妖怪女
ツヨシ
第1話
その日、昼過ぎにはアパートに帰った。
いつもならまだ仕事をしている時間だが、工場でちょっとした事故があり、責任者を除いて全員、早退となったのだ。
鍵を開けて部屋に入る。
――うん?
玄関を開けるともう部屋全体が見渡せる間取りなのだが、見れば俺のベットに誰か寝ているのだ。
――ええ!
すると寝ていた人物が起き上がった。
そして俺を見た。
女だ。
背がやけに低く、手足をふくめた体全体が、異様なほどに細い。
その上両手が冗談かと思うほどに、長い。
小さくて細く吊り上がった目で、鼻も小さくておまけに鼻先が上をむいており、口は大きく唇がやけに薄い。
顔色は、ペンキを塗りたくったかのような青白い顔だ。
長い髪はよれよれでばさばさだ。
年はよくわからないが、若くはなさそうだ。
見た目は一応人間の女なのだが、印象としては完全に妖怪だ。
そんな奴が俺の部屋のベットで寝ていたのだ。
あまりのことに声も出せずに見ていると、黙って俺を見ていた女が言った。
「えっ、もう帰ってきた?」
女にしては低く、おまけにしゃがれてガサガサの声だった。
女が動いた。
信じられないほどのスピードで俺の横を抜け、そのまま外に出て行った。
一瞬遅れたが、女のあとを追った。
しかし女はその体からは想像できないほどの速さで、どこかに行ってしまった。
――なんだったんだ、今のは?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます