第21話 爽香の場合



(Side 爽香)


小さいころから、優等生だった。


クラスメイトで争いがあると、男の子でも注意した。


学級委員も毎年やった。

先生からも頼りにされていた。


背が高くて、中学に入学した頃には、たいていの男子よりも大きかった。


小学生の時には、口の悪い男の子たちからは「大女」とか呼ばれていた。


受験して中高一貫の共学校に入った。その頃から、背丈だけでなく胸も大きくなり、男子たちが、あからさまに胸ばかり見るようになった。


私はそれが嫌だった。


背が高かろうが低かろうが、胸が大きければ誰でもいいのか!と突っ込みたくもなる。


ただ、中学生になっても仕切り屋の状況は変わらず、学級委員は続けていた。


だんだん、男子からだけでなく、女子からでさえ「ねえ委員長、どうやったら胸がそんなに大きくなるの?毎晩揉んでる?」


などとセクハラ質問されたり、」時には後ろから女の子に抱き着かれて胸をもまれたりした。


優等生の私は笑ってごまかしたりしていたが、そういうのがとても嫌で、ストレスが溜まりまくった。



そんなある日、偶然にテレビでアイドルグループを見たとき、私に電流が走った。


格好いい。 大きな子も、小さな子も、一生懸命に歌って踊っている。


すごい。私の憧れだ。

その時から、その7人組グループ、にじいろクローバーのファンになった。


ファンというかプチ追っかけとも言えるだろう。まあ、お金はないので、実際に全国ツアーを追っかけたりはできなかったけど。


メンバーの顔と名前を覚え、プロフィールを調べ、踊りをマネする。


いつの間にか、いわゆるアイドルオタク、ドルオタになっていた。


にじクロのことならなんでも知りたいという欲求が高まった。


ただ、ファンであることは学校では秘密にした。真面目な委員長がアイドルの追っかけをやっている、なんてとても言えない。



中学3年のとき、ショックなことがあった。私の押しである、青色がイメージカラーの、「あさりん」こと葉山あさりちゃんが、卒業してしまったのだ。


あさりんは一番背が高く、私は彼女に自分を重ねていた。


だから卒業はショックだった。やっぱり大きな子はアイドルに向かないのかな、なんて思った。


心にぽっかり穴があいたようになった。その後のにじクロを応援する気力もわかなかった。


ストレスがまた溜まる。 


その頃、同学年や、高校生の男子から何度か告白されたけど、それもウザいだけだった。


どの子も、告白するとき、私の胸をガン見していたからだ。


どうせ胸目当てだろう、と思うと付き合うなんて考えられなかった。


でも、断ったあと、相手から「胸が大きいと思って調子に乗るな!」などと言われるのは、つらかった。


胸のことを罵倒されるのは嫌だったが、単純にののしられることそのものは、なぜか決して嫌ではなく、むしろ興味があった。


胸以外で罵倒されるのは、むしろ何だかむずむずして、なぜか嬉しかった。変だ。



男女交際にはもちろん興味がある。


中学3年にもなると、ちらほらと初体験の話も聞こえてくる。


うらやましい気もするが、胸目当ての男子だったら、たぶん付き合うとすぐに胸に手を伸ばしてくるだろう。


考えるだけでも嫌でたまらない。


胸でも背でもなく、内面の私を見てほしい。


仕切り屋で優等生の私のことを、愛を持って罵倒してほしい。


そんな変なことを考えながら、毎晩悶々とした日々を過ごしていた。


特に、ある晩、父の見ていた時代劇で、死体がむしろにくるまれて川に投げ落とされるシーンを見てからは、「私も縛られて投げ込まれてみたい」というとても人には言えない性癖が発現してしまった。


それからは三日と開けずに自分を慰めるようになってしまった。


結局、彼氏はできないままで、高校1年になった。


ある日、携帯で大ニュースを発見した。


何と、大手芸能事務所のアムールが、アイドルユニットを組むというのだ。


その時私は思った。


(押しがいなくなったのなら、アイドルになって、自分で自分を押せばいいんだ!)


早速願書を取り寄せ、応募要項を読む。


受かるのは数人。選ばれたら寮生活になり、また場合により指定する学校に転校することになるようだ。


私としては問題ないが、寮に行くことにはお父さんが反対しそうだ。


だからお母さんに相談した。


「通るかどうかなんてわからないんだし、やりたいなら応募しなさいよ。通ったら応援してあげるから。」


そう言ってくれた


さすがお母さん。話がわかる。

どうせ通らないと思ってるんだろうけど。でもなんか「やる気」が沸いてきた。


気合を入れて願書を書き、奮発して写真館で写真を撮ってもらい、応募した。」


応募したのを忘れるころの7月に、書類選考通過の通知をもらった。


嬉しかった。


「お母さん、書類審査通ったよ!これで面接通れば、私もデビューだよ。」



通知の書類を見ると、もう数十人に絞られたらしい。驚いたことに、一次選考のあと二次選考もあったらしい。私は特別扱いなのか、そのまま最終選考に行けた。


最終選考して

メンバーを選ぶことになるという、メンバー数は未定。ただし、人数は一桁を予定だって。


馬車道45のように、沢山受かるわけじゃないのね。、むしろにじいろクローバーみたいね。


確率の低さに、私はちょっとだけがっかりした。


お母さんに見せると、お母さんのほうが興奮してきた。


「本番までにダイエットしなさい。あと美容院も行ってね。動きやすい服ってたぶんジャージでいいけど、高級ブランドのものにしましょう。


シャネルとかどうかしら?」」


「お母さん、さすがにシャネルのジャージはないと思うよ。」私は指摘する。



「じゃあ、ジャージにTシャツ、ショートパンツにソックスにスニーカー、全部ナイキでそろえましょ! リストバンドもいいかも。小道具でテニスラケットも持ってく?.」


「さすがにラケットは要らないよ。当日邪魔だし。だいたい、受かるかどうかなんてわからないのよ。」


暴走しはじめた母を止める。


「何言ってるの?爽香なら大丈夫よ。美人で胸も大きいし!」


お母さんまで胸のことをいうのは、できればやめてほしい。





当日になって、アムールの事務所の会議室で待つことになった。ふと隣を見ると、どこかで見たことのあるカワイイ女の子がいた。


私はすぐに気づいた。この前、モデルデビューしたばかりのナージャこと野間奈美さんだ。


カワイイな~胸だって、私ほどじゃないけど結構ある。うん。私のほうが大きいぞ。きっと。


でも、こんな子が、アイドルになるんだろうな~。私はちょっとだけ自信をなくしかけた。


オーディションでも、私は結局仕切り役になった。


そして、ダンス本番の途中でアクシデントがあった。ナージャが、隣の女の子に転ばされたのだ。


私は思わず「止めてください!」と大声を出してしまった。

仕切り屋である自分の性格が出たわね…自分でも思った。


その事件をきっかけに、ナージャとあと2人の女の子と仲良くなり、メッセンジャーのグループを作った。


そして、結局私は選ばれた。


おそらく、ナージャとうまくやれるメンバーということなんだと思う。


私だけでなく、アーニャもやっぱりナージャと仲良しになったから選ばれたんだと思う。


正直、私もアーニャも普通の女の子だ。

ナージャは、はっきりアイドルだ。


あの子は明るくカワイイ。溌剌としたアイドルだ。


だからモデルにもなるのね。


あの子は、誰も否定できないアイドルだ。


だけど私とアーニャは十人並みのアイドルだ。


ナージャのおまけだ。それを私は自覚しないといけない。


それでもいい。

憧れのアイドルになれるのだから。


母だけでなく、父親も喜んでくれた。

転校すること、それから寮に入ることもあっさりOKしてくれたのだ。



寮は、高級タワマンだった。


プロデューサーの智香さんに連れられて、途中でアーニャと合流してマンションに行く。


迎えてくれたのは、ナージャ、それからイケメンの同い年くらいの男の子だった。

甘楽くんというそうだ。


甘楽くんはスタッフだけど、高校生だ。ナージャの同級生らしい。

カメラマンの助手として写真も撮ってくれる。


とても優しくしてくれる。


実は甘楽くん、私のことを好きなのかもしれない。 私っって、罪な女ね。


…と思っていたら、衝撃的な話を聞いた。


甘楽くんは、ナージャのセフレだと。

しかも、ナージャがエッチしたいときだけエッチする、ナージャ主導のセフレだって。


ナージャが経験済みなのも、ちょっと負けたって思ったけど、セフレ?信じられない。


もう一つ、衝撃的なことをも聞いた。

甘楽くんは、ナージャの初体験をビデオで撮って、編集してナージャにプレゼントしているのだ。


ビデオを見せてもらった。

すごく、キレイだ。


こんな素敵な初体験の思い出をこうやって残してくれるって、なんて素敵なことなんだろう。


…そう思っていると、そのうちさらに衝撃的なことが起きた。



小柄で、正直小児体形だと思っていたアーニャまで、甘楽くんと初体験をして、ビデオを見せてくれたのだ。


ビデオはやはり素敵で、アーニャがお姫様みたいに扱われていた。



私は…


やっぱり、甘楽くんにお願いすることにしt。


甘楽くんもちょっとあきれている感じだった。


アイドルユニット3人とエッチするなんて、普通なら考えられないもんね

ただ、甘楽くんは淡々としていた。



「本当に僕と初体験するんでいいのかい?」


「ええ。その代わり、二人に負けないように撮ってね。」



甘楽君は苦笑しながら答えてくれた。


「わかったよ。」」


実際、甘楽君は優しかった。


写真を撮りながらいい気分にさせてくれたし、実際にするときはビデオを丁寧に撮ってくれた。


 

甘楽くんは、どうやら女の子のしてほしいようにすることができるようだ。


女泣かせの特技といえそうね。

でも、あくまで淡々と、相手のことを考えながら動いている感じ。



そして、愛撫されて気持ち良くなりはじめ、


「どんな風にしてほしい?」と甘く甘楽君に聞かれたとき、


思わず

「もっと乱暴にして。ののしって。」

と口走ってしまt6田。



甘楽くんのトーンが少し変わった。


「ドMか。優等生らしい感じだな。」


甘楽くんはそう言うと、アイマスクをどこかから持って来た。


「おい爽香。これをつけろ。」



私はその後、両手を縛られ、いろいろなじられた。



それが心地よい。


そう。普段仕切っている私は、本当は命令されたい。いじめられたいのだ。


アイマスクがその状況を増幅する。



何をされるんだろう…その想像だけでもう体がうずいてしまう。


気づけば何度もイッてしまい、いつの間にか手の拘束は解除されていた。


目隠しが外された。


「もう十分だな。行くよ。」

そういうと甘楽くんは今度こそ私の中に入ってきた。



驚くほどスムーズだ。


(甘楽くん、私が経験者だって勘違いしないよね?



私はそんなことを考える。


実際は、もう受け入れ態勢が出来ていたたから、スムーズに運んだ初体験だった。



翌日、甘楽くんからメールが来た。リンクが2つある。


「上のリンクは、サーシャがしてほしかったことを赤裸々に撮ったものだ。その意味、本当の初体験だ。  下のリンクは、二人に見せるためのものだ。間違えるなよ。」


二人に見せるほうのリンクをクリックしてみる。


最初のシーンのあとは、すぐに初体験そのもののシーンだった。


目隠しも拘束もない。普通っぽい初体験に見える。」


…まあロストバージンを映像で撮るなんて、普通じゃないけど。


もう一本のほうを見て驚居t。

(え_私こんなこと言ってたの?)



でも、こっちのほうが私っぽいな。二人には見せないけど。





「私もついに甘楽くんに撮ってもらったわ。」


「「え~見せて見せて!」」



私はリンクを押し、スマホを渡す。


最初のころはインタビューとかだったが、その後が問題だった。


「え?何?手を縛られて目隠しされてる」

ナージャが言い、


「そっか。サーシャはドMなんだね。」とアーニャまでいう。


「いうこと聞きます。もっと蔑んでくださいませ」


間違ったリンクを押してしまったょうだ。




「縛られて喜ぶ変態女め!]


[お願いします。いうこと聞きますから!

ああ…お願い。ダメです!ああ.」

]


そう言いながら、画面の中の私は嬉しそうだった。






私はやっとのことで言った。・


「違うの!このビデオじゃないの」



もう、すべては遅かった。



「いいよ。性癖は人それぞれだもの。」

ナージャが慰めてくれる。


「普段仕切り役のサーシャは、エッチでは仕切られたいんだね。ま、一緒のときがあればボクもリードしてあげる。」


アーニャも言ってくれる。


…え?一緒に?どういうことだろう。


============================

こんにちは、お急ぎですか。

別に急いでいませんよ~


さすがに入場者プレゼント目当てとはいえ、5回目はちょっとなあ。

作者です。


バレンタイン後でテンションがさがっております。(自業自得)



お楽しみいただければ幸いです。

ハート、★、感想いただければ幸いです。

特に★があると作者は喜びますのでoお気軽にお願いします。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る