第9話 下ごしらえ
SNSの過去の情報から交友関係、家族構成などいろいろと調べることができた。
さすが本庄。
なにも考えずに投稿しまくっているので個人情報がダダ漏れで助かる。
本庄の妹、本庄紗和、19歳。
都内の私立大学に通う大学2年生で兄と同じく投稿しまくっている。
ふたりともSNS上では偽名を使っている。
だが、会社役員である叔父の糸田常務はネットリテラシーが低かった。本名でSNSに登録しているのでそこから本庄と妹のアカウントを特定できた。
妹の大学の匿名の掲示板を見ると、やはり妹はかなり女王のように振る舞っていた。かなり恨まれているようだが、同時に彼女を擁護する勢力もいるようだ。こちらの方は妹のお仲間だと見受けられる。
匿名の書き込みであるため、信ぴょう性に欠けるが、父親はプロのカメラマン。母親は元モデルらしい。兄妹そろって高身長で美男美女なのは母親ゆずりといったところか。性格はクズだけど。
この書き込みの中で気になるリンクを張っているサイトを見つけた。
【本庄兄妹に被害を受けた者たちの会】
リンク先に飛ぼうとしたが、別のページに飛んだ。
さらにリンク先が張ってあり、その先はロックが掛かっており、中に入れない。
リンク先にアクセスするためには管理人に連絡するよう書かれていて、メールで連絡を取ると、どういった被害を受けたのかを問う返信があった。
兄の方に彼女を寝取られた、と返したらすぐにパスワードが送られてきた。
これは相当にやばい。
兄の方もかなりのサイコパスだが、妹も相当なものだ。
気に入らない女子を手下の男子たちを使って
兄の方は昔から女性をたぶらかしては遊んで捨てている。狙った相手がなびかない場合は酔わせて無理やり乱暴を働くなどこちらも常軌を逸している。
あとは本庄が中学から大学まで勉強のできる男子を散々こき使った挙句。女子を使って冤罪をでっち上げ、転校させるという手口を何度も使っていた。
社会人になって狙われたのが俺、ということか……。
これは思ったよりも簡単に本庄に仕返しができそうだ。
俺はある計画を進めようと準備に取りかかった。
「わが社のHPで広告?」
「はい、新規顧客の確保の促進剤になるかと」
企画を課長に提出する。
これは前世でも俺の企画を横取りした本庄が通した内容なので十中八九問題ない。
「コンセプトが変わってるね」
「ええ、企業ブランディングに『社員の魅力』を前面に押し出す戦略です」
広告塔となる社員に高いカリスマとビジュアルを持つ人物を起用することで、見たものの関心を引きつけ、企業の信頼度・魅力向上につながると説明する。
この企画では「仕事ができる×イケメン」という洗練されたイメージを活かし、就活生や女性層に企業への親近感を高めてもらうのが狙い。これによりクライアントからの信頼も高まり、「この会社と関わりたい」と思わせることに一役買うことができる。
「資料は……できてるな。わかった。今日の企画会議にねじ込んでもらう」
課長に了承してもらい、プレゼン用のデータを企画部の担当者にメールで送る。
「おいおい、そんな企画を出したら俺が選ばれちゃうぜ?」
「かもしれないな。まあ人選は上の人がやるから……」
もちろん本庄、お前が選ばれるに決まっている。
企画会議のトップは糸田常務、お前の叔父だからな。
課長に説明した内容よりも、さらに一段ブラッシュアップして企画会議でプレゼンを行なった。その結果、企画が通り、その場で広告塔に本庄の名が挙がった。例のハプバーで盗撮された一件を気にした反対意見も出たが、糸田常務の鶴の一声で、人選が決定した。
企画発案者ということもあって、企画部の広報課と協力して、HP制作会社とデザイン会社に連絡を取り、HP用のデータを仕上げていった。そしてモデルである本庄の撮影を始める。
「ご家族のコメントを入れるのはどうでしょう?」
「うん、いいんじゃない?」
撮影をはじめて2日目。
尺はもうじゅうぶんなのだが、今ひとつ何かが足りない。
もう一つ欲しいと制作陣に思わせる。
企画を作っている時から仕組んでいた計画。いざ制作を始めるとみえてくる物足りなさ。
「本庄、家族で出てくれそうな人はいるか?」
「あー、妹ぐらいか」
そうなることも知っていた。
妹が虚栄心の塊であると同時に大の兄好きだと例のサイトに書かれていた。
本庄の妹には一度顔を見られているので、広報課の人に頼んでインタビュー形式で撮影してきてもらう。
「妹想いの優しい兄です。仕事もできて尊敬しています!」
もっともらしいことを口にしている妹を見るとさすがだなと思う。
こうして出来上がった動画を埋め込んだ特設ページが完成し、地元メディアへプレスリリースを送った。あと社員各個人の協力や企業公式SNSを通じて宣伝すると、SNSでかなり反響を呼んだ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!?」
数日後の午後3時すぎ。
営業3課内に本庄の怒声が響き渡る。
「どっ、どうしたんだね本庄くん?」
「紗和がさらわれた……」
課長が驚きながら質問すると、ぼう然と立ち尽くした本庄がつぶやいた。
ようやく動き出したか……。
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