第29話

「うちからも見届け役に組の者を残して行く。」



「そうして貰うとうちも助かるわ。」




「申し訳ないが妹を早く休ませてやりたいので。

極道の娘だがまだ子供なので。」



「そうしてやり。東征会には日を改めて挨拶に

行かせて貰うわ。」




互いに会釈し組員に見守られる中、部屋から出ようと

したところを水瀬さんに呼びとめられた。





「あの言葉は忘れんといてな。あれは本気の言葉やで。」




「えっ・・・ ?」




兄は何のことかわからないと言うような顔を

したけれど私には覚えがあった。





惚れた女。







「行くぞ。」



「あ、はい。」





振り向き様に見た水瀬さんの顔はどこまでも優しくて。






太陽のような人だと思った。

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