第33話 日光東照宮ダンジョン

「おい! 誰か、援軍の姿を見た者はいるか? ぜひお礼を言いたい!」


「こちら誰も見ていません!」


「こっちも目撃者はいないですわ!」


「犬と猫なら見かけましたが、援軍はいませんでした!」


 宇都宮避難所セーフティーは危機から脱したことで興奮状態になっていた。リーダーらしき人がの援軍を探していたが、まるとルナを見つけることはできなかったようだ。


 いや、まるとルナの姿を見た者はいるが彼らが援軍だとは気がつかなかったようだ。もしかしたら、ここはネット環境が整ってないのか、噂の掲示板を見れていないようだね。


 といっても、まるとルナもあえて自分達が援軍だとアピールするわけでもない。宇都宮避難所セーフティーの安全を確保した今、次に目指すは日光東照宮地下迷宮ダンジョンだ。あそこを攻略すれば、宇都宮避難所セーフティーも安全になるだろう。


〈さあ、サルどもを退治しにいこう!〉


〈おいらに任せるわん!〉


〈わたしも頑張りますにゃ!〉


 宇都宮を救って気分をよくした僕達は、日光東照宮地下迷宮ダンジョンへと向かった。


〈ここが日光東照宮か。随分金ぴかの建物だな〉


「まぶしいわん! 成金だわん!」


「早く入って、強くなりたいにゃ」


 先ほどサルの大群がここから出て行ったせいか、今は入り口に侵略者アグレサーもいない。これはチャンスだ。さっさと入ってしまおう。


 日光東照宮地下迷宮ダンジョンは外見は金ぴかの神社の門だったが、中は普通に森だった。そりゃ、サルの侵略者アグレサーがいるんだから、サルに有利な環境であってもおかしくないか。


 入ってすぐにサルたちは木の陰に隠れているのを発見した。僕には探知があるからね、右の木の上から三匹のサルがこちらを狙っているのはお見通しだ。


〈まる、ルナ、右の木の上。三匹いる〉


〈わかったわん! 返り討ちにしてやるわん!〉


〈下りてきたのはまるに任せるにゃ。わたしは木の上に残ったのをやっつけるにゃ〉


 まるが先行して木の下を通ると、上から二匹のサルが飛び降りてきた。


「待ってたわん!」


 そのことを事前に察知していたまるは、一匹を用意していたストーンニードルで迎え撃ち、もう一匹は自ら飛びかかって噛みついた。


「ギャ!?」


 しかし、そのまるがサルを倒す前に木の上から鳴き声が聞こえた。いつの間にかルナがサルの首を鋭利な爪で切り裂いていたのだ。


 続けてまるが二匹のサルを魔法と噛みつきの一撃で倒しきる。


 うんうん、この地下迷宮ダンジョンも上層なら二人だけで十分だね。僕もそろそろ進化したいから経験値がほしいけど、とりあえずはいけるところまで二人に任せよう。


 森の中にある人工的な階段を探し、下へと降りていく。この辺りが自然のものじゃなくて改めて地下迷宮ダンジョンだと意識させられる。


 この地下迷宮ダンジョンがどのくらいの深さわからないけど、経験値を稼げるような強い敵がいるといいな。なんて思っていたのがよくなかったのか……


「強いわん!? このサルめちゃくちゃ強いわん!?」


「にゃ!? 不意打ちが効かないにゃ!?」


 十階層くらいから急にサルが強くなり始めた。見た目は大して変わっていなかったのだが、改めて鑑定してみるとクレイジーモンキーという上位種が混ざっていた。


 このクレイジーモンキーは格闘術というスキルを持っていて、接近戦にめっぽう強かった。レベルも30を超えていて、まるもルナも苦戦している。ここ僕の出番だね。


 この地下迷宮ダンジョンは森林型の地下迷宮ダンジョンだけあって、一階層がかなり広く作られている。僕が空を飛ぶスペースも十分にあるので、思いっきり暴れることができそうだ。


 僕は、石を投げるくらいしか遠距離攻撃の手段を持っていないクレイジーモンキー達に、空からウォーターカッターをお見舞いする。


「ギャ!」


 別に一撃で倒す必要はない。少しでも傷つけさえすれば、後はまるとルナが始末してくれるから。案の定、まるとルナは僕が傷つけた個体に狙いを切り替えたようだ。先ほどまでの苦戦は嘘のように、次々とクレイジーモンキーを倒していく。


〈楽だわん! 簡単に倒せるわん!〉

〈ありがとうございますにゃ! 助かりますにゃ!〉


 まるとルナからもお礼の念話が届く。よかった。これなら僕のレベルも上がりそうだ。


 この状況は十五階層まで続き、僕らはかなりのレベルを上げることができた。



〈ここからはさらに強くなるみたいだ。僕がメインで戦うからサポートをお願い〉


〈任せるわん! 全力でサポートするわん!〉


〈わかりましたにゃ。十分気をつけてくださいにゃ〉


 十六階層からはさらに強いサル達が現れ始めたので、ここからは僕がメインで戦うことにした。さっき確認しただけでも、剣を持つソルジャーモンキー、弓を扱うアーチャーモンキー、魔法を使うウィザードモンキーなどなど。最早、人間のパーティーとほとんど変わらない。こいつらが連携しながら襲ってくるのだ。まるとルナでは少々荷が重い。


 僕はまず、ウィザードモンキーの魔法とアーチャーモンキーの矢を避けながら、急降下で接近する。狙いはウィザードモンキーだ。


 僕の狙いを察したのか、ソルジャーモンキーが剣を構えウィザードモンキーの前に立ちはだかる。その目は自信に溢れているが、トンボの機動力を知ってるのかな?


 僕は進行方向を変えることなく、あえてソルジャーへと突っ込んでいく。やつはそのタイミングに合わせて、剣を振り下ろしてきた。完璧なタイミングにソルジャーモンキーがにやりと笑うのが見えた。


 クン


 だが、その自信を持って放った一撃は空を切る。僕は斬られる直前で九十度旋回したのだ。手応えが感じられなかったのか、急に慌てるソルジャーモンキー。しかし、時すでに遅し。僕の羽は背後にいたウィザードの首をはねていた。


 丁度、ソルジャーが目隠しとなってウィザードには僕の姿が見えていなかったようだ。


 シュ!


 ウィザードを倒し、いったん離れる僕の背後からアーチャーの矢が飛んでくる。もちろん、そんなものに当たる気はないので、ジグザグに飛びながら的を絞らせないようにする。


 ギィィィ!


 そのアーチャーにまるのストーンニードルとルナのダークアローが突き刺さった。さては、僕にばかり気を取られていたな。


 残るはソルジャー一体のみ。僕は再び急旋回し、ソルジャーへと突撃する。それに合わせてまるは右から、ルナは背後からソルジャーに迫る。もうこうなってしまっては、ソルジャーに勝ち目はない。


 やけになって振り回している剣をかいくぐって、僕のウインドカッターが足に傷をつける。ガクンと崩れ落ちたソルジャーの腕にまるが噛みつき、やつは剣を落としてしまった。そして最後は背後から迫ったルナが首をかき切って終了だ。


 その後も色々なモンキーのパーティーをなぎ倒し、三日間かけて二十階層まで到達した。

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