イライラしても疲れても大丈夫。あなたのせいじゃないから。
朝起きた時から疲れていて、ずっと倦怠感をまとって生きていた。疲れが抜けないどころか「今日は絶好調だ!」という日はなかった。体調が悪いとイライラしやすい。子どもに当たり散らして、それを見た夫から怒られて、ますます自分が嫌いになっていく……35歳を過ぎてから、ずっとそうだった。これがデフォルトなんだと思っていた。これは性格だし、年を取ったからどうにもならない。そう諦めていた。
オーソモレキュラーで知られる「みぞぐちクリニック」に出会ったのは、たまたまだった。
ウェブサイトで見かけて、以前から栄養療法には興味があったから「受けてみようかな」と思ったのだ。調べたら検査も含めて5回で5万円と明記されていて、「安いし良心的だな」と思った。自由診療は保険が適用されないから、いくらかかるかわからないまま治療が進んでいく。行くたびに数万円くらいかかるし、終わりが見えないから、どうしても足が遠のいてしまう(今までそうだった)。
もちろん5万円は安くはない。でも私は、健康のことについては金銭感覚がバグってしまう。意を決して予約して、受診にいたった。
院内は落ち着いた雰囲気で、ただのぼったくりクリニックではないことは明らかだった。なぜわかるかと言うと、私は子どもを3人抱えていて、様々なクリニックを受診してきたから。受付を含む働いている人の目つきとか、どこにお金をかけているかを見れば、そのクリニックが自分に合うかどうかは、だいたい分かる。「この先生は私のような大人にはいいけど、子どもには違うな」とか。
担当してくれたのは女性の先生で、高圧的ではなくて、ちゃんと話を聞いてくれた。カウンセリングが進んでいくうちに「3回の出産で、体が栄養不足になっていますね」と診断して、こう続けた。
「この栄養状態だと、誰でもイライラしたり、疲れたりしちゃいますよ」
この言葉に救われた。8年間育児をしてきて、一番助けてもらったかもしれない。私は自分がイライラしてしまったり疲れてしまう原因を「運動不足という生活習慣が引き起こした、体力・筋力不足」で「生まれつき、遺伝によるメンタルの弱さ」で、あんまり良くない対人関係に陥ってしまう「他人とうまくやれない性格」だと分析していた。今まで若さと体力でカバーしてきたけど、年齢によってカバーしきれなくなってきた。だから、そのまま生きていくしかない。そう思っていた。
でも、食餌療法で、つまり栄養で治るなら、何とかなりそうではないか?
今まで様々な本を読んだし、スポーツクラブでパーソナルトレーニングもしてきた。それはそれでもちろん良かったけど、根本的な解決には至っていない。当たり前だ。それらを鍛えたところで栄養が不足していたら、元も子もない。どうしてもっと早く、自分の栄養不足を疑わなかったんだろう?
それは、「自分の外から解決策を与えてもらえる」という発想に、今まで至らなかったからだ。私を含む日本人は、何か悪いことがあると「自分の中」に原因があるのではないか? と考える。性格とか、生活習慣とか、考え方とか。でも、そればかりではない。悪いものを食べて体を壊すことがあるように、分別ない一言で心を壊すことがあるように。外からの影響というのは、意外と大きいのだ。
先生からはビタミンB、ビタミンD、鉄と乳酸菌などのサプリを処方してもらった。小麦を含むグルテンを控えて、牛乳を含むガゼインを控えて、タンパク質を中心の生活に切り替えた。
今日で5日目だが、35歳史上で最も調子がいい日々が続いている。子どもたちにブチ切れることは減った。夫の心無い一言に落ち込んで、寝室に閉じこもることも減った。大事なのは「減った」ということで、もちろんゼロではない。他にも嫌なことや、ハードシングスもたくさんあった。今までだったら、とっくにメンタルダウンしていたと思う。私が元気になって、色々と受け入れるようになったから「そろそろ大丈夫じゃろ」と神様が色んな試練を与えてくれているんだろうな……と思って、なんとかやり過ごしている。
逆境は必ず起こる。性格や年齢といった「自分の中」は変えられない。でも「栄養」を含む「外から与えられるもの」は、変えることができる。外から取り入れるものは、栄養だけじゃなくて、人間関係や情報も、慎重に選んでいこう。そんなことにやっと気づけた、11月の中旬。東京の空は深い藍で、ほとんど秋の空を思わせた。まだ2024年は少しだけ残っている。暗闇に包まれていたこの年を、もっといいものにしていける。そんな気がした。
【3児ママ戦記】①子育てのため息 かのん @izumiaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます