1 § prophetia : かの邂逅は、まさしく預言にある通り②
急いで正装のドレスに
白鳥のように清らかで、くびれのくっきりした、シンプルで品のあるドレス。小さい
アクセサリーに関しては、選ぶ必要はなかった。
首元にはいつも、
──よし、間に合った。
エレクトラは一安心しながら自室を出た。
「
すると
黒い鎧に身をつつんだ
エレクトラはふっと微笑んだ。
守護
まあ彼女が男であったら、の話だが。短く切られた黒髪も、
「おはよう、オニキス」
無意識にエレクトラの声は
宮廷内に自分の味方は二人いる。さっき出会ったユリウスと、このオニキスだ。同じ女性ということもあり、オニキスのほうが
「遅くはないけれど、どうかしたの?」
「こちらへ向かう折、聖騎士団の者に声をかけられまして」
「聖騎士団の?」
「はい、国境付近に動きがあるとのことです。女王陛下のお召しも、それに
「そう……」
「急ぎ向かわなければいけないわね。謁見の間へ」
「ええ。お供いたします」
長身のオニキスが
王都オレステイアにそびえる白い
古代ミトスから何度も王朝を変えながらも、およそ二千年のときをまたいで存在し続ける宮殿。それはまさしくミトス王国の高潔さと繊細さを表していた。
「方々、お
元老院議員が玉座の女王へ言うと、女王は低く厳しい声で「うむ」と
見た目はエレクトラとは全く似ていなかった。
エレクトラは銀色の
一方でアイリーンは母と全く同じ色合いをしている。それもまた、宮廷じゅうがアイリーンびいきになる理由の一つでもあった。
「急ぎの招集に応じ、ご苦労」
女王の物言いはいつもながら固い。
先の通り、ミトスの歴史は二千年ほどになる。
ちなみにミトスの王は常に女性である。理由の一つは、
「さて、
女王は
「ガラテア軍が、カロンの入り
「なんと……」
声を
ガラテア
建国からまだ百年も
「軍勢の数は、いかほどでありましょう?」
ユリウスが
「入り江へ迫っている魔術師兵は三千とさほど多くない数です。しかし」
女王は呼吸を置き、さらに表情を引き締めた。
「率いるのは、聖王サイリュスであるとのことです」
みながはっと息を
──聖王サイリュス。
ガラテア帝国の第一皇子であり、聖王という世界で
世界には『聖王』と呼ばれる存在がいる。
その唯一の能力というのは、
世界には魔素と呪素といわれる
一方、呪素は不要な物質で、魔術を使った後の残りカスとして残存する。放置すれば体内で毒となり、人を
魔素と呪素──これらは酸素と二酸化炭素のように、相反しながら存在し続けているのだ。
そして呪素を魔素に
その聖王が今、ガラテア帝国に君臨している。
今、というのは、聖王は主要六国による持ち回り制だからだ。
聖王は一国に置いたままではあまりに強すぎる
今回の
これがどれほど厄介なことかは、ここにいる
「万全の備えで
ユリウスが引き締まった声で言った。聖騎士団長である彼は、魔術においてミトス
「ええ、一刻を争います。急ぎ出立を」
「では早々にて
深々と頭を下げた後、ユリウスはその場を
「エレクトラ。
十五のときに
エレクトラもまた、じっと母を見つめ返した。
戦場にいるのは世界
それなのに母は自分を戦場に出す。今までも、何度もそうだった。
その理由に関して、エレクトラは推察していることがあった。
──母は、私を
置いておけば
しかし王女であるから捨てづらい『物』。
これが戦となればどうか。祖国のためと大義を
「隊列については軍議ののち、改めて言いつけます。しばし自室で待機しなさい」
「かしこまりました」
エレクトラは淡々と返した。
彼女自身は戦に出ることについて、あまり
命の
自分の行動ひとつで自分の生死が決まる場所というのは、宮殿で
それに王女が出陣していると聞けば、敵も少なからず自分に
行事にも外交にも参加できず、自室に引きこもっているよりは、自分の意思で戦場に立つほうが、よほどましな命の使い方だと彼女は思っていたのである。
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