⑥亜雲の白魔法使い(その①)
白魔法を使う魔術師が現れたと聞いて、ワタシはカの星へ向かった。
カの星は凡庸な物理法則が支配する世界の小宇宙に属するⅠ型魔法星である。もちろんⅠ型魔法星はこの星が属する銀河にも無数に存在するし、この銀河が属する小宇宙にも、この小宇宙が属する世界にも数多存在する。ただし、カの国は、無数に存在するⅠ型魔法星のなかでも極めて三次元的であった。つまり、他の次元(四以上の次元)の影響をほとんど全く受けないのである。よって、亜雲(とワタシは呼んでいる)には原始的な魔法のみを使用する知的生命が発達し、しかし高次元魔法を使うことはできないためそれ以上の発達は望めないのであった。そんな星に白魔法使いが現れたとの報告が*(意味:耳)からあったのである。
亜雲に到着すると、内戦が起こっていた。亜雲ではいつも内戦をやっている。たいていが火球を投射したり、雷を落としたり等、原始的な魔法の応酬である。
「退屈だなァ」
しかし、ワタシの感じるこの退屈さは死の恐怖を感じないことによる退屈さなのかもしれず、そうであればワタシもこれらの亜雲人たちとおなじように死の恐怖を感じれば、退屈とは思わないのかもしれない。
ワタシは写像を行った。
「死んでくださいましー、ワタクシのこの魔法で、死んでくださいましー」
「ワタクシの氷魔法で、雪だるまを召喚し、使役しますわよ。雪だるまたち、敵を殺してくださいましー」
「痛い、痛いでございますわよ。ワタクシ、もう死にそうですわ。だれか、だれか助けて、助けてくださいましー」
亜雲人は数万年前に別の魔法星の知的生命体によって人格を破壊、無理矢理に結合させられている哀れなる種族である。ただし結合に成功したのは志向性のみで、意識の統一までには至っていない。
「じつに哀れ也」
ワタシの言葉に反応した亜雲人が言った。
「アナタ、アナタ、先ほどの戦いでは実に強力な魔法を使っていましたわね」司令官であるその亜雲人は熱感知器官をワタシのほうに向けた。「アナタの功績を讃えて、アナタを白魔法使いさまの下に案内しますわよ。着いて来てくださいましー」
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