第20話 幕張避難所

(おお、久しぶりに文明を感じる!)


 避難所セーフティーに侵入した僕は、上空からではあるが久しぶりに人の営みを目にしてちょっと感動してしまった。


 どうやらここは元幕張メッセだったようで、中央のドーム型の建物の周りに大きな四角い建物がいくつもある。建物はところどころ壊されており、ここにも侵略者アグレサーが現れたことを想像させた。


 注意してみると普通の人に交じって、武器や鎧を装備している人達がいた。この人達がこの避難所セーフティーを守っている人達なのだろう。おそらく、ルナが言ってた守護者ガーディアンという人達だと思う。


 以前、僕を殺そうとした人も守護者ガーディアンのはず。そう考えると、あの人達に見られない方がよさそうだね。


〈まずはそれぞれ分かれて情報を集めようか〉


〈わかりましたにゃ〉


〈オイラに任せるわん!〉


 ここなら強い侵略者アグレサーに襲われる心配もないだろうから、効率を重視して三手に分かれることにした。このくらいの広さなら念話を繋いでおける。何かあればすぐに呼んでもらうことにした。


 僕はまず、中央のドーム型の建物へと向かい、軒下の隙間から中へと入った。


(なるほど、ここは住民達の共用スペースとなってるのか。生活物資などを売ってるところを見ると、まだ物資不足にはなっていないようだ。それだけ助かった人が少ないのかもしれないけど……)


 探知にかかった人の数が思ったより少なくて、自分で分析した結果にちょっと落ち込んでしまった。だからこそ、これ以上人間の数を減らさないためにも、やるべきことをやらないとね。僕はドームの中心辺りの梁の上に止まり探知を広げた。


(やっぱりいたか)


 探知にかかったのはネズミ型の侵略者アグレサーだ。床下を通って、外へと向かっているように見える。僕はそのネズミ型の侵略者アグレサーを追いかけ再び建物の外へ。さらにその侵略者アグレサーは下水管でも通っているのか、あっさりと街の外へと出て行った。


 ちょっと気になった僕は、ネズミ型の侵略者アグレサーを追いかける。すると、侵略者アグレサーが向かうその先に別の侵略者アグレサーの集団を発見した。ネズミ型の侵略者アグレサーはその集団と合流すると、今度は反転し街へと案内するかのように動き出す。


(これはまずいぞ!? すぐに知らせないと!)


 僕も慌てて旋回し、街へと戻る。


〈まる、ルナ、緊急事態だ! 街に侵略者アグレサーの集団が向かって来る! 急いで迎え撃たないと!〉


〈本当ですかにゃん!? 今すぐそっちに向かいますにゃ!〉

〈それはまずいわん!? こら、もうなでなでタイムは終わりだわん! オイラもそっちに向かうわん!〉


 まるとルナが街中を疾走し、すぐにこちらに向かって来た。その動きに街の人々も異常を感じたのか、守護者ガーディアンらしき人達が集まり始めているようだ。


 どうやって人間達にこの危機を知らせるか考えていたけど、二人の行動が思いのほかいい方向へ転がってくれた。


〈お待たせしましたにゃ〉


〈オイラが来たから大丈夫! 侵略者アグレサーなんて蹴散らしてやるわん!〉


 街の外に飛び出した二人と無事に合流できたけど、侵略者アグレサーの集団はもうすぐ目の前まで迫っている。


〈今から来るのはゴブリンの集団だ。数はおよそ三百。とてもじゃないけど、僕達だけで防ぎきることはできないと思う。だから、ここで戦いながら時間を稼いで、人間の守護者ガーディアンが来るのを待とう〉


〈わかりましたにゃ。できるだけ耐えて見せるにゃ〉


〈ぎゃー!? すごい数の侵略者アグレサーだわん!? 強そうだわん!? 怖いわん!?〉


 二人がゴブリンの集団を目にする。ルナは覚悟を決めた目でにらみつけているが、まるは先ほどまでの勢いはどこへやら、怯えて尻尾が垂れ下がってしまった。


〈今回の相手は今までと違って知性もあるし、武器も使う。無理せず、生き残ることを最優先にしてほしい〉


〈わかりましたにゃ〉


〈怖いわん。でもオイラはとばりちゃんを守るために強くなると決めたんだわん。頑張るんだわん〉


 さて、二人とも覚悟は決まったようだ。今回は長丁場になりそうだ。空を飛べる僕は、その優位を活かしながらまずは陽動に務めよう。それから、まるとルナが死なないように、結界とヒールはいつでもかけられるように準備しておかないとね。


 おっ、まるとルナを追いかけて出てきた守護者ガーディアンらしき人がゴブリンの集団を見て慌てて街へと引き返していった。これで、時間を稼げば援軍が期待できる。


 それほどたくさんの守護者ガーディアンがいるわけじゃないと思うけど、彼らが駆けつけてくれるまでは頑張って耐えないとね。


 まずは出鼻をくじく先制攻撃といきますか。


〈まる、ルナ、最初は一番でかい魔法を使おう。それで足が止まったところを各個撃破でいくんだ。僕が空から陽動するから、街に向かおうとするのを優先して排除してほしい〉


〈わかったわん! おいらに任せるんだわん! 絶対街には入らせないわん!〉


〈わかりましたにゃ。もしかしたら、あの街にわたしの家族がいるかもしれないにゃ。あいつらには一歩も踏み入れさせないにゃ!〉


 やる気が十分なのはいいけれど、これは長期戦になりそうだからね。ちゃんとペース配分を考えるように言っておかないと。


〈あくまで作戦は命大事にだよ〉


〈もちろんわかってるわん! 危なくなったら一目散に逃げるわん!〉


〈ごめんなさいだにゃん。ちょっと気合いが入りすぎていたにゃ。ちゃんと死なないようにがんばるにゃ〉


 よしよし、ちゃんとわかってくれたようだ。それじゃあ、最初はド派手にいくとしよう。


〈ファイアーアロー!〉

〈ストーンバレットだわん!〉

〈ダークアローだにゃん!〉


 僕のファイアーアローとまるのストーンバレット、それにルナのダークアローが雨のように先頭のゴブリン達に降り注いだ。


「グギャギャギャギャァァァ」


 僕達の魔法攻撃で数体のゴブリン達が地面に倒れた。それを見た後続の足が止まる。やはり、ある程度の知性があるようだ。であれば、陽動にも引っかかってくれるだろう。


 僕はまるとルナに地上を任せ、ふわりと空へ舞い上がった。

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