思い出旅行

須堂さくら

桜の木の下で

攫われる

「君は桜に攫われそうではないが」

 桜吹雪を楽しんでいると、あなたが言う。

「日差しに溶けてしまいそうではあるな」

 自分の方が桜に攫われそうな顔をして、そんな風に。

 攫われも溶けもしませんよ。頑丈なので。そう笑ってみせる。

 次の桜の季節を迎える前に、このひとの世界は閉じてしまうそうだ。


(2023/04/17)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る