第12話 夢喰らう"愚者"と記憶 其の二

部屋が明るくなり、そいつは現れる。あの時のように変な笑みを浮かべて。こちらに突進してくる。木刀を鞘から抜き準備をする。


「一分咲き·初桜」前回と同じようにまずは足を狙う。物理は効かなくても斬れば一瞬の再生する隙が生まれる。ならその隙を狙い、やつが体勢を崩した今狙う。


「二分咲き·雪桜」技を発動した瞬間、木刀が氷始めた。氷始めた木刀を瞬時に地面にさす。


「冷たっと思ったけど全然冷たくない。」凍りついた地面そしてやつの足には氷の桜花が形成された。あの時のように綺麗と感じた。やつの弱点は光、氷は透けているからやつにダメージが入るはず。がやつは自ら脚を引きちぎり後退した。


「はぁ、前回はそんなことしなかったじゃん。まあ再生するのに時間掛かってるから良いけどさあ。」地面にさした刀を抜き凍てついたまま鞘に収める。


「三分咲き·徒桜」イメージをする。いつもの三分咲きではなく抜刀、素早く刀を抜き氷の桜花を作り斬撃を飛ばす。

「狙うは耳、はあぁ!」やつは笑い再生し終わった脚を縮め、丸くなった。飛ばした斬撃は壁にぶつかり、木刀は元に戻った。


「活動限界です。速やかに訓練を終了してください。」システムの声がする。やばい、たったの二発しか技をしてないのに頭が回らない。このままじゃ倒れる。直ぐにけりをつけないとだ。もう一度イメージをする。


「五分咲き·桜吹雪」吹雪が舞うように高速でやつの回りを動き、凍らせた木刀から桜の花びらを飛ばす。桜吹雪がやつを包む。更にイメージをする。今度は包んだ桜の花びらから桜の木を生成する。


「っぐ…!」途轍もない頭痛が私を襲う。膝をつき、木刀を地面にさす。まだ終れない。例え訓練でもこんなやつに負けられない!


「咲き誇れ、氷桜!」やつを包んだ氷の桜花は光訓練所の屋根まで届きそうな大きな氷の桜の木を形成した。


「討伐が完了しました。これにて訓練は終わります。お疲れ様でした。」システムの音声とともに暗くなり扉に向かう。そして磨ぎ終わった刀を腰にかけ、自室に戻る。自室に着き、もう一着の黒いスーツと下着を手に取りお風呂場に向かう。

脱衣所で服を脱いでいると一つの声がした。


「っお、咲妃~。咲妃もこれから風呂?」と後ろを向くと私の姉、凪姉が居た。この家の長女で身長は小さく、髪は私と違い短く水のような透き通った蒼髪をしている。「"異能"」は水を操る「流龍の天水」だ。そして私は応える。


「そうだよ。昨日凪姉居なかったけどいつ家に帰ってきたの?」


「今さっき「"異変"」を片付けて来たところ。それより咲妃、私やっとお風呂に入れるよ~。」と抱きついてくる凪姉に溜め息を着き、


「お疲れ様。私もお風呂に入りたいから抱きつかないで。それに汗をかいてるし。」


「咲妃は汗かいてもいい匂いだから嗅ぎたくなるよ~。」


「どんな変態だよ。もう、ほら離れて凪姉。」


「は~い。そういえば咲妃。見ない間に胸大きくなったんじゃない?」


「そんなことないよ。凪姉こそ身長伸びたんじゃない?」とからかわれたので私もやり返す。すると凪姉は顔をプクーとして、

「この年で伸びるわけないでしょ~。あと気にしてるんだから~」リリアナと同じように私の胸を揉もうとしてくる。


「私は先にお風呂入るわよ。」凪姉をスルーしつつ、お風呂場の扉を開けまず体を洗う。シャワーで頭を洗っていると軽い頭痛がした。軽い頭痛なので早めに体を洗い湯船に浸かる。


「ふぅー、気持ちい~」


「そ~だね~。生きかえるよ~。なんせ二日ぶりだからね。」


「あれ、いつの間に。相変わらず凪姉は動きが速いね。そういえば兄貴とかお父さんは?」


「私は知らないよ。まだ帰ってきてないんだったら「"異変"」が長いんじゃない?」


「てっきり凪姉と一緒に行動してるのかと思った。まあいいや、私は上がるね。」


「は~い、咲妃ゆっくり休みな~ね。体が「"異能"」に追いついてないから限界きてるでしょ。今日は「"異変"」が起きても私が行くから大丈夫だよ。」頼もしい声が後ろから聞こえる。私はそれに応える。


「何でも知ってるな、うちの凪姉は。」と小さな声で言い私はお風呂から出て着替えをしに行く。着替えが終り私は自室に戻り、刀を壁にかけベッドにダイブする。自慢の大きなぬいぐるみ抱きつき瞳を閉じ、私は眠るのだった。



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