うちの○○がダンジョンに!? ~拝啓お母様、俺の尊厳はまだ大丈夫でしょうか?~

神山紘

プロローグ はじまり

 ダンジョン。


 それがこの世界に現れたのはいまから10年ほど前のこと、都内の大手銀行が人知れずダンジョンへと変質したことが始まりだった。


 外観が普段と変わらないそれは、何も知らずにやってきた人をただただ飲み込み続けていった。


 そんな状態から数時間後、一人の男が銀行の入り口に出現、それを皮切りに一人、二人と飲み込まれていた人々が入り口に出現した。その中の一人のインフルエンサーがすぐさまSNSに動画や画像、そしてこのダンジョンのことを投稿。


 曰く、ダンジョンは最初に入ったものの願いをクリア報酬にする。


 曰く、このダンジョンをクリアすれば莫大な賞金が手に入る。


 曰く、ダンジョン内にはモンスターが徘徊し、攻撃を仕掛けてくる。


 曰く、モンスターの攻撃に身体的ダメージはないが、幾度かの攻撃によってダンジョンから吐き出された。


 曰く、いま喉乾いてなにか飲もうとしたら財布に一銭も入ってないんだが……? それどころか通帳入ってたはずのものもなくなっているんだが……? え……?


 曰く、曰く、曰く……。


 最初は眉唾だと思われたそれだったが時間が経つごとに投稿が増え、銀行の従業員への連絡がつかないとの話が出てきてからはネットがざわつき出し、その間に警察や消防も動き出し全国的なニュースにまで発展、連日世間を騒がせることとなった。


 そしてダンジョン発生から3日後、最初に巻き込まれた従業員の一人がダンジョンをクリアしたことで銀行がもとに戻ったのだった。


 それからというもの世界中でダンジョンの発生が確認されだす。


 あるところには知識を手に入れるために知識を失う図書館。


 またあるところには健康を手に入れるために健康を捧げる病院。


 さらには国の最高権力者になるために人としての地位を犠牲にする国会議事堂。


 などなどハイリスクハイリターンなダンジョン。


 あるところには服を着るか1日全裸か尊厳を守るか自由に生きるかのクローゼット。


 またあるところには風呂に入るか入れないか清潔な人間か白い眼を見られるかの浴室。


 さらには部屋から出るか出られないか太陽を浴びるか引きこもりへの道を進むかの個室。


 などなど個人的なものまで大小さまざま。


 そして今宵、また新たなダンジョンが一つ。


 それは誰しも必要な人としての尊厳を守る場所。


 ただ一つの欲望を叶えるための場所。


 そう、そこは……


「なんで……なんでうちのトイレがダンジョンにぃいい!?」


 男子高校生による漏らすor漏らさないをかけた最低のダンジョン攻略がいま始まる!

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