第28話 甘楽の忙しい日
土曜日で、世間の大多数は休みのはずなのに、甘楽は朝からお勤め、買い物、そして仕だ
「…俺、高校生だよな。何か間違ってるような気がするな。」
そう一人ごちながら、甘楽は自分の髪をセットし、服を着替えて、サングラスを掛けると、荷物一式を持ってマンションの部屋を出るのだった。
甘楽は、電車に乗り、新宿西口にある家電量販店へ向かった。一番の目的は、デジカメのメモリーカードの追加購入だ。容量が大きくて信頼度の高井ものを買う。
その後、撮影機材で便利そうなものがないかを見てみたり、交換レンズをいろいろ比較してみた。
(ソニーのカメラの場合,レンズは純正でなくても,むしろタムロンとかの方がノウハウがあるかもな。
あと、野外ロケやるなら、超望遠も欲しいかな。
まあその前に本体も買い換えかもな。デジカメ技術も日進月歩だからな。)
などと思いながら,楽しい時間を過ごす。
ふと気づくと、もう正午だ。
「やべ、時間ないや。」
そう呟いた甘楽は、コンビニで栄養ゼリーとカロリーバーを買い、その足で事務所へ行く。
到着したら、もう時間だ。結局買ったものも口に入れてないし、本当は先に智香と打ち合わせしたかったが,時間切れだ。
智香と顔を合わせると、そのまま会議室へと向かう。
会議室には、ウェブサイトの構築、運用をしている業者、エザリコの江沢社長と営業担当,技術担当がいる。
社長はもう60を越えているだろう、白髪が多く、疲れた感じの男性だ。
他の二人は30-40代だろうか。元気そうだ。、
全員初対面なので、名刺交換から始める。
今日の甘楽は,アムールの名刺を持っている。
ノイセレのウェブサイトに関する打ち合わせだ。
名刺交換の後すぐ,甘楽はおもむろに智香に言う。
「上新部長,契約書を見ましたが,正直このままでは仕事になりません。」
相手の三人は目を丸くする。
智香も驚く。
「なぜなの?こちらの会社は,付き合いもそれなりに長いし,他社より安くしてもらってるのよ。」
「値段の問題じゃないですよ。この契約だと,アムールのスタッフはサイトをいじれません。」
「どうして?今までだって、他の芸能人のサイトの中身は、うちのスタッフが投稿してるのよ?」
甘楽は首を横に振る。
「
それはコンテンツの話です。僕が言ってるのは、レイアウトやコードの話です。」
智香が眉をひそめる。
エザリコの江沢社長は気まずそうな顔をしている。
甘楽は指摘する。
「たとえば、サイトのここに星を1つ入れようと思ったとして、今の契約では、俺がそれ「を直すことが許されないんだ。」
「なんでそうなるのよ?」
智香がちょっと怒って甘楽に尋ねる。
「それは、この契約書だと、アムールにサイトの所有権がないからさ。
多くの場合、ウェブサイトが完成したら、サイトの所有権や著作権が発注者に移るような契約になってる。
そして、その運用を作った業さhが委託されるのさ。・
ただ、この契約書ではそうなってないんだな。つまり、家を建てるのに、大工に頼んだら、完成して引き渡ししても、実は建物の所有権が大工にあったみたいな、そんな感じかな。
値段が安いのには、そんな理由もあるかもしれない。」
「なにそれ。おかしいじゃないの。」智香は怒って甘楽に詰め寄る。
甘楽は、手で智香を制しながら言う。
「まぁ、そんな契約がないわけじゃない。昔は、こんな契約も多かったらしい。発注側にウェブ技術者なんかいなかったから、問題はなかなか表面化しなかったしな。
それに、グループ会社間での契約だったりすると、そんなのは当たり前だ。
ただ、縁もゆかりもない会社がそれをやるとどうなるかと言うと、契約が切れなくなってしまうんだ。」
甘楽がこう説明すると、智香が質問する。
「なぜ契約が切れないの? 契約の解約とか終了、更新の条項も入ってるよね。」智香はまだ理解できていない。
「サイトの所有権も著作権も作った方にあるんだから、契約を解除したら、サイトは使えなくなってしまうんだ。消されても文句が言えないんだよ。
この契約は、サイト構築と、継続的なメンテが規定されている。構築後、大体毎年契約条件の見直しになってるんだ。そこで例えば価格を倍にアップしたとしよう。
アムールは断れない。断ってサイトを消されたら大変だからな。言いなりになるしかないのさ。」
「なにそれ。うちはなんでそんな契約結んだのかしら。」
「確信犯なのかもしれないね。担当が、3社から見積もりを取って、ここが一番安かったと言えば、普通に選ばれるだろう。
その時に契約内容をあまりちゃんと説明せずに、値段だけ比較して、クオリティーはあまり変わりませんと言えば、そのまま通ってしまうこともあるんだろうね。
法務部がちゃんとチェックしてないのかもしれないし、タレント契約と違うからわからなったのかもしれない。とくに、システム担当がこれでいいと言えば、通るかもね。」
「これ、対応方法はないの?」
「社長さんがいる前で言うのはなんだけど、値段交渉して、所有権著作権を全部こっちへ持ってくるのが根本的な方法だね。まぁ譲渡契約を結ぶんだけど、今まで他社より安かった分を全部足しても、トータルでは多分マイナスかな。
まぁ、天下のアムールさんだから、良いものさえできてれば、支払いは誤差の範囲内かもしれないけどね。 それに、エザリコさんと使い続ける分には、問題は表面化しないよ。
エザリコさんだって下手に騒ぎたくはないはずだからね。」
先方の3人はただ黙っている。
智香は少し考え込んでいたが、やがて顔を上げて、先方の社長に言う。
「江沢社長、ちょっと2人で話しましょう。」
淀橋くんは、君が考えるフルスペックを二人に相談しておいてね。
注文する場合、どんなことをやって欲しいのか説明して、どれくらいのコストかになるか、確認しといてね。クオリティ重視でよろしく。
友香はそう言うと、社長を連れて別の会議室へ行ってしまった。そのシーンにふさわしいBGMは「ドナドナ」だろう。
甘楽は二人に話しかける。
「まぁ、契約とかお金とかの話はとりあえず置いといて、こちらとしてやりたいことをまずはお伝えします。
アイドルグループ、Noisy Serenity の専用サイトですね。
ウェブサイトの構築及び管理、並びにSNS全体の管理運営などがミッションになると考えてください。 ただ、コンテンツは基本的にこちらで提供しますので文章作成は不要です。
バナーの製作は別途相談ですね。守秘義務が守られるならクラウドソースで外注もありですし。
アムールのサブドメインではなくて、独自ドメイン想定ですね。ドメインだけなので、あとでDNSサーバは変更してください。
さい。
もちろんCMSを使って、複数のプラットフォームに同じものを同時にリリースして構いません。というかそれをお願いします。
ブログについては、当面は3人で1つで大丈夫です。交代で書くイメージですね。
各自のプロフィール紹介とインスタは別ページですね。
当然のことですが、スマホで見ることを重視したレスポンシブデザインでお願いします。
アクセス解析は、全ページにタグをつけて、週一でレポーティング。
回遊性の検証もね。
SEO,SEMについてもお願いする場合には、施策とリザルトを週次で報告。
あと、収益としてECを予定しています。ECが入ってくれば特にコンバージョンまでの要因分解が必要になると思います。
ファンクラブの会員ページは2段階認証。
将来、プレミアム会員ページを作るので、それを含めた出し分けを。
グッズ販売については、普通のものは、ファン以外でも買えるように、未登録者でも、ファンクラブIDでも、他のファンクラブとかのIDでも買えるようにします。
ただ、それとは別に、ファンクラブ限定グッズ、及びプレミアム会員限定グッズの販売もしますので、そこは留意しておいてください。サイトでは、ダウンロード販売もする予定です。
画像、動画、ASMR用音声のダウンロードも提供ですね。今までやった例があるかわからないので、過去にアムールでやってるか、確認してください。
基本DRMは掛けませんが、シリアル番号とウォーターマークを入れることになるでしょう。
それから場合によってはNFTを使うことも考えるので、イーサリアムをベースにしたNFTで使い勝手の良いプラットフォームを選んでください。
あと、運用は基本中の人が行えるような形で、通常の告知は、中の人が自分でやる形にします。
あと、ブログやインスタなどの画像アップロードの際に自動で位置情報のプロパティーを消す方向でよろしい。
あ、チケットとかは基本的に外部サイトで販売ですから情報とリンクだけで大丈夫です。
ただ、イベントリリースとかではアクセスが集中すると思うので、ロードバランサ―を淹れて、AWSやその他のクラウドサービスで、機動的に拡張して負荷に耐えられるようにしてください。
まあDDOSへの対応も兼ねることになりそうですね。
それから…」
甘楽のリクエストはほとんど際限なく続く。
現場の2人は、必死にメモを取りながら工数と、費用のことを考えているのか、顔が引きつっている。ただ、録音もしているので、あとでAIで文字お越しするのだろう。
大体話が終わったその時、智香と社長が戻ってきた。
智香は笑みを浮かべ、社長は疲れた顔している。
「淀橋くん、大体の要求は伝えたかな?」
今更だが、淀橋くんというのは甘楽のことだ。一応、対外的にはこう呼ぶことになっている。
「はい、部長。伝えました。ただかなり費用が多くなりそうですね。」
「それはいいわ。良いものを作ってほしいから。では社長、基本的には先程申し上げた通りで、見積もりは御社の通常料金で結構です。元の契約書は今のままで追加の覚書を出すこと。
それから特約事項として、当社の指定する者2名が、サイトのコードを修正する権限を持つこと。
それからこの淀橋甘楽が、御社に兼務出稿をすること。その辺を入れてくださいね。」
「分りました。法務のチェックもありますが、月曜日にはお送りします。」
「ええ、お願いします。」
智香は、そう言って、笑みを浮かべる。
「では私たちはこれで。」
エザリコの江沢社長は、他の2人を連れてアムールの事務所を出て行った。
疲れたような、そしてなぜか嬉しそうな足取りだ。
「兼務出向って何だい。」
甘楽が聞く。
「まぁ、要するに、あなたはあの会社に自由に出入りできると言うことよ。プログラムも自由に触って良い。これで文句ないでしょう。」
「サイトの所有権とかは?元の契約書はそのままなんだろ?」
甘楽は疑問を持つ。
「その辺は、大人の会話だから、あなたが気にする必要は無いわ。甘楽は、素晴らしいサイトを作って、あの子たちをプロモートするように、それだけを考えて。」
「よくわからないが、何かわかった。」
「何それ?」
「いや、こっちの話だ。じゃぁ、俺はこれで。」
甘楽は、そう言って、事務所を出。
(やっとできた自由時間だ。原宿ウォッチングでもしよう。)甘楽は、そう思い、原宿の方へ歩いて行った。
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こんにちは、お急ぎですか。
…よくわかrないけど、なんかわかった!
作者です。
あまり意味がわからないかもしれませんでしたね。すみません。
さて、アイドルに関するエッセイを書きました。
「ちーちゃん」です。
よろしければご覧ください。
「ちーちゃん」
https://kakuyomu.jp/works/16818093094556445602
お楽しみいただければ幸いです。
ハート、★、感想いただければ幸いです。
特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。
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