第3章 ギルドへの挑戦・リーフレット王国の影

第16話「ミリアの新たな一歩と新たな挑戦の始まり」

3日から5日後、ギルド試験を受けた冒険者たちに結果通知が届いた。

ミリアは静かな朝、差し込む光の中でベッドに座り、机の上に置かれた通知書を見つめていた。

(……今日が、その日か。)

胸の奥で小さな鼓動が速くなるのを感じながら、ゆっくりと立ち上がる。

身支度を整えたミリアは、サクヤ商店の仲間たちに軽く挨拶をしてギルドへと向かった。

ギルドに到着すると、広間には多くの冒険者たちが集まっていた。

壁には大きな掲示板が設置されており、「ギルド試験 合格者発表」の文字が掲げられている。

ミリアは不安と期待が入り混じる中、掲示板の前で立ち尽くしていた。

そこにギルド長が現れ、会場の空気が一気に引き締まる。

「さて、ここにいるのはギルド試験を受けた者たちだな。これより合格者を発表する。大画面に注目しろ!名前を呼ばれた者はここに残り、受付で通知書と名前を申告すること。」

ギルド長の声が響き渡る。周囲は静まり返り、冒険者たちの緊張が伝わってくる。

ミリアは拳をぎゅっと握りしめ、心の中で祈っていた。

(……呼ばれるかな? 呼ばれなかったらどうしよう。でも、やれることはやったはず。)

一人、また一人と名前が呼ばれるたびに、胸が締めつけられる。

そして、最後の発表が近づいた。

「さて、今回のギルド試験の最後の合格者は――」

間を置くギルド長。その一瞬が永遠のように感じられた。

「ミリア・サクヤ!」

ミリアの心が跳ね上がった。驚きと安堵あんど、そして達成感が一気に押し寄せてくる。

(やった……!)

呼ばれた冒険者たちが受付に向かう。

ミリアもゆっくりと足を進め、緊張しながら話しかけた。

「あの、合格したミリア・サクヤです。」

受付のギルド員が穏やかに微笑む。

「通知書とお名前を確認します……はい、確認できました。ランクアップおめでとうございます! こちらが新しいギルドカードです。なくさないようにご注意くださいね。」

受け取ったギルドカードの縁取りが、これまでの黒から鮮やかな緑へと変わっていた。

それを見つめながら、ミリアは成長した自分を少しだけ実感する。

そこへギルド長が近づいてきた。

「よう、ミリア。おめでとう。」

「ありがとうございます!……ギルド長、一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「私、サクヤ商店の仕事や新しいアイテム開発で忙しくて、正直、クエストはほとんど受けていないのに……どうして合格できたんでしょうか?」

ギルド長は少し笑いながら答える。

「それはな、①お前はリーフレット王国の生誕祭を盛り上げた実績がある。②さらに、ギルドに新しいアイテムを提供して、冒険者たちの活動に貢献してきた。これらを総合的に評価したんだ。」

「そんなことで……?」と驚くミリア。

「ギルドはクエストの成果だけを見るわけじゃない。人がどれだけ周囲に影響を与え、成長し続けているかも大切なんだ。 その点、お前は十分な結果を出している。」

ミリアはその言葉を胸に刻んだ。

「ありがとうございます、これからも頑張ります!」


数週間後。

ミリアはランクEとしてサクヤ商店の仕事を続けながら、クエストにも挑戦していた。

しかし、ランクEのクエストは街の中だけでは完結しないものが多く、少し気が重かった。

そんな時、ギルドで「暁の塔」と名乗るパーティーに声をかけられる。

「あの、ミリアさんですよね? サクヤ商店の。」

「はい、そうですが……?」

「私たちは『暁の塔』というパーティーを組んでいてものですが…、ミリアさんの活躍を見てパーティーに誘いたくて……」

「でも、私は冒険の実践経験がほとんどありませんよ?」

「それでも大丈夫です! 実は、このギルドには無理やりパーティーに入れて報酬を不公平に分けるような連中もいるんです。だから、誠実に活動できる仲間が欲しかったんです。」

その言葉に、ミリアは少し微笑んだ。

(きっと私も、一人ではなく、誰かと一緒に成長していきたかったんだ。)

「分かりました。私でよければ、パーティーに参加させてください。」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

パーティー加入手続きをしようとしたその時、ライバルパーティーが現れた。

「おい!ねえちゃんよ、そんな雑魚パーティーに入るくらいなら、俺たちのパーティーに入れよ!報酬もたっぷりやるぞ?」

ミリアは冷静に答える。

「いいえ、私は『暁の塔』の仲間として活動します。」

「はぁ? 俺たちを断るってのか!」

緊張が走る中、そこにギルド長が姿を現す。

「おい、何をしてる? ここはギルドだぞ。いちゃもんをつけるなら、ギルドの規律に従ってもらう。」

ライバルパーティーはしぶしぶ引き下がり、ギルド長はミリアに一言だけ残す。

「お前らしい選択をしたな、ミリア。」

周囲から拍手が起こり、ミリアは仲間たちと視線を交わす。

(これが……私の新しい冒険の始まり。)

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