第2話 初めての経験

2.初めての経験


ラブホテルの部屋に入ったなじみは、きょろきょろとあたりを見回している。

当然、来た経験のない場所だ。


「まあ、リラックスしなよ。」甘楽は言う。


同い年の高校生でも、全く違う態度だ。


なじみは、部屋の隅にある、透明の小さなキューブが集まったようなボックスを覗いている。


「あ、それは自動販売機だ。ちょっとしたおもちゃを売ってるぞ。」


なじみは何も言わず、顔を赤らめる。


「とりあえず座れよ。」部屋にあるソファーに座らせる。

甘楽は、なじみの横に座る。


なじみがさっと緊張したのを甘楽も見て取った。


「そんな、緊張するなよ。別に取って食うわけじゃああるまいし。」


「私、取って食われるんですよね…」なじみがつぶやく。


「別にそういうわけじゃにあ無いだろ。関係は平等だよ。食うか食われるかじゃなくて、一緒に楽しむ共同作業だよ。


まあ、初めては緊張するだろうし痛みがあるかもしれない。でもいつかは経験することだ。

これでお前が変われるなら、いいんじゃないか?


どうしても嫌なら、やめてもいいぞ。決めたはずなのに日和るような、そんなつまらん女に価値はないけどな。


それに、そんなことをしたらお前は絶対後悔するだろうけどな。」

甘楽はちょっと煽る。


「お願いします。私は、変わりたい。」

なじみは頭を下げる。体は小刻みに震えている。


「よし、よく言ったな。最高の思い出を作って、人生を変えてみようぜ。」

甘楽は明るく言う。


ふと思いついた甘楽は付け加える。

「記念に、動画を撮っておかないか。俺とお前だけしか見ない思い出だ。」


「え…」なじみは絶句する。


「お前の初体験を、ちょっとでも残しておこうぜ。後で見返すことで、お前の宝物になる。

それに、初体験の動画は二度と撮れないぞ。」


「え…でも、淀橋君のことは信じたいけど、変なところに流されたら困るし…。」

なじみは難色を示す。


「何言ってるんだよ。まず、俺は金には困っていないし、将来のため、映像制作の練習もしている。


それにな。悪いけど、これから撮る動画の商品価値はほぼないんだよ。


世の中にエロ動画がどれくらいあるか知っているか? スタイルのいいエッチな美女がきっちり脱いでるものが溢れてるんだ。


それと比べると、お前の記録なんて売り物じゃない。 思い出として残すだけのものだ。あとで編集して、ちゃんとしたショートムービーにしてやるよ。」


「でも…」なじみは躊躇している。


甘楽は構わず、ビデオカメラと携帯三脚を取り出してカメラを固定する。


ちょっと暗めだった部屋の照明を明るくして、座るなじみが画面に映るようにセットする。


「じゃあ、試しにやってみよう。 記録のためだからな。お前の声が必要だ。じゃあ、これから質問に答える形で始めよう。あ、名前は言いたくなければ変えてもいいぞ。 じゃあ十秒前、八、七、六、五秒前、…:


そこから甘楽は無言で指で数字を出す。

その手を下に振り降ろし、スタートを示すとともに、ビデオのスイッチを入れる。


「今日は、はあまり目立たないけど実は可愛い女性がここにいます。お名前を聞かせてください。」


「…ナミです。」 なじみはこの名を使うことを決めたようだ。


「ナミさんですね。、何歳で何年生ですか。」


「十六歳。高校一年です。


「趣味は何ですか?」


「読書くらいです。」


「今まで何人の男性と御付き合いしましたか?」


「ありません。」


「ファーストキスはいつ?」


「さっきのが初めてです。」


ここで甘楽はカメラを止めて言う。

「カット! さっき、ノーカンって言ったよね。あれは忘れて。」


なじみは身を縮めて小さく「はい」と言う。・


「じゃあ、やり直しね、5秒前、…」


甘楽はビデオを再開する。


「ファーストキスはいつですか・」


「まだありません。」


「じゃあ、男性経験は?」

「ありません。」


「一人エッチは週に何回?」


なじみは真っ赤になりながら答える。

「…1-2回です。」



「今の気持ちは?」


「緊張してるけど、これをきっかけに自分を変えたいと思っています。」


「じゃあ、頑張りましょう。」


「はい。」


甘楽はカメラを止める。

「カット! ああ、よく言えたな。良かったよ。じゃあ、そろそろ始めよう。

先にシャワーを浴びておいで。バスローブもあるはずだから。」


そう言って甘楽はなじみを浴室に向かわせる。このラブホテルには風呂もあるが、今日はいいだろう。


なじみは従順に浴室のほうに行く。

浴室と洗面所はあるが、脱衣所のドアはない。


なじみは悩んでいたが、浴室の前で服を脱ぎ始めた。

メガネを外したなじみが気づかないうちに、甘楽はその姿も撮影する。


なじみが浴室に入る。実はここのラブホテルは、浴室の窓が部屋のほうにもついており、部屋からも見えるのだ。 甘楽はなじみのシャワーを浴びる姿もきっちり撮影した。


なじみがシャワーを終えてバスローブ姿で出てくる。髪にはタオルを巻いている。


なじみにはベッドに入るように言い、甘楽も手早くシャワーを浴びる。


シャワーから出るとなじみが言う。「お風呂の中、部屋から見えるんですね。」

「そうだよ。」 甘楽は当然のように言う。



カメラを手に持ち、甘楽は言う。

「さあ、ナミさん。お楽しみの時間だよ。」


なじみは、メガネを取り、ベッドの上で薄い布団にくるまっている。

甘楽はビデオのスイッチを入れると、布団をはいで、なじみに語りかける。


「ナミ、可愛いね。」そう言いながら甘楽はなじみにキスをする。

画面では、なじみの顔がアップになったところで、ちょっと横にずれ、キスの瞬間は甘楽の横顔が少し映るようにした。 この辺はあとで編集するつもりだ。


「ファーストキス、いただいたよ。」


カメラは、なじみの顔を映す。 なじみは小さくうなずく。


甘楽はバスローブに手をかける。

なじみは目をつぶっている。



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二人一緒に絶頂を迎えたのだ。


少し時間をおいてから、甘楽はビデオカメラを取り、ベッドに転がるなじいの顔を映し、キスをする。


「初体験、おめでとう。

今の感想は?」


「する前はちょっと怖かったけど、実際にしてもらったら、それほど痛くもないし、最後は気持ちよくなりました。


甘楽くんのリードが良かったのね。ありがとう。」


(おいおい、名前を出すな。)甘楽は思う。 まあ、あとで修正しよう。


「というわけで、無事にナミさんは卒業できました。きっとこれから、エッチな女の子に成長してくれるでしょう。では。」


甘楽はそう言うと、もう一度なじみの顔から下半身まで舐めるように映し最後になじみの顔をアップにして、カメラを止めた。



「はい、撮影終了。お疲れ様でした。」甘楽はそう言うと、またなじみにキスをする。


なじみの顔は上気しているが、とても整っていることに甘楽は気づいた。


エッチすると美人になるのかもしれない。 色気も感じる。




「今日、何回キスしたかな?」甘楽がおどけて言う。


「数えきれないくらい。」なじみが言う。


「良かったかい?」

「うん、とても。ありがとう。人生変わる気がする。」」



「それはよかった。」甘楽は言う。


「あの…これで終わりなんですか?これからも友達でいてくれますか?」

なじみが言う。


恋人とか言わないところに好感を持った甘楽は、なじみに言う。


「そうだね。もし良ければ、セフレになってあげるよ。君がエッチしたくなったときに連絡くれれば、エッチに付き合う。ホテル代くらい出すから、お金のことは気にしないで。 じゃあ、あとで連絡先交換しよう。」


なじみはちょっと面食らったような顔をする。甘楽は続ける。


「クラスの女子で、体験済みのやつもいるかもしれないが、好きな時にエッチできるセフレを持っているやつなんがいないだろう。


セフレにされて都合の女になってるやつはいるかもしれないが、自分がセフレを持っている奴はたぶんいないぜ。お前は、好きな時に俺とエッチできる。試したいことは試せる。


これも優越感だろ。」


なじみは無言でうなずいた。


「じゃあ、そろそろ引きあげよう。シャワーを浴びなよ。ただし、匂いがあるから、石鹸やシャンプーは注意したほうがいいかもよ。」


「わかった。ありがとう。」

なじみはそう言って、シャワーに行く。


甘楽もコンドームを片付け、簡単に動画をチェックする。

かなりよく撮れているようだ。


念のためスマホを出し、シャワーを浴びているなじみの写真を撮る。

シャワーから出てきた彼女のことも撮る。


「え~、まだ撮るの? ベッドに行こうか?」

なじみもなぜかノリノリだ。


「おお、助かる。」


なじみはタオルで体を拭き、ベッドに戻る。

タオルを取れば当然全裸だ。


枕に頭を乗せたところから、顔、バストショット、全身と撮っていく。


ついでにダブルピースをする写真も撮った。

 

甘楽は止まらなくなり、ミラーレスデジタル一眼レフも取り出して、なじみを撮りまくる。


満足した甘楽は、礼を言う。

「なじみって、すごくいい被写体だな。ビデオも写真も、いくらでも撮れそうだ。」



なじみが言う。

「実はね。最初は恥ずかしかったけど、撮られてるって意識したときから、とても気持ちよく感じるようになったの。


地味だった私だけど、もっと見られたい、撮られたいって感じたみたい。


またお願いしようかな。淀橋君、いい?」


なじみがおどけて言う。


「ああ、喜んで。あと、甘楽(かんら)でいいよ。俺もなじみって呼ぶし。」甘楽も答える。


着替えて連絡先を交換し、ラブホテルを出る。


今日は金曜なので、次に会うのは月曜だ。


「じゃあ、また来週。」


「今日は本当にありがとう。甘楽君、またね。」


送っていこうかと甘楽は思ったが、塾の帰りを装うのでいい、とのことだった。

メガネを掛け、地味子の服装に戻ったなじみは、駅に向かい、夜の街に消えていった。



(あの体はエロいな。あとを引くぞ。それに、実は綺麗な顔をしているな。)


甘楽は思う。


(この週末はビデオの編集作業だな。頑張ろう)




甘楽は、自宅のマンションに向かって歩きだした。



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