第4話 一時期ちょっと好きだった後輩の話 その2

 前話(3話)の引きから分かるとおり、結局、小野くんは津田ちゃんに想いを伝えたものの振られてしまいました。

 二人の仲が決裂してしまった時、津田ちゃんは小野くんのことを下の名前(例:リョウちゃん、みたいな感じ)で親しく呼んでたし、てっきり、公言してないだけで付き合ってるよね、みたいな認識だったもんで、周囲は戦慄した。

 しかしながら、津田ちゃんが事情を話してくれたとき、「あ〜……(小野くん、やらかしたなぁ)」としか私は言えなかったので、本当、青春って難しいですね。

 人さまのプライベートに踏み込みすぎるので、ここではその詳細は伏せますけどね。

 小野くんは結局、部活は辞めてしまった。部としての損失は大きかったけど、本人がそうしたかったなら仕方ない。


 で、他人のことばかり書いてちゃいけないので自分の黒歴史を晒そうと思う。

 二年生の終わりくらいのとき、私は津田ちゃんに見限られます。

 これは完全に私が悪い話なので、思い出すのもちょっときついのですが。


 二年生のとき、家事のため早く帰らなければならないことが続き、部活を休みがちになった。

 そうしていると、なんのために部活をやってるのか分からなくなった。そもそも私自身は強くなかったし、期待もされてなかったと思う。それで練習に出てきてもでれすけやってた(でれすけって方言らしいですね、いい加減みたいな意味です)。

 部活を休む日も、「親が夕飯つくれって言うから」と悪びれもしなかった。親のことは事実だったし、私が悪いんじゃないし、わかるだろって態度だった。女子部員4人しかいないから、私が休むとペア組めなくなるっていうのに。

 津田ちゃん以外の人々も私の駄目さ加減に呆れていたとは思うが、一番顕著だったのは彼女だった。

 今までの書き方のせいで伝わっていなかったかもしれないが、津田ちゃんは決して恋愛脳の女ではない。たまに練習に来ても真面目にやらない私みたいな奴が許せない、熱い心を持った女だったのである。

 まあ、つまり、あからさまに津田ちゃんからの当たりが強くなりまして。

 もう「先輩きいてくださいよ〜」と親しく話しかけてきてくれた彼女は見る影もなかった。

 かなり堪えたのがね、津田ちゃんは人たらしでありムードメーカーだったので、津田ちゃんに無視されると、その場では全く会話に参加できなくなること。

 なんというかその時期、家も学校も居づらくて、毎日毎日、自分はやく死なねーかなと思っていた。


 高校三年生に上がっても、私はなにもかもにやる気がないままだった。むしろ悪化した。

 二年生のときは文系の進学クラスにギリギリ滑り込んでいたので、後輩もそれで慕ってくれてる部分はあったと思う。

 ただ、三年生への進級のタイミングで進学クラスからはあぶれ、新しいクラスでは都落ちみたいな扱いを受けていた。しかし、べつに、一生懸命勉強する気も起きなかった。

 ただ、新入生として同じ中学出身の子が新しく入部してきてくれると、また状況が変わることになる。

 その子は中学時代の私のことを慕ってくれており、こんな私にも「同じ高校に入れて嬉しい」と言ってくれた。

 そのうち、その子は中学時代に顧問から不当に扱われた辛い経験を話してくれるようになった。そんな流れもあって、私自身もけっこう自分の話を吐き出させてもらうことができた。

 その一年生の子のおかげで、かなり精神的な具合は良くなったと思う。部活の練習も(下手だけど)ちゃんと参加するようになった。


 そして部活の引退間際くらいになったころ。

 津田ちゃんがもう一人の三年生(女子のエースかつ部長)と意見のすれ違いでモメてしまった。

 津田ちゃんは、そのエースの子を無視するようになった代わりに、私に話しかけてくるようになった。かつて、楽しく話してくれていたときみたいに。

 不思議なのが、やっぱり津田ちゃんが親しく話し掛けてくれると、同じテンションで返してしまうこと。さすがに、内心ではもう津田ちゃんのこと「怖いよ!」と思ってるんですけど。


 結局、エースの子との仲違いもすぐ解消し、部内のギスギスした雰囲気も良くなった。

 引退当日のことはもはや記憶にすらないけど、記憶にないってことは円満に去ったってことだろう。

 まあでも、高校時代を振り返るとけっこう苦い思い出になりましたな。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る