もう、逃げられないかもしれません。少し読んだだけで、もう気になってしまったので。
最初に描かれたもの。ある女の子が「引き出し」の中を覗く場面。そこで何かの「恐ろしいもの」を目にする。
その家にはどうも「樫の木」が一本植えられているらしい。それだけが手がかりです。
一体、何が起きたのか?
その後も続々と紐解かれている「ある事実」の記録。どこまでがフィクションで、どこからが事実なのか。
引き出しの中にあったもの。そして、そもそもの根本にあったとされる事実。
「呪物」や「呪法」という話などは、物語の中だけのものと思われがちですが、その実でそれらは現実にも確かに存在している。
本作ではそれらが引き起こす事態というものが、静かに、そして丹念に描き出されています。そして読んでいる内に、この話がフィクションではなく本当にあった話なのではないかと錯覚させられるほどでした。
ラストで提示されるヴィジョンも、あまりにも恐ろしくおぞましい。こんなことが現実にあるのだとしたら、怖くて今後も安心して生きていくことはできないんじゃないか。
でも、救いはあります。
この物語がフィクションであると「明記」されていること。それがあったことで、ホッと一息をつけたものでした。
ただ、気になるのは一つ。その「フィクションだと明記してある部分」こそが「フィクション」なのではないかという可能性。全てはフィクションだと銘打つことにより、読者を安心させる罠が張られているのかもしれない。
そして、その先で何か恐ろしいことが……
あとは、皆様の目でご確認ください。ただし、安全は保証いたしかねます。