巡階

階段を下る。

段を踏むその音が、遥か一階まで響いている。

懐中電灯の明かりは、向けた先を明瞭に映し出してくれる。

けれど、それ以外は薄暗く、どんよりとしている。

階段を下る。

踊り場に降りる。

すっと視線を上にあげると、壁には階数が書かれたプレートがある。

まだ、階段は続く。

階段を下りる。

一階分　下がった。

廊下はずっと先まで続いている。

突き当りにはエレベーターホールがある。

ここからは見えない。

懐中電灯の明かりを

すっと廊下に向ける。

それでもエレベーターホールは見えない。

廊下の左右にはたくさんの扉がある。

すべて閉じている。

階段を下りる。

踊り場に降りる。

きぃ　

階段を下りる。

同じような廊下を照らす。

そうしてまた階段を下りる。

きぃ　きぃ

踊り場で止まらず、さらに降りる。

とん　とん　とん

廊下を照らす。

そうしてまた階段を下りる。

ぎぃ

こつ　こつ　こつ　こつ　こつ

すこし、早くおりる。

廊下を照らす。

また降りる。

ぎぃぃぃ

ととととととととととととと

駆け下りる。

息を切らしながら、

それでも、廊下を照らす。

駆け下りる。駆け下りる。駆け下りる。

廊下を照らす

こつこつこつこつ

ふふふ　あはは　ふふふ

こつこつコツコツ　とととととととと

駆け下りる。こつこつこつこつ

駆け下りる。ととと

廊下を照らす。　

駆け下りる。駆け下りる。

ぎぃぃぃぃぃ。廊下を照らす。

もう。降りられない。