第20話 杏奈の思い
(Side 山田杏奈)
ボクは小学生の頃からずっと、クラスの中で一番背が小さかった。
最近はそういうことも無くなったけど、小学生の頃は背の順で並ぶこともあって、その度に自分が一番小さいことを認識させられた。
そのまま小学校ではずっとクラスで一番小さかった。
小学校では、というか中学でもそうだったな。
中学生になっても、私服の時は小学生とよく間違われた。
制服を着ていれば中学生とは思われたけど。3年になっても1年生と間違われることが多かった。
でも、背はあまり伸びなくても、体の中身はちゃんと成長して、中学二年では人並にアレが来た。
中学三年にもなると、大きな関心が二つ出てくる。一つは受験、もう一つは恋愛だ。
静岡県というのは田舎か都会かって聞かれたらどう答えるかなあ?
東京の人に聞かれたら、都会だよ、と答える。
たいていのものは手に入るし、東京にも名古屋にも一時間ちょっとで着く。まあ、ひかり号使えばね。
でも、地元の人間たちに聞かれたら、田舎だよね、と答えるだろう。
欲しいものがすべて手に入るわけでもないし、芸能人もなかなか見ない。
田んぼに茶畑、みかん畑。いちごも栽培されてるし、港では漁業が盛ん。うん。田舎だね。
ボクは小さいころからアリをじっと見ていたり、クワガタを捕ったりしてた。
近所のお兄さんに教わって、セミを手で捕って服に着けて、「セミのブローチ」なんてやってたよ。オスはうるさいからメスをくっつけるのがコツだよ。 あ、逃げるときにおしっこ掛けられることがあるのは問題だったな。
ちなみに、認めたくないけど、言葉もなまっている。気づかないら?
実は受験って高校受験はたいしたことはないんだよね。公立だって倍率は2倍切ってるし、一貫校は少ないから私立でもたいてい高校から入る。
ボクの成績は中の上だったけど、余裕で地元の公立に入った。一番上の学校だとギャンブルになるけど、自分の成績に見合うところなら問題ないんだ。
で、受験はみんなだいたい適当にすむので、気になるのはやっぱり恋愛だ。
恋愛すると、中学3年でも、もう性の話が結構出てくる。
「田舎は早い」っていうけど、その意味で静岡は田舎だと思う。
中学3年でも、女の子は結構経験してる。
相手はたいてい先輩。
サッカーのユースチームに入っている男子は多い。
試合を見に行ったりすると、可愛い女の子は、だいたい声を掛けられる。
ちょっと付き合うと、だいたい深い関係になるんだよね。
スポーツマンの男の子は、欲求が強いもんね。
彼氏の下半身の世話は彼女の責任、って言い切ってる子もいたな。
だいたい夏休みが終わると、毎年2人くらい、ミスっちゃう子が出るのも当たりまえ。
うちの母親の若いころは16で結婚できたから、彼氏が高校卒業したらそのまま結婚、女の子は中退ってケースもあったみたい。15で生んじゃったら、妹とか弟ってことにするらしい。
成人式に子供二人連れてくるって、すごいな~。・
ボクもやっぱり恋愛に興味があったけど、男の子からはあまり相手にされなかった。
やっぱりおっぱいの大きい子がいいよね。
適度に肉がついてるほうがいいだろうしね。
ボクみたいに小さくてぺったんこじゃ、なかなかね。
いいな、って思ってる同級生の男の子が、下級生と付き合いだしたのを知った時はさすがにへこんだ。
中二の癖におっぱいの大きい子だったな。負けたと思ったっけ。
友達が、なぜか大学生と仲良しで、杏奈を紹介したいから、って言って大学生の人と会ったこともあるけど、その人の目が妙に濁ってて危険な感じがしたから、速攻で音信不通にしたっけ。
あと、一度だけ告白されたけど、タイプじゃないから断った。 罰ゲームだったらしいけど、確認はしてない。
ボクだって、男の子にも、エッチにも興味はある。
でも、当分そんな機会なないだろうな~と思ってた。
だからストレス解消なのかカタルシスなのか、アイドルに興味を持った。
男じゃない。女の子のアイドルね。
馬車道45とか、にじいろクローバーとか。
結構背の小さい子もメンバーにいたりして、その子たちを見るたびに、ボクもアイドルになれるかな、なんて思ったっけお。
センターじゃなくても、端っこで存在感を出せるようになれればいい。
アイドルだと、彼氏作れないからエッチのことも考えないですむしね。
ちなみに、静岡にも一応ご当地アイドルはいるけど、興味はなかった。
どうせなら全国区だよね。
うちの父親は娘大好きで、何かあるとすぐにボクの写真を撮っていた。
だからボクは撮られ慣れていたし、カワイイと言われるのにも慣れてた。
だからアイドルになれるって思ったのかも。
とくに、中学卒業の春休みに、貯めたお小遣いで馬車道45のライブを横浜アリーナで見たときは衝撃だった。
アイドルとファンが一体になってライブが出来てる。ボクもステージに立ちたいな、って強く思った。
高校に入って少ししたら、アイドルのオーディションがあると知った。
これは出るしかない!
母親に頼んで写真館で盛りまくった写真を撮った。
熱意をもって願書を書いたら、書類選考に通った。
夏休みに東京に行って、オーディションに参加した。
驚いたのは、書類選考だけでなくて、東京では一次選考もあったそうだ。
ボクは予選なしでそのまま呼ばれた。
これはもしかして、背が低くて個性的だといって残ったのかも。
正直に、身長147センチって書いた。
それがよかったのかな?
でもオーディションを見て、自分は無理かなって思った。
可愛い子ばっかりだったから。
ボクはそこで戦略を切り替えた。受かりそうな女の子と仲良くなって、将来押してあげようって。
同性だから、メッセージ交換しても怒られないだろうしね。
で、オーディションの中で、3人と仲良くなった。
すでにモデルデビューしているアイドル顔で巨乳のナージャ、背が高くて優等生的なポジションを確保している巨乳の爽香。本物のギャルの杏奈。
ちなみに、静岡にもギャルはいるけど、杏奈を見たときに、「これがホンモノのギャルか~」って感心したよ。
静岡の女の子のしていた格好は、ギャルもどきだったんだ。
杏奈は本物のギャルだ。 すごい。
何と、4人のうち3人が通るっていうことになったよ。凄くない?
でも、あとになったら、たぶんナージャとの相性で選んだのかな、って思うんだけどね。 まあ何でもいいや。
内定の電話がかかってきたとき言われたんだ。願書にあった条件だけど、東京で寮に住むことと、学校も東京の学校に通うこと。
ボクにとっては願ったりかなったりだ。
友達には、家の事情で突然引っ越しだって伝えた。
まあメッセンジャーがあるから、いつでもつながってるよね。
寮と言っても、高級マンションだった。
奈美と爽香と3人で共同生活するんだって。
ボクは料理ができない。作ろうとすると、謎の物体が出来てしまう。ボクの前世は錬金術師なのかもしれない、って思うほどだ。
ナージャは料理が得意らしい。母子家庭で自分が作るしかなかったからみたいだ。いろいろ大変だったんだね。
爽香、いやサーシャだってお菓子作りは得意らしい。二人とも女子力高いね。
ボクは料理もできないし、好きなのはアイドルと、あとは空想いや妄想することかな。
その辺の景色を見ていてもいろいろ考える。
あの信号がいきなり踊りだしたらどうなるかな?
顔を振って踊ると、信号の向きがずれるから、車は大変だよね、なんて考える。
ほかにも、正露丸入りのハンバーグはおいしいかな、とか、三輪車で400メートルトラックで競走したら、ボクのほうが背の高い女性に勝てるかもしれない、なんて。
へんな妄想だね。自分でも思うよ。
共同生活を始めるにあたり、プロデューサーさんの身内の男の子を紹介された。
甘楽くんっていう、私たちと同い年の男の子だ。
私たちの身の回りの世話をしてくれる、結構なイケメンだ。
とっても気配りのできる男性で、しかも胸の大きさや背の高さで差別しない(これ重要)。
三人の写真を撮った時も、とっても自然な感じで撮ってくれた。ボクはパパに写真を撮られ慣れてるんだけど、それでも甘楽くんのやり方はとても自然だった。
食事も作れるし、頼めば洗濯までしてくれる。
脱いだパンツを男の子に洗ってもらうのは、さすがに抵抗あるよねえ。
それはそうと、甘楽くんはボクに特別優しい気がする。
写真を撮るとき、特にそう思ったよ。
アイドルとスタッフの禁断の恋。
何だかちょっとそそるけど、ダメダメ!
「ダメだといわれると我慢できなくなるんだよ。アーニャ」
なんて甘楽君に言われたらどうしよう…などとまた妄想してる。
ボクはサーシャとこんなじゃれあいしてた。
「ボク思うんだけど、甘楽くんってボクのこと好きだと思う。ボクを見る目が熱いよ。それに、ボクにささやくとき、何か特別缶があるんだ。
スタッフと恋人になるのって、いいいのかな?」
「ちょっとアーニャ、それはきっと気のせいよ。だって、甘楽くん、私のこと好きみたいだよ。」
「えー、甘楽君はボクに惚れてるよ。間違いない。イケメンだし、女子力強いからどいしようかな。」
それで、ボクたちはナージャに聞いてみる。
するとナージャが爆弾発言したんだ。
「実はね…セフレ」
何と甘楽くんはセフレだと。
それも、ナージャが甘楽くんの好きにされる都合のいい女じゃなくて、甘楽君が、ナージャの要望でエッチしてくれるという、ナージャ主導なんだって。
…そんなセフレなら、ボクにもいてもいいかな。
しかも、甘楽くんは得意のカメラワークで、ナージャとの初体験をビデオで残してくれたんだって。
見せてもらった。
ボクもサーシャも顔が真っ赤になった。
でも、いやらしい感じじゃなくて、むしろキレイだった。
ふとボクはつぶやいた。
「…ねえ、甘楽くんって、ボクのセフレにもなってくれるかな?」
猛然とサーシャが反発するけど、ボクは決めた。
甘楽くんと初体験して、ビデオを残してもらって、セフレになってもらうんだ。
ボクは決心した。
…ぐずぐずしていると、ムッツリスケベのサーシャに先を越されるもんね。
部屋に戻ると、ボクは甘楽くんにメッセージを送る。
「ナージャと同じことしてよ。」
すぐに甘楽くんから電話がかかってきた。
「アーニャ、わかってるのか?」
「うん。ボクの初体験の相手になって、映像も残して欲しいんだよね。」
「…いいのか?」
「うん。ボクは甘楽くんを恋人にしたいわけじゃないからね。エッチに興味のある一人の女の子として、リードしてくれて秘密を守れる相手が欲しいんだ。」
「…わかった。じゃあ、あさっての午後にな。大きな帽子とサングラスとマスク、パーカーを準備してくれ。
できればロングスカートとヒールの高いサンダルで背も高く見せるようにな。」
「変装しないとマスコミがうるさい?まだ知られてないよ。」
ボクがいうと、
「いや、見た目小学生をラブホに連れ込んだら余裕で通報ものだ。せめて背を高くカモフラージュしてくれ。」
何だか、ちょっと傷ついたけど、その気持ちもわかるのが寂しい。
そして、甘楽くんはボクをラブホテルに連れて行ってくれた。
三脚をセットして、写真もビデオも撮ってくれた。
甘楽くんは、本物の紳士だった。
とても優しくしてくれて、自分の欲望より私のことを心配してくれる。
正直、最高の初体験だったと思う。
これでボクも大人の階段を高校一年の夏休みに登ってしまった。
何より良かったのは、最初からあまり痛くないし、気持ちよかったことなんだよね。
さすがベテラン。女泣かせの甘楽くんだね。(ボクがそう決めた。)
あとでビデオも見せてもらったけど、やっぱりキレイに撮れてる。
甘楽くん、すごいな。
ボクの彼氏にできないのが残念だね。
でも、時々はまた御姫様扱いしてもらおう。
…他の二人に怒られない程度にね。
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こんにちは、お急ぎですか。
〇〇〇〇が戦えと言ってる。
作者です。
第20話をお届けします。
え?こうなるの?とお思いのあなた。
そうなるんですよ。
だってこのタイトルたもの…(笑)
(前にも書いたな。)
続きは…待つ間に★や??でもつけてくださいね(笑)
お楽しみいただければ幸いです。
ハート、★、感想いただければ幸いです。
特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。
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