蟷螂
きりの うみ
幼少
ずっと昔、僕まだ幼稚園児だったころ一匹のカマキリを殺した。
少し緑がかった透明な羽を左から順にぷちっともいだ。
羽がなくなってもバタつくから次は足を、また左から順に一本ずつもいだ。
長く細いカマだけになってもまだ動かしているからそれも取ると、もはや生きているのかわからなくなってしまったから、地面に落として、思いっきりジャンプして踏んだ。
何度か飛んだ後、足元を見ると平面になったカマキリだったものを見て、ようやく僕は母さんのいるベンチの方に戻り、先ほどのカマキリの死に方を嬉々として話したのだ。
子供のときの残虐性なんてそんなもんだと僕は思うが、その時の母さんはそうは思わなかった。
「何でそんなことしたの!」
と話半ばで僕の頬を思い切りぶった。
左耳にキーンと甲高い音が鳴り、頬は熱くジンジンと痛みが強まると共に腫れてきた。
僕はその場に倒れ込み、一瞬訳がわからず母さんを仰ぎ見たが、その顔は我が子を見る慈悲を含んだ目を持たず、ただ軽蔑する目であった。
そこで初めて自分は何か取り返しのつかない罪を犯したのだと幼心に悟ったのだ。
カマキリにではなく、母さんに対しての罪だ。
ただ大声で「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返す僕に、ようやく母さんも我に帰ったのか、僕を抱きしめて泣きながら謝り始めた。
あの頃の僕にその罪が何であるかはわからなかったが、現在に至っても僕は今だに答えが出せないでいる。
蟷螂 きりの うみ @kirino___u
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