第4話 甘楽の忙しい週末



甘楽は一人暮らしだ。

正確には社会人の従姉もいるのだが、彼女はもともと別の場所で一人暮らしをしており、両親が世界一周で不在にしている現在、甘楽の事実上の保護者というか親代わりをしている。


彼女、上新智香(ともか)は甘楽とは11歳1違う。現在27歳で、芸能プロダクションに務めている。


多分、今夜あたり来るかもしれない。



甘楽は起きてシャワーを浴び、トーストとハムエッグの朝食を食べる。


それから、昨夜のビデオ、写真の整理を始める。

まず、ビデオカメラ、スマホそしてデジイチ(デジタル一眼レフカメラ)のデータをパソコンのSSDに移動する。


編集作業はこのSSD上で行うのだ。


甘楽は今回、短くても本格的なムービーを作ろうと思っている。


ちゃんとした作品を作るためには、全体の構成をしっかり考える必要がある。


そのためには、素材となるこれら映像と画像の内容をチェックしなければならない。


甘楽は、デュアルモニターの片方でビデオを流し、ビデオ編集ソフトで使えそうなところにフラグを入れていく。



その一方で、撮影した写真もチェックし、そのまま使えるもの、加工が必要なもの、使わないものに分けていく。・


ただこの作業も簡単ではない。写真に集中しすぎると、動画を見直ししなければならず、このロスは大きい。


かと言って動画ばかり見ていると、写真の分類が進まない。

写真は、分類したあと加工しなければならない。


一発加工の機能もあるのだが、なかなか思う通りにはならない。

光源が室内灯だったので、やはり少し限界がある。


色だけでなく、輝度の修正なども必要なのだ。



だが今回は、写真は動画の終わりのラッシュで使うだけの予定だ。

そのため、あまり気にせず分類していく。


動画でも写真でも、綺麗に全身が撮れているシーンもあれば、とんでもないところのアップのシーンもあったりする。


今回使わなくても、別の意味で使うかもしれないものもあるのだ。




結局、動画にフラグを入れ、写真を分類するだけで4時間もかかってしまった。



一度休憩して、冷凍ピザを食べる。食べきれず半分残す。明日の朝食でいいだろう。


インスタントコーヒーを飲み、甘楽は作業に戻る。



今度はムービーからフラグを付けたところ抜き出し、1本にまとめる。

作ってみたら長いので、ここから編集作業だ。


冗長なシーンやどぎついシーンをカットする。

エッチのシーンも取り交ぜ、卒業を記録することはもちろんだが、全体的に「綺麗な思い出」となるようなムービーの製作を心がける。




大体の尺が出来たら、今度は画像の加工、それから音楽の挿入、そしてタイトルバック、エンドロールなどの作成とやることは多い。



最後は撮った写真をぱらぱらと表示するカットバックのシーンも作成する。


高々7分のムービーを作るのに、結局最初の作業と午後の作業を合わせて6時間もかかっている。

ただ、満足できる出来になった。

甘楽はこのムービーをプライベートクラウドにアップし、パスワードを掛ける。


リンクのメッセージを送り、別途SMS でパスワードを送る。


なじみは賢いから、こう送ればわかるだろう。



その後、長い尺の動画も作る。冗長な部分を削るくらいで、要するにエッチの記録だ。


いろいろ外には流せないようなシーンの出てくる。ただあくまでプライベートだ。外に出すことは無い。


こちらの方も、かなり「使える」動画になった。まあ、これはなじみには見せない。見せられないと思う。

別にAVを撮るわけではないのだから。


だが、長尺の動画の編集は疲れるし、時間がかかる。

何とか一本を仕上がエアといきには、夜の9時を過ぎていた。


さすがに何か食べないとな…

スマホを見ると、ちょうど従姉の智香(ともか)からメールが入っている。


「夕食もう食べた?」の一言だ。


甘楽は智香に電話する。


「ヤッホー。甘楽、晩御飯食べたあ?」 27歳という年齢の割に甘ったるい智香の声がする。

「いや、今まで作業してたからまだ食べてないよ。さすがに作る気力ないから、食べに出る?」


「ううん。今高級スーパーにいるから、オードブルとかチキンとかいろいろ買って帰るね。プチパーティしよ。」


そう言うと電話が切れた。


甘楽は独り言ちる。


「相変わらず人の話を聞かないな。どうしてこれでコミュ力お化けになれるんだ?」


コミュ力お化けというのは、智香を表す甘楽の言葉であろう。


 智香は、母の姉の娘だ。 姉夫婦が交通事故で亡くなり、甘楽の両親が保護者として智香を引き取ったのは、智香が16歳、甘楽が5歳の時だった。


智香は甘楽を弟として可愛がり、甘楽は智香を姉として慕った。


智香は、高校を出たあと服飾の専門学校に行き、20歳で甘楽の家を出て、一人暮らしを始めた。その時9歳の甘楽が大泣きしたことを、智香はいまでも口に出すくらいだ。



智香はスタイリストになるため服飾の専門学校に通っていたが、在学中から

先輩スタイリストの助手をしつつ、いろいろな知り合いを増やしていった。


20歳でフリーランスのスタイリストになった時には、すでにスマホの連絡先は500を超えていた。


男女わけへだてなく誰とでも仲良くなれる、あるいは信頼されるという特異なな能力を持っているのだ。


モデルの写真撮影でスタイリストとなれば、メイク担当やカメラマン、雑誌の編集からスポンサーのお偉方まで、ほぼ全員と仲良くなってしまうのだ。

スタイリストだけでなくメークアップアーティストとしても仕事をしたり、ヘアメイクも得意だった。


22歳の頃には、カリスマ美容師、有名カメラマン、編集者、キー局プロデューサー、食品メーカーや自動車メーカーなどのスポンサーの役員などとも仲良くなっていて、また有名芸能人たちからも人生相談なども受けるようになっていた。


そして、25歳のとき、強力なスカウトにより、大手芸能事務所のアムールの社員になったのだ。肩書は第四製作部 チーフディレクターというもので、とにかく忙しい。


そのため、甘楽のところに顔を出すことは少ないのだ。


智香が家にやってきた。手には大きな紙袋を抱えている。


「甘楽~おつまみいろいろ買ったよ。食べよう!」「



そういう智香に対し、甘楽は

「どうせワイン飲むんだろ。先にシャワー浴びときな。」


と声を掛ける、。


「うん、そうするね~」智香は素直い返事をする。

その間いに甘楽は智香の買ってきたものを手早く並べたり、皿に盛り付ける。


ワイングラスの大小とシャンパングラスも並べる。

氷水も用意し、準備万端だ。自分の分はジンジャーエールだ。


シャワーから戻った智香は、バスローブ姿だった。

いつものことなので甘楽も何も言わない。


智香は、一本の瓶を甘楽に見せた。


「今夜はこれよ。ヴーヴ・クリコね。甘楽もお相伴しなさい!」


「おお、いい趣味だ。少しだけ付き合わせてくれよ。未成年だからほどほどにな。」」


ヴーヴ・クリコは口当たりのよい高級シャンパンだ。


二人は乾杯する。飲むと、スパークリングの口当たりと少しだけ甘めのテイストがマッチして、美味だと甘楽は思う。未成年でも少しは味わいたいところだ。


そして甘楽はちょっと呆れながら言う。


「食い物多いよ。、節操なさすぎ。手当たり次第に買ってきたろ。」

「だって~3割引きが多かったんだもん。」


テ―ブルの上には、オードブルセット以外に、ローストビーフ、フライドチキン、焼き豚、スモークサーモン、野菜サラダ、ペンネパスタ、ちらし寿司そしてマーボー豆腐などが並べられている。

バゲットを切ったものも籠に入っている。


「残ったら、明日食べるよ~」

智香は気にしない感じだ。


その後、テーブルの上のものをつまみながら、二人はヴーヴ・クリコとジンジャーエールを飲みながら楽しく話した。


というか、普段は智香の愚痴を聞く時間だ。


「今日はお祝いなのよ~」

「何だい?だからご機嫌なんだね。何があったの?」



「うーん、言えない。」


「だったら言うな。」


「え~聞いてよ。」」


「めんどくせえ女だな。」


「うるさい!あのね、新しいプロジェクトやることになったの。」


「ふーん。よかったね。」


「あ、気のない返事。聞いてくれないの?」


面倒くさいが、こういう会話に付き合うのも甘楽の役割だ。


「じゃあ、どんなプロジェクトなの?」


「アイドルユニット作るのよ。その責任者。」

「ほお。どんどん出世してるね。」


「これ通すのに、社内のジジイとか口説くの大変だったんだから。」


「口説くって、もしかっして…」


「まさか。やらせないわよ。男はやらせたら終わりよ。やれそうだって思いながらやらせないの。」


「あーはいはい。」


「この前なんてね。違う事務所の社長から、給料倍出すから移籍してくれって言われたのよ。でもその社長、タレントに手を出せないからってスタッフに手を出すみたいなのよ~それでね~」


話をするうち、智香は寝てしまう。



(やれやれ)甘楽はまずテーブルを片付け、寝てしまった智香を彼女の部屋に運ぶ。

ベッドに運んだとき、智香はぱっちりと目を開け。甘楽に抱き着く。



「甘楽~お願い~~」


甘楽も予想していたので、ゆっくり智香にキスをした後、彼女のバスローブを脱がせ、自分も服を脱く。


「今日は俺もちょっといろいろあって、滾ってるからな。」」

そういうと、二人は互いをむさぼりあった。



実は智香は甘楽の初体験の相手だ。

中学卒業のとき、卒業祝いと称して関係を持ってしまった。


15歳の甘楽、26歳の智香の両方とも初めてだった。


「あーあ、保護者と関係を持っちゃったよ。」

「いとこ同士だから問題ないよ。」

そんな会話がかわされた。


ただ、二人は恋人ではない。

やはり家族なのだ。


お互いを支えあう家族。その一環として、時々抱き合う感じなのだ。


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こんにちは、お急ぎですか。

別に急いでいませんよ~ 


作者です。

第4話をお届けします。


なじみと甘楽はこれからどうなる?

続きは…待つ間に★や??でもつけてくださあいね(笑)


お楽しみいただければ幸いです。

ハート、★、感想いただければ幸いです。

特に★があると作者は喜びますのでoお気軽にお願いします。










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