家族は幸せになりました。
半目見開き子ちゃん
妹・とある取材の記録
えっと、こういうのって何から話せばいいんですかね。
とりあえず初めまして。鈴木みのりと言います。
正直、自分でもまだ何が起こっていたのか処理しきれていないので、話せるところを全部話しますね。
私の家は四人家族でした。母と、父と、姉と私です。
確か、あれが起きたのは私が十歳の時かな?
休日に家族みんなでお昼ご飯を食べていた時。急に母が椅子から立ち上がって、「陣痛が始まった」って悶え出したんです。
陣痛って、あれですよ赤ちゃんが産まれるときになるやつ。
でも、妊娠したなんて聞いてないし。今朝まで普通に過ごしてたのにどうしてって思いました。
だって妊娠したら普通、食べれるものが限られたり、通院したりとか色々あるじゃないですか、そういう気配とか全くしなかったんです。
子供の頃の記憶だからって言っても、十歳ですよ?すごく衝撃的でしたし、勘違いするはずないじゃないですか。
それで、私すごいパニックになっちゃって、父や姉が救急車を呼んだり母の看病をしている間ずっと動けずにいたんです。
体は緊張と困惑で
すると、母のお腹をさすっていた姉と目が合いました。
姉の手はよく見ると震えていて、「あぁ、お姉ちゃんでもパニックになるんだな」なんて思ってたんですけど。
どこか違和感があったんです。手が震えるっていうと普通、左右に小刻みに動くことを指すじゃないですか?
でも、姉の手は左右というより、上下に大きく動いていて震えるとは程遠い動き方をしていたんです。
それで、私気づいたんです。
姉は震えてなんかいなくて、動いてるのは母のお腹の方だって。
そのまま目線を下に向けると、母のお腹が見えました。
母のお腹は歪な形になっていて、中から誰かが大暴れしているような印象を受けました。
とても赤ちゃんが入っているとは思えなくて、本当に怖かったです。
その後すぐに父が呼んだ救急車が駆けつけて、空いていた産婦人科で男の子を産みました。
後日、母や父、姉、誰に聞いても、母は前々から妊娠していたことになっていました。
周りの人の認識は、母は妊娠四十週目で、いつ産まれてもおかしくない状況だったと。子供の服や玩具は随分前にみんなで買いに行ったってことでした。
それ以来、この話を誰かにするのはやめました。
母も父も、男の子を欲しがっていましたし、姉も賑やかになって嬉しいと言っていたので。
家族が幸せになったのなら、いいのかなって。
これ以上は何もありません。それから弟は何事もなかったかのようにスクスク育って、もうすぐ十八歳の誕生日を迎えます。
ご清聴、ありがとうございました。
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