寄宿学校

岸野るか

寄宿学校

  夏休み明けからなぜかドイツの学校に通うことになった。運良く入学が許されたから。そして今日からここでの生活が始まる。

 正直言って全然自信はない。言葉もわからないし。大体、どうして合格できたのか、それ自体疑問。

 まさか裏口? でも、うちにそんなお金あるはずないし…。


 事の始まりはお母さんに勧められたから。

 歌が好きだったから。それならオーディションを受けてみたら。そう言われて軽い気持ちで自分の歌を録画して合唱団に送りつけてみた。そしたら連絡が来て、オンラインでオーディションをさせられた。そして合格。渡航することになった。

 信じられない。そんな簡単なこと?

 親にとってはそんなに簡単なことではないみたいで、いろんな手続きで大変そうだったけれど。


 新入生で日本人はぼくだけ。他に中国、韓国、台湾出身の子がいるけど、全員ぼくよりもドイツ語が堪能で不自由な思いをしてはいないみたい。

 先輩団員には日本人もいて、他のアジアからの団員もいて、完全に孤独なわけではない。けれど、不安…。


 入学式で制服を渡された。きれいにプレスされた、由緒正しい制服。それに帽子。この帽子には被り方のコツがある。と、一番最初に言われた。前髪が出ないように、こう被ってこう、とお手本を見せてもらって新入生みんなで被る。

 これからの四年間、この制服と共に過ごす。


 日本の小学校は途中で転校、という形になった。ドイツの学校に転校する、と言ったらみんな驚いていた。それはそうだよね。ぼくだってそう言われたら驚くし、すごいねって言う。

 みんな、がんばって、と言って送り出してくれた。ありがとうって言って別れてきたけど、不安すぎて、元の生活に戻りたい…。


 この学校は、寄宿制。だからぼくは一人で日本から送り込まれたんだけど、普通そんなことする? そんな目に遭ってるのなんかぼくくらいで、他の新入生はほぼみんな地元出身。家も近所にあったりする。

 家の遠さで言うとぼくがナンバーワンだと思うけど、1ミリもうらやましくないよね、そんなの。


 自分の部屋に案内される。上級生にいろんなことを教えてもらう。けど、半分くらいしか理解できない。何となく言っていることが分かるのだけど、何となく分からない。ただ、雰囲気で理解したふりをして返事をする。ドイツ語が、本当に全然わからない…。


 部屋は共同で四人部屋。ぼく以外の三人は当たり前だけど全員ドイツ人。

 ルームメイトは悪くない感じはする。

 と言うか、この学校に入って、ここまで来てようやく気が付いたけど、みんな、なんかどうも、お金持ちっぽい。あの子もこの子も、育ちが良い気がする。

 どの子もなんか大人しくて、大切にされているかんじがする。

 だから、どうして自分がここにいるのかよくわからない。



 毎日のことは、すぐに身に付いた。

 起床。ベッドメイク。朝食。そのまま支度をしてすぐに学校。

 昼食。午後の授業。それが終わるとお茶の時間。お茶とお菓子をもらって、その後で音楽のレッスン。音楽はさすが歴史があるだけあってみっちりきっちりやる。

 そのあとで夕食。その後部屋で宿題とか勉強。

 正直言って忙しくて、友達が、とか、言葉が、とか弱音を言っている暇が無い。

 それに、ぼくはごく普通の課題をこなすのにも他の子の三倍くらい時間がかかる。これが日本語だったらもう少し楽なんだけど。

 ドイツ語で勉強しないといけないって、大変すぎる。

 だから。ほんの一週間で、すでにぼくの心は折れていた。帰りたい。日本に帰りたいし、元の友達のところに戻りたい。

 家族に会いたい。日本語を話したい。お母さんの料理が食べたい。

 思い出すと泣きそうになる。考えないようにしようと思うと、ますますだめ…。


 普段はいちいち考える暇もないからいい。ただ、週末がつらい。

 みんな、親が迎えに来て実家に帰る。ぼくは当然誰も迎えに来ないから寮に残ってここで過ごす。

 週末はミサがあればそれをするけれど、それ以外はすることがない。食事は寮に残る数人向けにきちんと三食出してもらえるけど、残された数人で食堂で食べる共同の食事ほど寂しいものもない。

 いつも同じメンバー。いつも同じ先生。

 そしてぼくだけ週末、先生とマンツーマンでドイツ語の練習。


 親からはがんばってこの地で仕事を見つけなさい、と言われている。

 それならお父さんとお母さん、自分らがここに来てそうすればいいのに。どうしてぼくが…。

 日本に帰りたい。家族と友達と、日本語で過ごしたい。

 毎晩泣きながら過ごして、何ヶ月か経過した。



 この地での数カ月はあっという間に過ぎて、クリスマス休暇になる。

 クリスマス休暇はさすがに週末実家に戻れない子も実家が遠くたって帰省する。

 それなのに、ぼくの家族はぼくを国に呼んでくれなかった。夏休みにしようと言って、冬休みは寮にとどまるように、と言ってきた。

 そんなのぼくだけだと思う…。

 さすがにそれは、と先生もぼくの実家に連絡してくれたのだけど、何しろうちの親にドイツ語なんか通じない。ほんとに、なんであの二人、ぼくをこの学校に入れたんだろう。

 先生が英語でゆっくり、ぼくは帰れないのか、と聞いてくれたのだけど、大して通じてもいなくて、とにかく今回は航空券を用意できなかった、と言う。

 それで、ぼくはクリスマスなのに寮に残ることに。ぼくだけではなく、台湾の子も同じだった。

 もう、泣きたい…。

 なぜだろう。日本人ではないのに、ドイツ人の中にいると、台湾も韓国も、仲間のような気がして。見た目かな…。

 そしてドイツ人は、ぼくらの国の見分けが全くついていない。

 日本と北朝鮮を同じ国だと思ってる。中国の一部だと思っている人がいて、違う、というと、何むきになっているんだ、となだめられる。

 ドイツ人だってオランダ人やフランス人に間違われたら否定するのに。



 そんなわけで、孤独なクリスマス休暇が始まる。

 ぼくは変わらず先生とマンツーマンのドイツ語レッスン。ドイツ語ってどうしてこう、難しいのかな。

 普段の会話でどうにか発音は少しはできるし、読むことはできる。けど、文法なんか本当にわけわからない。

 もう、何となくしゃべれたらそれで…。と思うけど、まだそれも結局不十分だし…。



 休暇に入ってから、両親が電話をかけてくれた。

 二人の顔を見たら急に耐えられなくなって、大泣きしてしまった。日本に帰りたい…。お父さんとお母さんに会いたい。日本語で話したい。日本の食べ物が食べたい。日本人の顔ばっかり見ていたい。

 みんなは親が迎えに来ているのにぼくだけ帰れない。迎えに来て。今すぐ来て。ぼくのことを大切に思っているならすぐ来て。もう耐えられない。日本に帰りたい。こんな学校辞めたい。

 お母さんはそう言って泣くぼくを見て一緒になって泣いていた。けど、お父さんは違った。今はがんばらないといけない。夏休みにはまた会えるのだから。

 最後に勝つのはぼくだ、と言う。

 ぼくは別に、勝たなくていい。負けでいいから日本に帰りたい。お願い。



 冬休みは本当に長くて辛かった。

 お世話係の先生が寮に残っている生徒をまとめて街に連れて行ってくれた。クリスマスマーケットのアトラクションを楽しませてくれて、気分転換にはなった。

 クリスマスの雰囲気が日本とは全然違うなって思う。

 台湾出身の子に聞いたら、やっぱり台湾も、ドイツとは全然違うらしい。台湾人とドイツ語で話してるの、なんか変だな。でも、ここでは皆ドイツ語だし。

 本当にぼく、どうしてここに来てこうしているんだろう。



 クリスマス休暇が終わって皆が寮に戻ってくる。

 学校も放課後もまたいつも通り。ぼくはまた、目まぐるしい日常に、物事を深く考えないようにしながら過ごすようになる。

 なるべく考えないようにしているのに、憂鬱とホームシックはじわじわ悪化してきて、平気なつもりなのに消灯後、ベッドに入ると涙が滲んできて、枕一面を濡らしてもまだ足りないほど。


 ある晚、泣きながら眠ったら帰国して家族に会う夢を見た。

 ああ、日本に帰って来られて良かった。そう思っていたら、家族は悲しそうな顔をしてもう会えないから、ぼくはドイツへ戻るように、と言う。

 ぼくは絶対にいやだ、もう絶対にドイツになんか戻らない。日本がいい、本当は最初からドイツなんかに行きたくなかったのに。

 そう言ってどうにか家族のそばに近寄ろうとするのに近付けない。家族は、ぼくはもう日本に来たらいけない、ドイツでがんばるのだ、と言ってぼくを押しのけようとする。どうしてそんなこと…。

 いやだ…。ぼくは日本がいいのに…。どうしてぼくだけ…

 もう、ここから助け出してよ…


 そう思って気が付くと寮のベッドだった。

 ドイツか…。ここは、ドイツ…。お父さんとお母さん…。あれは、夢…?

 目が覚めてもまだ動悸がしていて、現実でも涙があふれていて、妙な感じがする。

 涙を手で拭ってから腰のあたりを触ってみる。濡れてる…。まずい…。ベッドが…。

 ベッドもパジャマも濡れていて、ルームメイトは当然同じ部屋で寝ていて…。

 どうしよう…。


 夜中に困ったことがあった時にどうすればいいのかは一応わかってる。夜中の職員が当直で詰めている部屋を訪ねる。


「すみません…」

 返事がない。部屋に入っていくと夜中の職員、フィリップが寝ている。

「フィリップ…」

「あん? 誰?」

「あの…」

「ああ、お前か」

「すみません…」

「どうした、こんな夜中に」

「あの、ごめんなさい…」

「何が?」

「あの…」

「なあ、言わなきゃわからないから」

「あの…おしっこ…漏らしちゃって…」

「は?」

「あ、ええと…その…ベッドが濡れて…」

「お前がやったの?」

「はい…。ごめんなさい…」

「なんだ、仕方ねえな」

「ごめんなさい…」

「なんでそうなった?」

「ごめんなさい…」

「なんでって聞いてんの」

「ごめんなさい…」

「違うよ。どうしてそうなったのか、だよ」

「どうして?」

「お前、まだドイツ語にそんな不自由してんの? 具合が悪いとか、なんかあるだろ? そうなった理由が」

「あ、ええと…。具合は悪くないです…」

「じゃあなんでそうなった?」

 なんで…こんなに責められるんだろう…。フィリップの前で涙が止まらなくなって泣きじゃくってしまう。

「そんなに泣くなよ。俺が泣かしたみたいじゃねえか」

「ごめんなさい…。だけど…なんでって言われたって…。ぼくだってわからない…。こわい夢を見たから…」

「わかったよ。じゃあ、とりあえずベッドをどうにかするから、お前の部屋、案内して」

「はい…」

 とぼとぼ歩いて自分のベッドまでやって来る。フィリップは軽々マットレスを交換して新しいシーツもかけてくれた。クリーニング用の袋を渡されて、洗濯物は全部その中に入れて置いておくように、と言われた。

「なあ、拓都。具合は本当に平気なんだな?」

「はい…」

「あとで具合が悪かった、とか言われると俺が怒られるんだからな」

「はい…」

「じゃあ、もうするなよ」

「ごめんなさい…」

「拓都」

「はい…」

「もう、気にするな」

「は、はい…」


 再びベッドに入って、どうしてこうなったのか考えてみたけど、わからない。

 それにしても恥ずかしい…。

 濡らしてしまったマットレスって、フィリップが持っていってくれたけど、どうなるのかな…。

 日本に帰りたい。

 炊きたてのごはん、食べたいな…。炊きたてのごはんに納豆をかけて…。

 だめだ…それを考えただけで寂しくなって泣きそう…。

 だって、ドイツって、おいしい食べ物があまりない…。

 毎日寮で食事を出してもらえるから食べ物に困ることはないのだけど、パンは固いし、スープはあるけど味噌汁はない。スクランブルエッグなんか二日おきに出てくるけど、お母さんが作るような甘い卵焼きなんか出ない。ローストチキンは出るけど、唐揚げなんかない。

 だいたい、醤油がないんだよ、ここには。

 もう、コンビニのお弁当でもいい。日本に行けるんだったら何でもいい。



 ひどい憂鬱は日に日に悪化していくけれど、それに気付かないようにするために、ぼくは結構がんばった。

 言葉でハンデがあるはずなのだけど、ドイツ人って成績にこだわりがないのかどうか、ぼくがちょっとがんばるだけで簡単に勝てる。

 ドイツ語は気が付くと、来たばかりの頃に比べると楽になっているかもしれない。いまだに毎日、知らない言葉はたくさんあって、日本語が話したくて仕方がないけど。

 相手が言っていることも、こちらが言いたいことも、前より無意識に使えているかもしれない。



 毎日がんばって、ようやくどうにか夏休み。

 今回ばかりはぼくにも両親の迎えが来る。それで、日本に帰れると思っていたのに、帰れはしなかった。

 親と一緒にこの国のホテルで過ごして、それで終わり。

 もう、暴れ出しそうだった。ぼくは日本に帰りたいのに。日本の食べ物。日本語。日本人の顔。とにかく日本に行きたいのに。

 それでもだけど、親とずっと日本語で話せていたから少しは回復したかも。やっぱり、何でも言いたいことを自由に話せる日本語がいい。

 ドイツ語で話している時、ぼくは言いたいことを言っていないような気がしている。


 両親とこの街を観光して過ごす夏休み。

 親はドイツ語も英語も全然できなくて、ぼくを使ってどうにかしようとする。

 街中で親の観光をちょっと手伝うだけで、二人はぼくのドイツ語がうまくなったことを喜んで、そして、さらにがんばるように、と言う。

 日本にはもう希望がないから、こっちでがんばらないといけないんだって。

 それならどうしてぼくだけがここにいるのか。二人共、こっちに来るべきなのに。

 そう言うと、ぼくはまだ若いから、だって。

 若いから、何? 本当に意味がわからない。

 この学校も悪くはないと思う。だけど…。


 両親はたった一週間で日本に帰っていった。そして、ぼくはまた、寮に戻る…。

 皆休暇でほぼ出払っている、人もまばらな静かな寮の中。

 親が帰ってしまったので寂しくて部屋に戻った瞬間、机に突っ伏して泣いてしまう。寂しい…。日本に帰りたかった…。ドイツなんか…。

「ヘイ、拓都」

「え?」

 高等部の先輩だった。

「大丈夫?」

「あ、はい…」

「どうしたの?」

「いえ…何でも…」

「何か悔しい?」

「いえ、その…」

「話、聞こうか?」

「いや、その…」

「向こうで一緒にお茶飲まない?」

「はい…」

 そこで先輩を相手に、親に会えたことと、だけど国に帰れなかったこと。ぼくは本当は日本に帰りたいことを話した。

 すると先輩は、自分も祖国は戦争をしていて帰れない。だからここにとどまっているし、だからぼくの気持ちもよく分かる、と言ってくれた。

 戦争?

 戦争って…今もあるんだ…。なんか、教科書やニュースのできごとなのかなって思ってた。そういえば先輩の顔立ちは、この地域の人のものともちょっと違う。

「拓都」

「はい…」

「君はどうしてこの学校に来たの?」

「親が…オーディションに申し込んで…」

「不思議だな。君は日本人で、キリスト教徒でもなくて、この地域に馴染みもないのに」

「本当に、そうです。ただ、日本にはもう希望がないって」

「え、そうなの? 日本は平和そうなのに?」

「平和…って、なんですかね…」

「君がそう思っていること自体が平和なのかもよ」

「……」

「君の親が戦争で殺されないことが、平和なのかもね」

「……」

「日本は、どんなところ?」

「こことは、全然違います」

「例えば?」

「言葉とか…」

「君は普段は日本語を話すの?」

「そうです」

「日本語とドイツ語の他にできる言葉は?」

「ないです…」

「英語は?」

「できません」

「日本語って難しいの?」

「全然」

「ちょっと教えて」

「ええと…」

 先輩は特に何をどうするわけでもなく、ぼくにひたすらお茶を飲ませながら話をしてくれている。

 話の内容は大したことではなかったけれど、端々に先輩の近くには戦争があって、今も家族がそれに悩んでいて、だけどどうすることもできない。そんな様子が伝わってきた。


 休暇中の寮には数人しか生徒がいなくて、普段なら気の合う友人と過ごすのだけど、それぞれの友人もいなくて皆個人で行動している。そして、そんな残された数人の生徒には不思議な結束も生まれて、いつしか残ったぼくらは毎晩一緒にテレビゲームをして、そのまま同じ部屋で眠るようになっていた。

 戦争を経験している先輩ヤノシュ。大変なはずなのに、皆に優しい。テレビゲームの中でさえ、手加減してぼくを勝たせてくれる。


 これはこれで快適かな。そう思わないとやっていけなくて、でも実際、少人数で小ぢんまり過ごす限定的な寮生活も悪くはないかも。

 ぼくはそう思ってやっている。ヤノシュが優しいからかもしれない。

 こんなに歳上の先輩に、こんなに優しくしてもらえるのは、日本にいたらなかったかもしれないし。


 その晩、ベッドに入ってからヤノシュは自分の経験を話してくれた。ある日突然戦争が始まって、とても怖かった話。

 それを聞いたからなのかどうか…。日本に帰りたくて、親に会いたくなって、ひどいホームシックの発作に襲われてしまった。

 けれど、そんなの格好悪すぎて一緒に寝ている寮生には言えない。

 そんな気分のまま眠ったら、親が戦争に巻き込まれて、もう二度と会えない。そんな夢を見て、泣きながら目を覚ました。

「拓都」

「……」

「拓都、大丈夫?」

「ヤノシュ…」

「泣いてる?」

「……」

「大丈夫? 嫌な夢を見た?」

 目が覚めたのに、ぼくはまだ泣いている。また、やってしまった…。ベッドが…

「拓都、大丈夫?」

「ヤノシュ…」

「悪夢?」

「うん…」

「また眠れる?」

「ヤノシュ…。ぼく…やっちゃった…。ベッドが…」

「何が? どうしたの?」

「これ…」

 先輩はぼくのベッドを見て「なるほど」とつぶやく。

「拓都」

「はい…」

「悪夢を見ることはぼくもあるよ」

「……」

「それで、昔はおねしょしたこともある。大丈夫。着替える? ベッドは手伝ってあげるよ」

「ありがとう…」

「どんな夢だったの?」

 ヤノシュに手伝ってもらっていたら他の生徒も目を覚まして、結局居残りの寮生全員におねしょのことが知られてしまった。

 でも、ヤノシュが庇ってくれた。これは仕方がないことだから、馬鹿にしたりしてはだめだって。

 どうして、こんなに優しくしてくれるのかな…。

 優しくしてもらって、ますます寂しくなる。



 寂しいと、思わないようにすればするほどホームシックはひどくなる。もう、ずっと日本のことを考えていて、親に電話しようかな、と思うだけで涙が出てくる。

 放課後の音楽のレッスンは無難にこなし、日中の学校生活は必死にがんばる。マンツーマンでしてもらっているドイツ語のレッスンもさらにがんばる。

 親は日本に希望がないって言うけど、こっちにも希望はそんなにないと思う。

 こんな、わけのわからない国の学校に入れられて、がんばっていいことなんかあるのかな…。

 とりあえず、日本の食べ物が食べられないのがつらい。たまに悪夢を見て、おねしょをしてしまうことがあるのが、恥ずかしすぎる…。

 ここに来るまでおねしょなんかしたことなかったし、悪夢を見ることだってほとんどなかったのに…。



 季節は過ぎて、学校のイベントがいくつも開かれて、また休暇。

 ぼくはここで一年以上がんばったんだなって、誰も褒めてくれないから自分で思う。


 ここで四年間がんばったらその後…もう四年間…。その後大学。どのタイミングで日本に戻れる? がんばったら、早めに帰れる?



 久しぶりに親とテレビ電話。

 早々に、帰りたい、と泣いてしまった。泣くと心配を掛けるから、泣きやまないと…。でも、無理…。ぼくは、希望がなくても構わない。日本で過ごしたい。

 親は、ドイツでがんばる他の子どもの話をいろいろしてくる。音楽、スポーツ、語学。

 ぼくは…もうがんばりたくない…。ここから抜け出したくてがんばっているけど、抜けられないのかもしれない。



 閑散とする夏季休暇。ヤノシュとぼくはある寮生の好意で数日、その寮生の家へ招いてもらった。

 家事をする人がいて、部屋は余っていて、知的なご両親。おとぎ話かなって思う。

 そんなご両親に湖へ連れて行ってもらって、たまにするのだという乗馬を体験させてもらった。

 馬がかわいくて、馬に乗るのが楽し過ぎてぼくは大はしゃぎ。

 こんな暮らしをしている人がいるんだなって思った。ヤノシュも同じ気持ちだったみたい。

 ドイツの食べ物を、あまりおいしいと思ったりはしないのだけど、この家で出してもらった料理はどれも素晴らしくて幸せだった。


 だけど、あとから気が付いた。

 あんなに良くしてもらったのは、あの人たちの満足のためだった。

 戦争でつらい思いをしたヤノシュを、かわいそうなアジア人であるぼくを、もてなして楽しい思いをさせてあげている。

 彼らの気持ちを満たすだけの道具に使われただけ。それでもいいのかもしれない。楽しかったし、ありがたかったし。

 でも、ここはそういう世界なんだ、と思った。

 ぼくは、かわいそうで惨めなアジア人。どんなにがんばってドイツ語を、ドイツ人と同じくらいのレベルで使えるようになったとしても、所詮はかわいそうなアジア人でしかない。

 ヤノシュは、戦禍に翻弄されるかわいそうな境遇の若者。

 そういう見方をするの、やめてもらえないかな、と思うけど、ヤノシュは何も言わない。

 だいたい、あんなに良くしてもらっているのにそれをやめて、なんて、そもそも当然、言えない。




 その次の冬季休暇、ぼくはようやく日本に帰れることになった。

 そして、数日間、日本の小学校に通学できる。またみんなと。


 帰国して、ぼくはずっと浮かれていた。コンビニ。デパート。電線。左車線の道路。日本語。

 日本のお菓子はおいしい。スーパーに入るだけでうれしい。

 おにぎりが売っている。米。やわらかいパン。やわらかいグミに、スパイスがそれほど効いていない食べ物。

 時差がひどいな。眠い。けど、うれしくて寝ていられない。

 明日から日本の小学校。

 うれしくて。



 夕飯、お寿司にしてもらった。

 うれしくて美味しくて、親はドイツの話を聞きたがるのだけど、話すことなんかそんなにない。とにかくぼくは、日本の食べ物をたくさん食べておかないといけないんだから。


 そして登校。久しぶりのランドセル。

 ああ、元々ぼくはこうだった。そうだよ、学校って、こういうものだよね。日本語でさ。クラスみんな、日本人でさ。

 当たり前のことがいちいちうれしくて。



 いざ自分の学年の勉強をしてみると、ドイツの勉強と全然違って、教科書も全然違って、日本の勉強って難しいんだなって思う。

 ドイツの学校の勉強も難しいけど、難しい問題をじっくり解説してもらって自分で考えて、という感じだからどうにかぼくでもやっていけている。

 日本の勉強って、これの次はこれ、次はこれってどんどん進んでいくから、ぼーっとしていたら置いていかれる。今何やってるんだっけって、考えているともう次の課題に進んでいる。早くて、ついていけない。


 日本の学校では、みんなのことは元々知っているし、みんな元気そうだし話していて楽しいのだけど、ちょっとだけ、ずれているような気もして、どこの何がずれているのかはわからないけど、何となくぼくはみんなと話が合わなくなっていて。

 ドイツのことをいろいろ聞かれる。けど、普段は寮の中にいるだけで、学校も教会も遊びも全部その中で済んでしまうから、ドイツと言ってもみんなが思うような詳しいことはぼくにもよくわからない。

 みんなが興味があるのはドイツのサッカーのことみたいで、ぼくがいる街のチームがどんななのかはすごく聞かれた。

 あと、ドイツって広いのに、ぼくがドイツのことなら何でも知っていると思っているのか、全然馴染みのないチームについても聞かれたり。

 全然知らないからね。


 でも、やっぱり日本語で話し合えるのっていいな。友達も先生も日本語が通じるって、最高。

 あと、日本の給食っておいしいんだなって、ドイツに行く前は思わなかったけど、今はすごくそう思う。日本の給食最高。


 でも、気になることがある。

 日本の小学生って、どうして無理してみんなと同じ意見を言おうとするのだろう。言いたいことを言っていないことも多い気がする。

 みんなと意見が違っても、無理して合わせるのってつらくない?

 でもぼくが「そういうふうには思わない」ってそのまま言うと、なんか空気が悪くなるんだよね。そういうのって、ドイツにあったっけ…。

 あと、悪くないのに謝るとか。その場を何となく悪くしたくないっていうのはわかるけど、悪くないのに謝っている人が何人もいて、そういうのはちょっとな…と思う。

 多分ぼくも、ドイツに行く前だったら普通にそうしてた。無駄に謝って空気を読んで。

 でも、それをして得することってないと思うんだよね。言いたいことは言ったほうが、あとの自分が快適な気がする。


 でも、こっちの方がいいこともある。ここは、当たり前だけどみんな日本人。ドイツだと、アジア人って、見下されて、違うものだと思われて、意味のわからない冗談をぶつけられることがある。

 ここでは、たとえ国が違ってもあからさまにそういうことを言う人ってほとんどいない。日本人って、本当に優しいと思う。


 日本にいる間に、散髪して、歯医者に行って、毎日コンビニでお菓子を買う。

 日に日にドイツに戻る日が近付いてきて、憂鬱…。

 日本のやり方って…って思うところもあるけど、やっぱり、日本がいい。親といつでも日本語で話せる。友達がいる。食べ物がおいしい。

 周りは皆日本人で、どこのお店も、店員さんがめちゃくちゃ優しい。ドイツなんかひどい。店員の方がえらいんだから。

 戻りたくないな…。ドイツでがんばったら、どうなる?

 ぼくは本当に、夢も希望もなくていい。日本で仕事ができたらそれでいいのに。

 日本の、小学校の先生、とか、どう?

 ドイツの学校の先生も、今の学校の先生達なんか、本当に素晴らしいけど、ぼくは日本の子どもたちを教えたい。



 向こうの新学期が始まる数日前、ぼくは一人で飛行機に乗ってまたドイツに戻ることになった。空港までは両親が、向こうの空港には学校の職員が迎えに来てくれる。

 憂鬱過ぎて、ドイツになんか戻りたくないと思う。けど、ぼくは向こうでギムナジウムを修了した証明をもらわないといけないらしい。とにかくがんばれ、親にはそう言われている。


 戻るとまたいつも通り。忙しいスケジュールに振り回されながら学校。音楽。ドイツ語。

 入学当時よりは楽になってる。けど、ベッドに入るとやっぱり一人で泣いてしまうし、ドイツに戻って二日後くらいには、日本の食べ物が恋しくてつらくなった。

 そして、戻って一ヶ月くらい経つとまた、悪夢を見ておねしょをしてしまう。

 ここにいるからいけないんだ…。もう…本当に嫌になる…。


 また、夜中にこっそり、フィリップの当直室へ。

「すみません…」

「またお前か」

「ごめんなさい…」

「寝小便?」

「はい…」

「全く…」

「ごめんなさい…」

「行くぞ」

「はい…」

 予備のマットレスを持ってぼくの寝床まで一緒に歩いてくれるフィリップ。

「拓都」

「はい…」

「日本人ってのは、いくつまでそうやって寝床を濡らすんだ?」

「そんなの…。人によって違います…」

「早く治せよ」

「はい…」

 ベッドの始末をしてもらってまた床に入る。確かにいつまでもこんなのまずい。


 そしてなぜか、それを親に告げ口されていた。

 親からめずらしく電話が来て、そのことを言われた。

「拓都」

「電話くれるなんて、どうしたの?」

「拓都、大丈夫?」

「大丈夫って、何が? 大丈夫だよ」

「おねしょして寮に迷惑をかけているとか」

「うわ…。ちょっと…なんで…」

「そうなの?」

「ええと…。なんで? 誰かが連絡した?」

「そうなの?」

「そんなの…」

「拓都。寮でおねしょしてるの?」

「ねえ、それ聞くために電話してるの?」

「そのためだけじゃないけど。先生から連絡が来たから」

 え…。先生、知ってるの? フィリップが言った?


 親との会話もそこそこに、就寝前の自由時間、ぼくはフィリップの詰所に押しかけていった。

「すみませーん」

「なんだ、お前か。こんな時刻になんだ? もう漏らしたのか?」

「違います。フィリップ…。ぼくの失敗のこと…先生に言った?」

「言ったよ」

「なんで…」

「夜中の出来事は全て記録するように言われてる」

「おねしょも?」

「当然。マットレスを誰がきれいにしてると思ってるんだ。お前が横着してそこでするから、俺は大変なんだからな」

「そんなの…。横着したわけじゃなくて…」

「他にもあるんだよ、いろいろ。それは全部、職員が知るべきことだから」

「そうなんですか…」

「仕方ないだろ。そういうものなんだから」

「わかりました…」

「お前、そんなこと言いにわざわざここに来たわけ?」

「いや、その…。親から連絡が来たから…」

「連絡来たって? 俺に迷惑を掛けてるからか?」

「いや、何ていうか…そうですね…。はい、そうです…」

「いつも聞いてるけど。どうしてそうなったのかって」

「はい…」

「具合が悪いわけじゃ、ないんだな?」

「具合は、悪くないです…」

「ホームシックだな?」

「……」

「寂しいんだろ? 日本に帰りたい?」

「それは…」

「そりゃあ、そうだろうな。俺だって国に帰りたい」

「え、フィリップはドイツ人じゃないの?」

「俺がドイツ人に見えるかよ?」

「いえ…」

 正直言って、ぼくはドイツ人もフランス人もイギリス人もロシア人も見分けは全然つかない。

「俺は移民なの。まだこの国に馴染んでないんだからな。寂しいのは自分だけだと思うなよ、小僧」

「はい…」

 ドイツって、本当に移民が多くて、純粋なドイツ人ももちろんいるけど、そうじゃない人もすごくたくさんいる。

 皆事情があるんだよね…。

「小僧、これだけは覚えておけよ」

「何ですか…」

「言わなきゃわからないんだよ」

「え?」

「黙ってて分かってもらえる文化から来たのかよ、お前? お前が思っていることやしたいことは、お前がちゃんと口に出して言わないと、誰もわかってくれねえし、助けてももらえないんだよ」

「はい…」

「子どもだからって、黙ってそこにいたらいいと思うなよ」

「そんなこと…」

「特に、俺やお前みたいなよそ者に、この国の奴らは冷たいんだよ。主張することはきっちり言わねえと、濡れ衣着せられて、やってもない悪事を置いていかれるぞ」

「……」

「いいか、お前はこのまま進めばこの国でそれなりになれるんだよ。チャンスをつかめよ。この学校にいるのは幸運だ。ホームシックなんかに負けるなよ。お前なんか、ただのアジア人だよ。国に戻ったらどうせ大したことないんだろ?」

「はい…」

「でも、ここに来たんだろ? お前は今、ここでやってるんだよな? 寝小便なんかしてる場合じゃないんだ。がんばれよ」

「はい…」


 なんか…複雑な気分になって自分の部屋に戻る。少し…。あともう少し、がんばったほうがいいのかも…。

 フィリップも、大変なんだな…。

 たしかにぼくはただのアジア人で、日本に戻ったら大したことなくて、今いるここでだって大したことはない。自分がどこにいたって大したことないことくらい…わかってる…。わかってはいるけど…。

 フィリップの言う通りかもしれない。ここに来た。ここで、がんばるしかないのかもしれない…。


 それ以降、フィリップとすれ違うたびに、負けるな、ドイツ人を見返してやれ、と励まされるようになった。

 ごくたまに、ホームシックが過ぎて悪夢と共におねしょしてしまったりして深夜に報告に行くと眠そうな不機嫌な顔で見つめられて、まだまだか、とため息を吐かれたりもするのだけれど。



 それから季節が過ぎて、相変わらず休暇はつらい。ぼくの家族は当然迎えに来てくれないし、残された故郷に戻れない数人と寮で過ごすしかない。

 でも、それも慣れた。いつものメンバーと当番の先生と、どうにか楽しく過ごす方法も分かってきたから。


 それが、毎回、毎年、ずっと続くのだと思っていた。けれど、そうではなかった…。



 今年のクリスマス休暇。寮に残った五人の生徒と先生。今回もこのメンバーか、と思うけど、まあ、いいか。

 ヤノシュが最年長。台湾人のサム。ぼく。あともう二人。

 全員同じ部屋に集まってゲームをしたり、お菓子を食べたり。五人中三人がドイツ人ではないっていうのもおかしいよね。でも、ドイツ人はみんな、実家に帰る。

 何となく、たまに真面目な話になって、将来どうする、とか。年長者は、大学受験資格について具体的に話していて、ぼくら年少組はまだ、ドイツの教育制度それ自体を十分に理解していなくて。


 そこに、ヤノシュ。ぼくらは当然、ヤノシュはこのまま大学に進学するのだと思っていた。そしたら、そうではなかった。

「実はね、国に戻らないといけなくなった。三月になったらこの学校を去るよ」

「え、なんで? 卒業しないの?」

「ぼくはドイツ人ではないからね」

「ドイツ人でなくたって、ドイツの大学に行っていいんでしょ?」

「ぼくは、国に帰らないと」

「だって…帰れるの?」

「ぼくもついに、戦争に参加しないといけなくなった」

「え…」

「国のために戦うよ」

「ヤノシュ…」

 みんな何も言わなくなった。そんなことがあるのかと思った。うそかなって。冗談でしょ? 戦争しに国に帰るの?

 ヤノシュはたぶん、この学校の中で一番優しい。頭もいいし、低音のエースだし、先生達だって彼を信頼してる。このままここの先生になれるくらい立派なのに、どうしてヤノシュは戦争をしに国に帰らないといけないの?

 みんな無言で下を向いて、そのあとでゲームが続く画面に目をやる。


 何とも言えない気分のままベッドに入る。でもさっきあんな話を聞かされたから…。眠れない。

 今日は自分のためじゃない。ヤノシュのために泣いている。本当に、ドイツに来てからぼくは毎晩泣いている。

「拓都」

「うん…。ヤノシュ…?」

「大丈夫?」

「うん…」

「どうした?」

「ヤノシュは…本当に、戦争に行くの?」

「行くよ。それより、拓都はどうして泣いてる?」

「ヤノシュが…戦争に行くから…」

「なんだ、それで?」

「うん…」

「ごめん。だけど、どうして君がそれで泣くの?」

「わからない…。けど…」

「怖いの?」

「うん…」

「だけど、君の国にだって徴兵制はあるだろ?」

「何、徴兵制って?」

「君だって、もしいつか国のために戦わないといけない時が来たら、戦うんだろ?」

「そんなの…」

「ぼくは、正義のために戦うんだよ」

「正義って…?」

「国のために、戦うんだよ」

「ヤノシュ…。死なない?」

「それは、わからないよ…」

「行かないで…。戦争なんか、行かないでよ…」

「拓都…。君だって、ぼくの立場だったらきっと行くんだよ」

「行かないで。戦争なんか…やめようよ…」

「拓都…。ぼくだってそうしたいよ」

「ねえ、本当に戦争なんかしてるの? もう、そんなの止めて、ここにずっといてよ」

「……」

「ヤノシュがいないと、ぼく、ここでやっていけない」

「やっていけるよ。君は誰よりもがんばってる。ドイツ人よりずっとよくやってるよ」

「行かないで。お願い…」

 この穏やかな先輩は優しく笑って、務めを果たしたら戻ってくるよ、と言った。




 ヤノシュは、言っていた通り、三月末で学校を出て国に帰ってしまった。

 ヤノシュがいなくなっても学校はいつも通り。いつもの日常があって、もう誰も彼の話さえしなくなる。

 ぼくのホームシックは多少はましになって、ドイツの味気ない食べ物にも諦めがついてきた。

 いつの間にかフィリップはいなくなって、いつも夜中詰所にいるのは他の職員。ぼくは悪夢を見ることもなくなって、おねしょもしなくなった。

 冬の間は自ら希望してアイスホッケーに参加した。暖かくなってきたら今度はサッカーの練習にも参加するようになった。

 ドイツ語に苦労して、言いたいことが伝わらなくて悔しくて泣くこともなくなった。

 言いたいことは口に出して伝えないと伝わらない。

 別に、ドイツ人に恨みがあるわけじゃない。でも、いつまでもかわいそうなアジア人、という存在でいるつもりはなくて、ここに来たのだから、ここにいるのだから。必要な時には主張する。やるだけのことはやる。

 今まで親切にしてくれたいろんな人たちの、その心に恩返しをするつもりでいる。やるだけのことはやる。先のことはわからない。でも、やれるだけのことはしよう。ぼくは、ここで強くなるつもりだから。

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寄宿学校 岸野るか @pflaume1707624

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