第5話 今度こそ転生したっぽい
「でも弁護士さんってここまでしてくれるんですね。もっとビジネスライクなのかと思ってました」
爺ちゃん家に向かう車の中で、弁護士さんに聞いてみた。
前回は、なんか戸惑いも大きかったし、緊張してて聞けなかったからさ。
そしたら
「
と言って、笑われた。
俺の知る限り、うちの爺ちゃんが弁護士なんかによくする機会があるとも思えないし、そもそも人の面倒見るタイプでもなかったので、どうにも違和感があるが、女神の言うところによればここは異世界らしいので、そういうもんかと受け取る。
家に着き、買い物をするところまでは前回と一緒。
夜はテレビをつけずに、思わず耳を澄ませてしまったが、再度飛行機が落ちてくることはなかった。
というか、近くにあると思った空港がなくなっていて、そもそも飛行機が飛んでくるということがなくなっていた。
徹底したリスクヘッジ。やるな女神。
それでも、今度は山でも崩落して飲み込まれるんじゃないかと少しドキドキしていたが、何事もなく朝を迎えた。
次の日は家の片付けを、と思っていたが、正直、荒れているどころか、まるで人に渡すことがわかっていたかのようにキチンと片付けられていたのでやることがあまりない。
近所の人に挨拶でも行くべきか。田舎だし近所付き合いは大切だろう。
町内地図とかないのかなと思って、探していた時、爺ちゃんの書斎っぽい部屋(なんとここだけ洋風)の机の引き出しに大きめの封筒が入っているのを見つけた。
表書きに『鉄人へ』と、俺の名前が書いてあったので開けてみると、中には一枚の手紙とたくさんのお金。
手紙には「どうせお前のことだから、貯金なんてないんだろう。少ないが、当座に必要なお金として使いなさい。みんなには内緒だぞ」と書いてあり、帯封のついた束が3つ。
300万!?
当座の金としては十分すぎる。異世界のお爺さま。どうもありがとうございます。
書斎にはなんか難しい本が並んでるし、本当に名前以外は俺の知ってる爺ちゃんの要素がまるでない。
俺の知ってる爺ちゃんは本なんて読まないし、市役所に電話かけて「もしもし! ウチじゃけどよぉ。は? 巌人!」って言うような人だった。
改めて言うまでもないが、うちは別に名乗らずとも誰かわかるとかの名家ではないし、爺ちゃんも別に誰でも知ってる名士と言うわけではない。
ともあれこれが、俺がこれから生きる世界というわけだ。滑り出しは順調じゃないか。
町内地図は見つかったが、手土産の用意が何もないので、挨拶は明日に持ち越すことにする。
めんどくさいけど、手土産を買いに行くか…………。
300万も手に入ったし、保険金もこれから入るだろうから、中古の軽とか買おうかな。
小さいバイクとかなら、会社に行った時にも駐車場に困らなくていいかもしれない。
そんなことを考えながら、自転車でもないかなと庭に出た時、家の横に蔵があるのが見えた。
記憶が確かなら昨日はなかったはずだ。
好奇心に勝てず、蔵の中に入る。意外に煤っぽくないというか埃ひとつ落ちていない。
長持や棚が、いくつも置いてあり、何やらよくわからない壺やら箱やらが、大きいのから小さいのまでたくさん並んでいる。
着物もたくさんあったし、和綴の本もたくさんあった。何一つ読めなかったが。
なんだよあのぐにゃぐにゃの文字………。
そうやって見ていくと、蔵の奥にある棚に、普通のものより重要そうな感じで、箱が三つ並んでいた。結構背が高く、一面が正方形に近い形だ。
それはいいんだが、蓋になんかお札みたいのが貼ってある。
なんか怖いんだけど………。
現代人だから、オカルトを信じているわけでもないが、それでも神社に行けばお祈りくらいはするし、夜のお墓が怖いくらいの感性はある。
興味はあるけど、いきなりガバッと開けるのはちょっと、などと思っていたら、中央にある箱のお札が少し剥がれかけているのに気づいた。
これは戻しといた方がいいのだろうか………。
そう思って、チョンと触ったらペロリとお札が剥がれた。
キャアアアアァァァァァーーーーー!!
………………。
何も起こらないな………。
なんだよ、ビビらせやがって……。
少しだけ大胆になって蓋も開けてみるが、竹で編んだ小さな籠が入っているだけだった。
正式になんていうものなのかわからないけど、正方形で蓋つきのやつ。
煤竹かなんかでできていて、補強金も飾り紐も付いていて、小さいけど上品で高級そうだ。
箱の中に箱入れるの? と思ったりもしたのだが、確かに高級そうではあるし、それでいて派手ではないので、あんましものの価値のわからん俺でも、大切に仕舞っておきたい気持ちはわかるような気がした。
籠の方を開けてみても何も入ってはいなかったので、その籠はそっと箱の中に戻し、蓋をする。
申し訳程度に、お札は箱の上に置いといた。
当初の目的を思い出し、蔵からでる。
他のものの確認は別にいつでもいいだろう。
蔵の反対側に駐車場みたいなとこがあって、そこにママチャリが一台あった。電動アシスト付きじゃないのは残念だが、ないよりましだ。
で、財布をとりに家に戻ると、上がり框のところに着物をきた少女が三つ指ついてるって寸法よ。
は? いや誰?
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