第35話 チョコレート
アムールの事務所に、大量のチョコレートが届いた。
宛先はノイセレの3人だ。
「すごいね。3人じゃ食べれそうにないわね。あなたたち、食べ過ぎたらダイエットもしなきゃいけなくなるしね。」
智香が脅す。
「えー、ちゃんと踊るから、お腹空くし、カロリーが必要だよ。大丈夫。爽香が残した分も、私が食べてあげるから。
もともと、私がお尻触られたからもらえたんだもの。」
なじみじは胸を張る。形のいい胸部装甲が強調される。
「とりあえず写真を撮って、お礼の色紙を書いて送りなさい。
浅利さん、色紙とペンを持ってきて。
そういえば、3人とも、自分のサインとそれから3人で作るノイセレのサインは決めてあるの?」
「バッチリだよ。」 杏奈が言う。
「大体、ボクと爽香は、小さい頃からサインの練習をしてたんだからね。」
爽香が顔を赤らめる。
「そ、そんなことないのよ。たまたまよ。」
爽香は、アイドルヲタだったことを、あまり知られたくないのだろう。
実際は、なじみも杏奈もよく知っているのだが。
なじみも、契約することが決まって、すぐにサインを考えた。
「やはり、芸能人と言えばサインでしょう。モデルとしても、かっこいいサインがあったほうがいいしわ。」
実は、なじみの母親の方がノリノリだった事は秘密である。
3人がそれぞれサインした色紙を送って、1週間後、智香が3人を集めて言う。
「ノイジー・セレブレーションの仕上がり具合はどう?」
ノイジー・セレブレーションとは、三人がデビュー曲のつもりで今まで練習してきた明るい楽曲だ。
これは、アイドル曲を数多く手掛ける前山川の作詞作曲による、ポップで明るい曲である。
川石みゆ先生の振り付けもしっかりできており、3人は毎日練習していた。
「バッチリです。そろそろ、ビデオを撮っても大丈夫です。」
リーダーの爽香が答える。
実際の音楽とビデオについては、契約しているレーベルが責任を持って撮る(録る)ことになっている。
いままでビデオを撮ってきた甘楽も現場には行く予定だが、撮影、演出、編集などもレーベルの手配するプロが行う。
楽曲に関しては、レーベルが原盤権を持つので、そこの仕切りは、特に老舗芸能事務所においては、厳格なのだ。
「そう、かなり仕上がってるのね。よかった。」
智香は、そう言って、3人に笑顔を見せながら告げる。
「良いニュースと、悪いニュースがあるわ。どっちを先に聞く?」
爽香の返事はこうだった。
「まずは良いニュースからお願いします。」
「そう。」
智香はにっこり笑って3人に伝える。
「最初のスポンサーが決まったわ。 スポンサーは、あのお菓子メーカーよ。あなたたちの、11月の楽曲デビューと同時に、テレビコマーシャルを始めるわ。
もちろん、同時にラジオもネットも雑誌も。全面的なタイアップよ。
予定では、チョコレートのパッケージを一新して、クリスマスでもアピールする形にするの。
そして、1月には新商品が出るわ。これは、もちろんバレンタインを狙った戦略商品よ。2月の終わりまでタイアップは続くわ。」
「やった!これで、これからもお菓子食べ放題ね。」なじみが喜ぶ。
「ナージャ。食べ過ぎちゃだめよ。」
真顔で爽香が嗜める。。
公式プロフィールを出すため、体のサイズなどを測りなおしたとき、なじみは2キロ増えていることが判明したのだ。
もちろんそれまでの貧乏粗食から、栄養たっぷり甘楽の食事や出前、外食、あとは間食もあって、むしろ増えないほうがおかしい。
ちなみに、ウェスト1センチ、バスト1センチ増えていた。
杏奈は横這い、爽香は1キロ増、ウェスト0.5センチ増だった。まあ、爽香の数字は誤差の範囲である。
「まぁ、本当は奈美も太りすぎってわけじゃないんだけどね。ただ、メディアの前でお菓子を食べる機会は確実に増えるわ。だから、それ以外のときは控え目のほうがいいわ。」
「あ、そうですね…」なじみが一瞬しょんぼりする。
「スポンサーが付いたのは嬉しいですね。で、上新部長、悪いニュースってなんですか?」空気を変えるように、リーダーの爽香が3人を代表して尋ねる。
「そうね。その話をしないとね。」
智香が笑顔で答える。ただし、目は笑っていない。
「まあ、そんなに怖がらなくてもいいわ。取り方によっては悪いニュースだし、いいニュースに変わるかもしれない。」
智香が気休めのように言ってから続ける。
「さっき、タイアップと言ったでしょう。これは、あなた方のデビュー曲との全面タイアップなの。」
「つまり?」 杏奈が聞く。
「ノイセレのデビュー曲が変わったわ。ノイジーセレブレーションではなくて、来週出来上がる、スイートsweetノイズよ。」
智香は事務的に答える。
「え?どんな曲なんですか。」なじみも聞く。
「タイトルは決まったけど、歌詞はまだできてないから。
実はメロディはできてるんだけど、歌詞がまだついてないから、完成するのは来週ね。
それからアレンジと振り付けをつけて、あなたちが練習する。」
爽香が恐る恐る聞く。
「それで、レコーディングとビデオ撮りは…」
「もちろん、10月頭にやるわ。TVCMもね。」
智香は平然と答える。
「曲が変わっても、10月初旬に、レコーディングするのは変わらないし、ビデオもその時に撮るわ。楽曲デビューが11月1日であることは決定済み事項だから。TVCMもそれで準備しているし、パッケージの印刷も始めているわ。」」
「「「えー! 」」」3人は叫んだ。
3週間、いえ曲があがって2週間しかないじゃないですか。」なじみが叫ぶ。
「だから、悪いかもしれないニュースって言ったでしょ。でも、どうせ、デビューライブでは最低4曲は歌わなきゃいけないんだから、それを考えたら、これは3曲目として仕上げなきゃいけないのよ。
それが1ヵ月早まっただけ。
チョコレートのタイアップだから、この曲はずっと2月まで流れるわ。
あなたたちは、少なくともこの曲を何度も歌って踊ることになるし、ミュージックビデオも何度も流れる。
というか、そうでなければいけないの。アムールの威信にかけてね。」
智香は諭す。
「スポンサーからお金をいただいている以上、曲も、商品もヒットさせないといけないのよ。
だから、スイートsweetノイズがあなた方に渡されるその時までに、ノイジーセレブレーションを完璧にして、次の曲に臨んでね。もちろん、前から練習してるアイドルソングも。」
「「「はい、わかりました。」」」三人の声が揃う。
「それと、わかっていると思うけど、今度エイティーンの撮影があるからね。
今回のエイティーンは、読モというかモデルとしての奈美だけじゃなくて、アイドルグループ、ノイセレのメンバーとして、他の2人も合わせて別に特集記事が出るわ。
雑誌に載せて良い質疑応答を考えないといけないのよ。とりあえず質問リストを渡すわ。それぞれ、答えを考え書いておいて。
後で、私か浅利さんがチェックするから。」
智香は続ける。
「まぁ、あなた方のことだから、変な事は言わないと思うけど、ストーリーに整合性が取れないと困るからね。
特に奈美。デビューの経緯のところ、間違えるんじゃないわよ。
伝達事項はこれまで。じゃあ、練習に戻って。」
「「「はい、ありがとうございました。」
3人の声が揃う。
この辺もだんだん板についてきた。
「なんか忙しくなってきたね。」
なじみが言う。
「そうだね、これからが本番だね。」
杏奈も言う。
「まぁボクたちは高校生だし、活動時間が限られるからちょっと楽とも言えるし、学業との両立で大変とも言えるかな。」
杏奈は、他人事のように言う
「そうね。基本的に私たちは、ウィークエンドアイドルよね。」
爽香も同意する。
「なにそれ?」
なじみが聞く。
「あるアイドルグループは、学生時代は、『週末ヒロイン』と言ってたの。平日はあまり活動せず、週末に限る。それを売りにしてたし、学業を大切にしてるってアピールにもなってたの。
まぁ、結局みんな社会人とかになってからも、週末ヒロインとは言い続けてるんだけどね(笑)。」
爽香は笑いながら説明する。
「とにかく頑張ろ。いまはNoisy Celebrationを完成させよう。関係者に迷惑かけないようにね。」
杏奈が言う。
「そうね。甘楽君に迷惑かけないようにね。」
爽香が言う。
「なんで甘楽の話を出すのよ!」なじみが突っかかる。
「甘楽くんのこと考えると、私も頑張れる気がするの。」
「甘楽はサーシャの恋人じゃないのよ」となじみ。
「でも、私にとっては大切な人なのよ。」爽香がちょっと女の子っぽい顔をする。
「それは三人とも同じだよね。三人で取り合うんじゃなくて共有するんだから。」
杏奈がとりなす。
「ま、あいつを囲いこむことはいくらこの3人でも出来ないだろうけどね。」なじみが達観した感じで言う。
「まあいいわ。練習に戻りましょう。」「
爽香の一言で、三人は練習に戻る。
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こんにちは。お急ぎですか。
…あなたは必ず来るわ。
作者です。
アイドルといえばチョコレートのCMですよね!
デビューからタイアップ。お尻触られるのも悪くない…かも!
今日は別途歌詞もアップします。
それはさておき、お楽しみいただければ幸いです。
ハート、★、感想いただければ幸いです。もちろんレビューも。
特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。
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