第35話

高梨のがんばり方とおれのがんばり方はちがった。



おれは高梨のがんばり方のほうが好きだったけど、真似なんかできないって思ってる。


だからもう、見ているだけは嫌なんだ。



「友情よりも高梨のほうが大切だし、そうしたい」


「小鳥遊くん……」



小鳥が鳴くような笑顔はそこにない。


両頰に真っ直ぐできた涙の跡をなぞるように指を這わせた。



「だからもうおれのことで泣くな。大丈夫だから。独りでも誰といても、高梨を想えなくなるのは嫌だから、大丈夫」


「…たし、も」



消えてしまいそうな声でそう言って、ぎゅうっと手を握ってくる。


愛しいと、思った。これが一番大切なものだと思った。


相手もそう思ってくれていたらいい。ちがっていたら、思ってもらえるようになりたい。




「小鳥遊くんだけがいてくれたら、それだけでいい」




小さく、ごめんねと聴こえたような気がした。


けれどもう戻れない。


同じ気持ちのまま、戻りたくない。



あの日常なら、この遊園地のように壊れていい。





高梨 由宇。


(小鳥遊 優くん。)



失いたくないきみの手を握って、夢から、やっと目覚める。









°˖✧ おやすみ タカナシランド ✧˖° fin.

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おやすみタカナシランド 綺森 @ki____k25

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