第13話

おれたちの待ち合わせに約束はないけど、いつも自然と同じ時間に同じ場所に足が向かう。きっとあいつがいるんだろうと思うと、学校に行くときは重く感じるチャリのペダルも軽く感じた。


ブレーキをかける。


廃墟の遊園地の入口は解放されている。…というよりゲートが壊れていて通り抜けできてしまう。


かといってこんな街外れの辺鄙なところに夜くるやつなんていない。おれらが変なだけだ。



だいたい初めて来た時はバイトの帰りにただ通りかかっただけだった。たまたま視線を移すと見覚えのある姿があったから中に入っただけ。


それが今じゃ毎晩、夜中になる少し前の時間。あいつの方が少し早く不気味な壊れた遊園地の中のベンチに座っている。



「お待たせ」



こんな言葉を言うのでさえ照れを感じる。


大袈裟な座り方で隣に腰かけると、高梨は「待ってないよ」と小鳥が鳴くように笑った。学校では一度も見たことのない表情。



「松木たちに宿題まで頼まれてただろ。今日は来ないかと思った」


「さっき全部終わったから大丈夫だよ」



すげえな、こいつ。おれなんてまだ一文字も書いてないから今日は寝るのが遅くなりそうだ。


がんばってるんだよな。

優しいけど、それだけじゃない。



薄暗い空の中白い肌が透き通って見えて、思わず触れた。

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