約束の羽と10年目の命令 ( カクコン10短編お題『10』『羽』『命令』 )

姑兎 -koto-

第1話 舞い降りた天使

あれはまだ、私が子供だった頃。

真夜中にフラッとわんぱくな天使が舞い降りてきた。


それから、毎夜、彼は私の元にやってきて、色々な話しをした。

そして、10日目の夜。

「10年間、僕の事を誰にも言わずにいられたら、君の命令を一つ聞いてあげる」と言い残し去って行った。

私の手元に奇麗な約束の羽を1枚残して。


そして、今日がその10年目。


夜中に窓を開け、約束の羽を手に、彼の到来を待つ。


命令したいことは無いのだけれど。

もし、願いが聞き届けられるのならば、私を連れ出して欲しい。


それだけを願って彼を待つ。



やがて、空が白み始め、朝日が昇る。



……結局、彼は、来なかった。



あれは、天使の気まぐれだったのか。

私が夢を見ていただけだったのか。


私は、約束の羽をテーブルに置き、開け放したままの窓から外に出る。


結婚式当日に逃げ出した姫君。

世間は大騒ぎするだろうけれど。



私は、一人で願いを果たす。



広い庭を抜け、裏門から外に出ると、どこからか「約束は果たされた」と言う声が聞こえてきた。

それと同時に、テーブルの上に残してきた羽は、誰にも気づかれること無く消え去り……。


目の前には、大人になった彼の姿。

そして彼は「大人になって結界の隙間から入れなくなっちゃって困ってたんだ。結界の外に出てきてくれてありがとう」と微笑み「ご命令を何なりと」と、かしずいた。


彼は守護天使。

10年の時を経て、禁断の恋は成就した。


ー完ー





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