ルート分岐
放心している俺を無視して話を続ける茜
「でも…悪夢はこれからだったの」
次に目を覚ました時には病院だった
大規模な手術が行われたとか、助かったのは奇跡だとかはどうでもよかった
私が一番気になっていたことを聞いた
「あっくんは?両親は?」
今まで嬉々として話していた先生が突然、淡々と
「生き残ったのは貴方だけです」
と言った
その後、私を励ますような言葉を言っていた気がするけど、そんなことはどうでもよかった
私は絶望した
だけど不思議なことに涙は出なかった
それから夢みたいに朧気に過ごして数日後
お父様が病室にやってきた
何か話しているようだったけど私にはどうでもよかった
顔すら見ることが出来なくて、窓の外ばかりに気が散る
だけど、その言葉だけははっきり聞こえた
「僕たちと…家族にならないかい?」
その時、ようやく目が覚めた
そして隣にいるお父様の顔を見て思ったの
さっきまで泣いていたのか、酷い涙跡
それなのに、この人はどうして私なんかのために…って
私は、ようやく泣けた
それから私は退院した
病院のお金はお父様とお母様が出してくれた
私が申し訳なさそうにしていると、お父様は照れくさそうに
「家族だから」
と言ってくれた
私にとっては何よりも救いだった
それだけじゃなかった
学校のお金だって出してくれた
それに、私の家も売らないでくれた
そんなことをする義理はないのに私に寂しい思いをさせないようにって
意味が分からないぐらい優しかった
私はそれに応えようと頑張った
語尾をわざと高くしたり、笑顔を絶やさないようにして、無理をしてでも元気アピールをした
明らかに痩せたし、笑顔以外は見せずに違和感はあっただろうけど私なりに頑張った
でも私は足りないと思っていた
だから、あの時あんな愚かなことをしたんだと思う
きっかけは私の進路について学校から宿題が出たこと
ずっと前から私の中に答えはあった
そしてそれが一番いい手だとも思っていた
「お父様!このプリントにサインください!」
「わかったよ
…ん?これは何かな?」
「進路プリントです!」
「何も書いてないようだけど?」
「あーまぁはい!」
「それで、どこの高校に行くのかい?」
きっと書いたら反対される
そんなことぐらいは私にも分かっていた
だけど隠すほどでもないと思ってしまっていた
「私、働こうと思います!」
「…は?」
「ちょっとそれどういうこと⁉」
突然、大きな声を出しながら二階から降りてくるお母様
お母様は一年以上一緒に暮らしていたけど、いつも居心地が悪そうだった
私が働くことに賛成してくれると思っていた
だからこれは予想外だった
「茜ちゃん、アナタ学校は⁉」
初めて見る、感情的なお母様に困惑しながらもしっかり答える
「流石に高校のお金まで出してもらうのは遠慮がありますし…」
「なんで⁉私たち家族でしょ⁉」
距離を置かれていると思っていた私には嬉しすぎる一言だった
…もしも、ここで迷うことが出来たら違う結末があったのかもしれない
私にとってここは最後の分岐だった
「…だから、余計なお金は使わせたくないだけです!」
その言葉が導火線に火をつけた
「そんなこと言わないで頂戴!
あの時、秋徒が身を挺して守った茜ちゃんを家族として迎えようと頑張った!
だけど秋徒の時だってどうすればいいのか分からなかった!
それでも秋徒は私に歩み寄ってくれようとしてくれた!
私も秋徒みたいに頑張ろうとした!
でも伝わってくれなかったみたい!
こんなことなら、秋徒が生きていれば…」
「お前!」
お父様がお母様の頬を殴る
それを私は、ただ呆然と見ているだけだった
「アナタだって思ってるんでしょ!」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあなんで殴ったのよ!」
「お前が変なこと言うからだろ!」
「お前って何よ!」
ようやく私は、自分のしてしまったことに気づいた
「…やめて」
そんな私の声は言い争っている二人には届かなかった
私は無力に座り込んだ
ただ、お母様が言いかけた言葉が私の頭の中で延々と響いた
「それからは夢を見るようになった
『お前が殺した』『お前が死ねばよかったのに』
その通りだと思った
私のことを庇ったから、あっくんは死んだ
きっとあっくんも後悔してる」
「そんなわけないだろ!」
「そんなわけあるの!」
今まで淡々と語っていた茜が感情的になる
「だって自分の家族をぐちゃぐちゃにされたんだよ⁉
私が変なこと言わなければ、お母様は不注意で死ななかったかもしれない!」
「関係あるかよ!そんな小せぇことで人が簡単に死ぬかよ!」
「死んだんだよ!」
「関係ねぇよ!」
互いに息を切らす
このままでは話が平行線だ
そう茜も思ったのか、今度は落ち着いた雰囲気で話始める
「…私は、昭良のことをあっくんの生まれ変わりみたいなものだと思ってる」
「それじゃあ!」
「だから!…私以外で幸せになって欲しいの
もう、私に背負わせないで…」
「茜…」
「私を、助けてよ」
そう俺に手を差し出す
それを俺は…
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