第3話 一行の一面

「おい、アインアンハート。大丈夫か?」

ルクスは店前で地面に倒れ込んでいる彼を起こそうと肩を叩く。


幸いにも彼はすんなり起きた。

「うっt・・・? ルクスか?」

彼は立ち上がり、周りを見渡した。

「おいおい、一体何があったんだ? どうしてみんな裸なんだ

「昨日の夜、何かがあったんだろう。壮絶な何かが・・・」

「あいつの仕業だな、きっと。あの目つきが悪い黒髪。

 この俺が酒で潰れるなんて・・・」


レーゲルはアインアインハートを起こした後、下着を履き、ズボンを履きかけた。

その時。

「おい、ルクス。俺のパンツとズボンはどこにあるんだ?」

「え?」

「だから、俺のパンツとズボンだよ」

アインアインハートは焦りながら周囲を探した。


おい、嘘だろ。残りすくねぇ金が入ってたんだぞ。

おい・・・。おい。

彼は四つん這いになりながら項垂れた。


ルクスの体に誰かが寄りかかった。

「イフェン。なぁ、アインアンハートのズボン知らないか?」

イフェンは大胆にルクスの片腕に抱きついた。

「ズボン? 私は知らない。

 ねぇ、それよりさ。抱っこして!」

「え? 抱っこ?」

「抱っこ、お願い。いいでしょ?」

彼女はモジモジ体を動かした。

そして彼女の少し吊り上がった目は、彼を真っ直ぐ見つめた。

「いま?」

「うん、抱っこして。お願い」

「えっと・・・、それは・・・」

ルクスは反応に困った。

本当は抱っこしたかった。したくてたまらなかった。

でも、それでもどこか恥ずかしくて出来なかった。

(あァァァァああ、もうどうすれば・・・)



だれか助けてぇえええええええええええええええええええぇえええ。

悲鳴が街路を伝って聞こえてきた。

女性の甲高い声だった。


「おい、ルクス! 聞こえたか?」

「ああ。向こうから聞こえた」

ルクスは悲鳴の方向を指さした。

「行くぞ!」

「お前、その身なりで行くきか?」

アインアインハートは、下半身は丸出し。たった一枚のシャツがより彼を見るに値しない姿えと変身させていた。

「当たり前だ、早く行くぞ?」


手に抱きついたイフェンは、力を失ったように地面に寝ついた。


「行くか!」

そうしてアインアインハートと、半裸のルクスは走り出した。















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