3-6-1
出発の日、申し合わせた快速電車で、駅で待っていたけど先生は出発時間が迫っているのに、なかなか現れなくて、私がイジイジしていると、ギリギリでホームに駆け込んできていた。そーいえば、京都駅までは、違う車両で声を掛けないで知らんふりをしていることって言われていたのだ。先生と生徒の関係だから、仕方ないのかなぁーと、思っていたのだけど・・・。
制服で出掛けようかと迷っていたのだけど、お母さんが制服はどうなんかなぁーと、チェックのプリーツスカートと白のブラウスに衿元は真紅のリボンを結んで髪の毛も赤い玉のついたゴムで留めてくれて、送り出してくれた。今日は、赤い実を折り紙の端切れとをピンに刺して、胸に付けていた。そして、お土産にと湖魚の甘露煮の詰め合わせを持たせてくれて。もうひとつ、私は、篠田食品の原木栽培の椎茸と白木くらげを持ってきていた。椎茸は少し時期が早くて、まだ小さいんだけどと、それでも比較的大きいものを選んでくれていたのだ。私が紹介してみると言ったから、社長さんもその気になってくれたのだ。
電車の窓から・・・私 電車に乗るのも 2度目なんかも・・・初めては、小学校の修学旅行の時。こんな風に琵琶湖が見えるなんて、知らなかった。太陽の光にキラキラと湖面が輝いて、きれい! それに、島みたいなのも見えるのだ。あれが、沖ノ島なんかなぁー。その向こうには、多分 伊吹山に近江富士だ。京都駅に着いて、近鉄電車に乗り換える時、ようやく先生と話すことが出来て
「心細かったんやでー 私 電車乗るのって2回目なんやー」
「そうかー ごめんね でも 誰かに見られると・・・」
「うん まぁ わかってる 先生の立場ってあるもんねー」
最初の電車の立ったまんまだったけど、次の乗り換えの電車では並んで座ることが出来たので、私は先生の腕に後ろから腕を組んでいって・・・ピタッと
「なぁ すぐり もう少し離れろやー」
「なんでよー せっかくなのにぃー」
「でもな そのー 胸も・・・」
「ふふっ 感じてくれた? ちっとはあるやろー?」
「あぁ わかったから だから もう・・・」
「先生は さー 私 今 どんな気持ちなんかわからへんやろー 私は・・・恋人とデートしてるって気持ち・・・生まれて初めての・・・先生はそんなこと ちっとも思ってへんやけどぉー」
「・・・けど 胸はちょっとなー」
「感じるの?」
「うん 正直言うと 柔らかくて 弾力あるよーな・・・すぐりは まだ 中学生やけどーぉ」
「ふふっ この頃な 先生が私のこと すぐりって言ってくれるの すんごく うれしい」と、私は、もっと くっついていた。
駅に着いて、最初に [ナカミチ3]という看板で、中はカウンター8席の小さなお店。
「ここはな [ナカミチ]の姉妹店というかー まぁ 美味しいんだよー」
でも、お昼時を少し過ぎたとこで、まだ3人程が並んで待っていた。ようやく、1時過ぎになって、入って
「あらっ 耀ちゃん 今日は 彼女と一緒?」
「そんなんちゃうよー お店 盛況みたいだね」
「まぁ お昼と夕方はね」
「すぐり・・・ちゃん お母さんの同級生で 光瑠さんと 旦那様でコックの晋さん 抜群の料理の腕なんだ こちらは、山で添え物を採っている愛崎すぐりさん」
「あぁー あー 素敵なアレンジメントになっているのよー へぇー こんなお嬢さんなんだー 山に入るの?」
「そーだよ 熊とかマムシと闘いながらね」
「先生! そんな 私・・・」
「まぁ 半分 じょーだんだよ! でも まるで、嘘ではないんだよ 今日は シジミのバターライス 2つでいいよね?」と、先生は私に同意を求めるように・・・私は 頷いていた。
出てきたものは、真っ白いお皿に、その下に私が前に送っていたヒイラギと黒い実がランチョンマットとの間に飾ってあった。そーいえばカウンターの隅っこのほうにも、特別に送っていたサカキとグミの赤い実も大き目のグラスに刺し込んであった。
「おいしいぃ~ 初めて こんなの・・・」私 思わず 声が・・・
「ありがとうございます 瀬田のしじみなんですよ 時々 手に入ります 普段は 霞ヶ浦のものですが 今日はラッキーでしたよ」
「そーなんですか すごく おいしかったです」私は、本当に感動していたのだ。美味しいと思ったし、それに・・・我ながら 真っ白なお皿の下で それとなく輝いて見える ヒイラギと黒い実 完全に演出していて、ワクワクしてきて 余計に 美味しく感じるのだ。
お店を出る時に、光瑠さんという人が「これからも よろしくね 楽しみにしてるの どうやって飾ろうかって いつも ワクワクするのよ」って言ってくれて、先生には「可愛くて 良い子よね 耀ちゃんも 悪い子よね こんなに若いってー」と、言っていたけど、先生は「だからぁー そんなん ちゃうってばぁー」と、弁解していた。私は、そんなんでも 良いって思っているのにー
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