『光に誘われて』

キシキシ…腹が減った。


ヤバい。このままだとマジでヤバい。ずいぶん前に感覚の無くなった両足をズルズルと引きずり、道なき道を一人進む。


今年始めた山登り。めっちゃハマった。いくつかの山を登って調子に乗った。季節は冬。知人の忠告を無視し出発。山の天候は変わり易い。


あんなに晴れていたのに…突然の吹雪。一旦進行を諦め、テントを張って吹雪が収まるのを待とうと試みた。


しかし、強風にあおられ飛ばされたテント。ここで留まっていてもダメだと判断。下山する事にした。


吹雪は以前、自然の過酷さをこの身に伝えてくる。時計を確認。本来なら今頃山小屋で眠っていたはずの時間。その時。


「!」

待ってくれ!ヘッドライトが!チカチカと点滅した後プッツリと消えた。泣面蜂。


終わった…月明かりをも覆い隠す吹雪。暗闇の中、死を覚悟した。しかし突如として吹雪がピタリと止む。驚く彼が辺りを見回す。


「あっ!」

前方に光が見えた。やった!山小屋だ!身体に力が湧く。


「すみません!」

この山小屋、随分と古いようでドアがキシキシと軋むきしむ。しかし古かろうが関係無い!これで…


バクンッ!モグモグ…ゲプッ。ふぅ生き返った。やはり生きる希望を持った人間の肉は美味い。

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