第39話 五色沼ダンジョン

〈それで、少しは情報が集まったかな?〉


 あの後、騒ぎが落ち着いたところでルナとまるに情報を集めてもらった。それによると、ここ福島県のダンジョンは会津若松避難所セーフティーから北東にある『五色沼』にあるようだ。


 五色沼といっても、五色の沼があるわけではなく、正確には「五色沼湖沼群」と言い、毘沙門沼・赤沼・みどろ沼・竜沼・弁天沼・るり沼・青沼・柳沼などの数多くの湖沼の総称になってるそうだ。


 それぞれの沼に入り口があり、様々な種類の侵略者アグレサーが出てくるのだとか。それで、山の中にも色々な種類の侵略者アグレサーがいたのか。


 ただ、中がどうなっているのかはわからないそうだ。これはもう行ってみるしかない。


 この荒んだ環境で、すっかり人気者になったまるとルナを連れて五色沼ダンジョンを目指す。途中で出遭う侵略者アグレサーはもちろん倒しながら、一度、かなりの集団に出遭ったから、あれが避難所セーフティーを襲っていたら危なかったかもしれないね。


 五色沼に到達した僕らだが、たくさんの沼がありそこから侵略者アグレサーが湧き出していた。数ある沼の中から一番強そうな侵略者アグレサーがいるダンジョンを選ぶことにした。


〈たぶん、一番強いのはあそこだね。大きさは小さいけど名前に竜がつくくらいだから、出てくる侵略者アグレサーもトカゲ系だから奥の方には竜に近い個体がいるかもしれない。


 まずは竜沼から出てくるスワンプリザードという大型のトカゲの侵略者アグレサーと戦ってみる。


〈まる、ルナ頼んだよ〉


〈任せるわん! トカゲごときには負けないわん!〉


〈こらまる! まずは慎重に戦うにゃ!〉


 まるが飛び出しそうになるのをルナが止める。まったく、油断したらまるはすぐに調子に乗るんだから。


 スワンプリザードは、コモドドラゴンをさらに大きくしたような侵略者アグレサーだ。大きな身体か繰り出される体当たりと鋭い爪、ギザギザの歯が並ぶ大きな口の噛みつき攻撃は気をつけなければならない。反面、素早さは二人に大きく劣るようで攻撃さえ受けなければ問題なく倒せそうだ。


 まるは一匹のスワンプリザードの目の前で挑発行動を行なう。いつも考えなしに突っ込んでいくまるにしては珍しい。ルナの忠告が効いたのかな?


 まるに気を取られたスワンプリザードは、考えなしに体当たりをかましてきた。それを素早くサイドステップで避けるまる。体当たりが失敗し地面に突っ込むスワンプリザード。


 その隙にルナがスワンプリザードの背中にダークアローをお見舞いした。


 ギャワァァァ!


 背中に漆黒の矢が刺さったスワンプリザードが鳴き叫ぶ。決して少なくないダメージを与えたようだ。


〈まる、もう一匹出てきたにゃ!〉


 視野の広いルナは、竜沼から這い出てきたもう一匹にすぐに気がついた。


〈こっちは任せるわん! オイラがやっつけてやるわん!〉


 すかさずまるが二匹目のスワンプリザードの元へと向かう。今回はルナも止めないようだ。


 まるはまだ状況を把握していないスワンプリザードに、先制の噛みつき攻撃を食らわせた。


 ギョォォォォ!


 再び、スワンプリザードの叫び声が響き渡る。


 大きなダメージを受けた二匹のスワンプリザードは、動きの精彩も欠きまるとルナの素早い攻撃を避けきれず程なくして動かぬ骸となった。


〈よし、二人とも大丈夫そうだね! さっそく竜沼に入ってみよう!〉


〈よし、オイラが先頭でいくわん!〉


〈わたしが先に行くにゃ。まるは後からついて来るにゃ〉


〈うぅぅ、わかったわん……〉


 ルナとまるのショートコントを見せられた僕は、沼の真ん中にぽっかりと浮かぶ浮島に空いている穴から、ダンジョンの中へと入っていった。



「思ったよりじめじめしてないわん」


 緩やかに続く下り坂を進みながらまるがそんな感想をもらす。確かにまるが言った通りに思いの外、湿度は高くないようだ。ルナもキレイな毛並みがぺったんこにならずに喜んでいる。


〈早速お出迎えが来たよ。ちょっと数が多いから、最初は僕のスキルを使うね〉


 下り坂の向こうから、スワンプリザードの集団がぞろぞろと上ってきた。その数、六匹。二人に任せるにはちょっと多い数なので、最初に味方を増やしていこうと思う。


 僕はスワンプリザードのすぐ目の前でホバリングをし、魅了のスキルを使用した。


 僕の姿を見た前二匹のスワンプリザードは、くるっと後ろを向いて僕を守るように味方に攻撃し始めた。よしよし、うまく魅了のスキルが効いたようだ。


「さすがミストだわん! 今のうちにオイラ達も参戦するわん!」


「その判断には賛成ですにゃ。まるは派手にいくにゃ」


 慎重なルナもこの好機を見逃すはずがない。派手に飛び込んでいったまるとは対照的に、気配を消して壁沿いに移動していく。そして、前ばかり気にしている最後尾のスワンプリザードに、背後からひっかき&猫パンチを繰り出していた。


 最早、誰が味方で誰が敵かもわからない状況に陥ったスワンプリザードは、大きくダメージを受けた順番にルナにトドメを刺されていく。一匹一匹とその姿を消していき最後に残った二匹は、魅了が解けたところでまるとルナに倒された。


〈無傷の勝利だわん! 楽勝だったわん!〉


〈こらまる! ミストさんの魅了のおかげなのにゃ! 調子に乗るにゃ!〉


 相変わらず、人の手柄を自分のものにするのが得意なまるがルナに頭をぽかんと叩かれた。ルナは、まるが自分のことを『聖者まる』と呼んで人間達に賞賛されているのが面白くなかったのかもしれない。


 随分力がこもった一撃にまるが頭を抱えてうずくまる。


 とりあえず、ここの侵略者アグレサーにも魅了スキルが効いてよかった。このスキルがあれば、かなり体力と魔力の消耗を抑えることができそうだ。まだまだ油断はできないけど、できるだけ体力も魔力も温存した状態で先へ進もう。

 ここのダンジョンのボスはなんだか強そうな気がするからね。僕もしっかりサポートしなければ。


 そう考えた僕は、ルナにもまるにもそのことを伝え奥へと進むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る