第14話 また、一週間の始まりを迎える29歳
本当に金曜日は散々な夜だった。
おかげで、土曜日は朝になってもお酒が抜けている確信が持てず、和歌山へのドライブは断念。
お金は全額支払ったとは言え、あの時に勝手に帰ったことについても、高崎からはかなりキレられ、当分は自宅か、隣人である自分と一緒にいる時以外は、危ないからお酒は禁止と言う命令まで下されてしまう始末。
正直、あの日に関しては本当に記憶があいまいでしかないんだけど、そんなにやばかったのだろうか、俺...。
まあ、当分、お酒は控えようと考えさせられる週末だった。
あと、何か大塚さんのことについて、めちゃくちゃ聞かれた気がする...。
そして、あっという間に、貴重な休日は今回もいつも通りに特に何もなく終わりを告げ、現在また月曜日の憂鬱な昼休み。
なのだが...
「もー、松坂さん。あの日、お金だけ払ってくださって勝手に帰っちゃうからびっくりしちゃいましたよ。とりあえずは、ありがとうございましたですけど...」
何だろう。今度は、週の始まりから会社の同僚である大塚さんにその時のことで詰められてしまっている感じの俺がいる...。
そう。今、昼休みに飯を自席で済ませ、トイレに行こうとしていた俺は、また隣の部署の大塚さんに呼び止められて、廊下で立ち話中。
「いや、その説はご迷惑をおかけしました。本当にすみません...」
本当にすみません。もう飲みません。
「いえいえ、でも。また、ああいうことがあったら心配になっちゃいますのでline、交換しときませんか?」
「え、line?」
「い、嫌ですか...?」
「え? いやいや、そっちがいいのなら喜んで...」
そして、やばい。基本的に女性からlineを聞かれるなんてことはなかった人生だから、ただの後輩に対して変に一瞬目が泳いでしまうという弱男ムーブをぶっぱなす俺。
いや、普通に返答の仕方もミスったな。
何かキモい返しになってしまった気が...
「やった。では私がQR出しますね」
そして、相変わらずだが、大塚さんの方のリアクションは完璧。俺なんかとのline交換にそんな嬉しそうな表情を作り出せるのはさすがのコミュ強。
「でも、松坂さんの自宅の隣にあんな美人さんが住んでいるなんて。ふふっ、本当にあの人とはお付き合いとかされてないんですか?」
隣に美人が住んでいる? あぁ、高崎か。
「あぁ、ないない。俺だよ。本当にありえないから」
本当に、人間としての輝きが違う。
「ふふ、そうですか。良かったです。安心しました」
すると、今度は目の前の彼女がそう言って俺の目をじーっと見ながら微笑んでくる光景。
「......」
良かったです...。安心...。
い、いや、そんなこと言われたら普通...。
そうだ。そうだった。結局、あの飲み会で、この彼女が俺に脈があるかどうか高崎からの感想を結局聞けていない。
「......」
いや、ないない。ないから勘違いしては絶対に駄目なんだけど普通、lineを交換して、こんな感じで嬉しそうな顔をされたり、会話の中で俺が彼女がいないことを確認して、『良かったです』『安心しました』とか言われたら、世の中のほとんどの男は勘違いするよな...。してしまってもおかしくないんだよな...。というか、しないとおかしいだろ、これ...。
か、彼女は本当に一体どういうつもりでこんなことを平然と...
皆にもこんな感じなのか? でも、いや、でも...。
「そうだ。そう言えば、先日はまた車で遠出とかされたんですか?確か、和歌山でしたっけ?」
「いや、前日にあんな感じで酔っちゃったんで結局は行けずじまいかな...」
あれ? 俺、和歌山に行く予定とか彼女に言ったっけ?
「ふふっ、ラジオ聞きながら遠くまでドライブするのが好きなんですよね。私も松坂さんが、あの時にお勧めしてくださった芸人さんのラジオを休日に聞いてみたんですけど、ほんと面白くてすっかりはまっちゃいました」
え? ラジオ? あの時。もしかして俺、酔っ払いながら結構無意識のうちに彼女達に色々と自分のことを話してしまった系?
「和歌山は来週に延期される感じですか?」
「え、あ、まぁ...」
一応、何もなければとは思っているけど...
「松坂さん、私も行きたいです!」
「え?」
ちょ、え?
「でも、俺、一人だよ...」
「はい!知ってます」
あれ? はい...ってどういう意味だったっけ?
「やっぱり...私とじゃ嫌ですかね?」
「いや、全然嫌じゃないけど...」
そして、彼女が一瞬、目を潤ませながら悲しそうな顔をした気がして、反射的にそう答えを返してしまう俺。
「やった。嬉しい」
すると、目の前にはそう言って、俺の目を見ながら小さく胸の前でまた嬉しそうな表情でガッツポーズをする大塚さん...。
やば。可愛い...
じゃねぇ。な、何だ。この流れは...。
というか、今日の彼女、この距離もそうなんだけど、何かめちゃくちゃグイグイ話しかけてくる気が...?
「ふふっ、本当に楽しみです」
「え、あ、はい」
そして、そう言って俺の手をギュッとその綺麗な両手で握ってくる彼女...。
え、これ...。
「では、また。詳細はlineでお聞きさせてもらいますね」
「あぁ...また」
そして、気がつけば可愛らしい小走りで廊下から自分の部署へと戻っていく彼女の後ろ姿...
「.....」
やばいな。
俺、まだ酒抜けてない...?
幻覚?
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