桜の木の下に死体が埋まっているって知ってるだろ？　そうそう、桜の下。

　あれよぉ、何でか知ってるか？　桜の木の下に死体を埋めるとよ、たま～に生き返るのよ。え？　そう人間が。犬や猫？　知らねぇな。俺ぁ埋めた事無ぇからよ。でも無理じゃねぇか？　考えてもみろよ、桜が特別だなんて考えてるのは人間様だけじゃねぇか。まぁとにかく人間埋めると生き返る時があんのよ。だからみんな埋めんだよ。え？　そりゃ生き返って欲しいからに決まってんじゃねぇか。他にどんな理由があんだよ馬鹿だねお前。

　でもよ、何も埋めたら必ず生き返るわけじゃあねぇんだよ。

　そうだろ？　みんな生き返っちまったら日本中人間で溢れかえっちまうよ。邪魔ったらないね。俺ぁ満員電車ってのに一度乗った事があるが、ありゃまともな思考の人間が乗るものじゃあないよ。何処もかしこもそうなってみろ。溺れて死んじまう。

　だからほんの少しだけ生き返るくらいでちょうどいいんだわ。それに誰も彼もぽんぽこ生まれ変わってみろよ。桜の木の下に埋めりゃ生き返るのが、みんなにバレちまう。桜の木が余るくらいがちょうどいいんだ、生き返りってのは。

　そう。

　だから俺はよ、バラバラにして埋めたんだよ。

　どれか一つでも生き返りますようにってなもんさ。何せ確率が低い。低いならとりあえず沢山埋めときゃそれだけ確率も上がるってもんよ。

　え？　そうだよ、そう。

　だからお前が三人いるんだよ。

　びっくりだね、大当たりだ。プラナリアみたいで気持ち悪いったらありゃしない。

　何もその人に会いたいから生き返らせる奴ばかりでもあるめぇよ。簡単におっ死なれて迷惑する奴だって出来る事なら生き返らせたいと思ってるってんだ。一つ叩いたくらいでお前ぇがコロっと死にやがるからこちとら桜っちゅう桜に埋めて回ったんじゃねぇか。苦労賃もらいたいくらいだよ。え？　どうしてくれんだ？　どうもしねぇよ勝手にしろ。俺ぁ臭い飯食いたくなかっただけだよ。お前が生きてりゃ二人だろうが三人だろうが関係無ぇ。あぁそうだ、三人で殺し合えばいいじゃねぇか。どれがどれだかわかんないんだろ？　俺だってそんなもんわかりゃしねぇ。いいじゃねぇか、一番強ぇ奴が生き残ればよ。俺達ゃ親父の金玉ん中にいる時からそうやって競争してんだ。おら、殺し合え。あ？　なんだ？　おい、やめろ。馬鹿な真似すんな。わ。あ。マジかよ。痛ぇな畜生。ああ、痛ぇ……痛ぇ……。クソ野郎がよ……。

　ああ、死にたくねぇな……。

でもよ、俺の事は埋めるなよ。

お前みたいになるのは死んでもごめんだ。