元気にそういっても返してくれる言葉はない。そもそも誰にも聞こえていないのだ。 


 しかし、彼は最初からこの世界にいるわけではなかった。14歳になった次の朝、気づけばここにいたのだ。とはいえ前にいたところがどこなのか、どんなところなのかすらわからない。ただ、今いる世界はピースがぐちゃぐちゃにはめられている世界だということはわかる。はまるべきではないところにピースがはめられているかのように。時々「僕はこの世界を正すために来たのではないか」などというつまらない考察をすることもあったが、この世界になじめていないわけでもなかった。


 学校。そこは喧嘩が起きているわけでも、楽しい会話が弾んでいるわけでもなく、

静かな場所である。世界中がそもそも静かだが、ここは特別静かである。

「みんなおっはよー!」

白井が教室に入った瞬間に叫ぶ。返してくれる言葉はないが。

 授業が始まった。先生はただ淡々と教科書の内容を棒読みしている。授業中にこっそりトイレに行っても、堂々とゲームをしていても怒鳴る者はいない。


 そして、白井は時々そのことに対して疑問を持つ。

「この世界は、ただしいのか?」

もといた世界が何かを彼は知らないが、この世界とは真反対の世界ということはなんとなくわかる。この世界の人間からしたらここは正しい世界なのかもしれないが、ほかの世界の人間からしたら正しいとは言えないかもしれない。

 そしてもう一つ。

「なぜ僕はここにいるのか?」

きっと何かの手違いでここにきてしまったのだろう。しかし、すると連鎖的に疑問が浮かぶ。

「なぜ全世界を制している神はこんなギミックを作ったのか?」


とある早朝。白井が裏山の山道にいるのは心をしずめたいからだった。だれしもが無感情な世界とはつかれるものだった。何か話しても相手はどう思っているのか、そもそも聞いていないのか分からないのである。

「こんなにつかれるくらいならいっそ神様の元に行ってみたいものだよ」

不機嫌そうにつぶやくと山道をまた上り始めた。上るにつれて息が荒くなる。疲れているのだろう。しかし、この世界の人間はそんな感情など知らない。

「もったいないなぁ。こんな快感を体験できないなんて」

皮肉のように言う。

頂上。町を全望できるこの場所は心の安らぎに最適な場所といえる。視線を上に向けると青空が視界を支配する。そんな時、白井は不可解なものを見た。青空を何かが突っ切ったのだ。飛行機とは比べ物にならないくらい早い。しばらく視線をそれに向けているとそれは宇宙に向かって垂直に上がり始めた。やがて雲を突き抜けた。

「未確認飛行物体...ってヤツか。」

人ごとのように視線をずらした。すると白井は空から降ってきた稲妻によって死んでしまった。


「う...」

白井が目覚めたのは雲の上だった。ふらつきながらも立ち上がると目の前に白い布を下半身に巻き付けた男がいた。気配に気がついた男はゆっくりと後ろを向きながら言った。

「ここは天空。私は神の使い、ウラス。あなたをここにご招待したのも他ではありません」

「えっとー。なぜ僕が天空に?」

「その前に、この世界にご招待した理由からお伝えします」

ウラスによると、白井家は代々、この白紙だった世界に実験台ピースとして送られるらしいのだ。『人間がどのような完璧なパズルをつくるのか。』それを実験するためなのだそうだ。

「___そして、あなたが、この世界パズルを完成させるための最後の人間ピースなのです」

ウラスはゆっくりと白井に指を向けた。そして机を持ってきた。そしてその机を白井の前に置いた。そこには途方もないほどのピースが組まれていた。しかし、綺麗には並んでいなかった。はまるべきではないところにピースがはまっている。無理矢理はまっているピースがたくさんある。

「これは、先ほどの世界パズルです。そして、」

ウラスが握っていた手を開いた。

「最後のピースです。あの世界をただすのもよいですし、くるわせてもよいです」

白井はただ茫然とピースを受け取った。改めて机上をみると、適当においているピースがほとんどだった。これがあの世界が無感情な理由だろう。そして、神は手違いで白井をあの世界に送ったのではなかったことを知った。白井からしたら、別の世界なんてどうでもよかった。きっと今までの人間たちもそう考えていたのだろう。しかし、白井はあの世界で、数年を生きたのだ。もはや現実も当然だ。こんなに悩むほどなら適当でいいとも考えた。

そして1日の時間がたった。この1ピースに全てが掛かっている。しかし、こんなぐちゃぐちゃな世界を今さら、たった1ピースで変えられるのだろうか。そう考えるとどうでもいいと思った。

「…決めました」

「やっとですか」

白井はピースを持った手を大きく振りかぶった。「パチ」静かに音を立てて、ピースは綺麗に世界パズルにはまった。

<THE END>

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世界はパズルでできている。 たくや @takuya_mm

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