『ラーメン屋にて』

出張で地方に訪れた仕事終わり。夜の歓楽街。ふと立ち寄ったラーメン屋。

「いらっしゃい…」


おお!貫禄と雰囲気のある店主!店の面構えといい、これは…期待出来るぞ!

うながされてカウンター着席。店内を見回す。

「あの〜メニューは…?」


「悪いね、ウチは醤油ラーメン一本でやっとるんですわ」


「!」

「じゃあ、醤油ラーメン一杯お願いします」


「あいよ」

良いじゃん!こだわってるって感じするじゃん!ふふふ…楽しみだ。おしぼりを握った手に力がこもる。


客は自分一人。酒は飲めない。お冷で乾いた喉をうるおし、ラーメンの到着を今か今かと待つ。


しばらくして。小気味いい動きの湯切り。出来た!

「ほい、ラーメン一丁」


「ありがとうございます」

第二関節。それもう入れにいってない?店主の親指はスープにどっぷりと浸かっていたが、まぁこの際気にしない。これがこの店のルールなのだろう。


立ち昇る湯気。透き通った黄金色のスープ。細いストレート麺。具材に白髪ネギ、メンマにチャーシュー、煮卵。なるとも入って”昔ながら感”に拍車をかける。生唾なまつばを飲み込み、麺を箸で持ち上げる。約束された勝利。もう美味い。


「いただきます」

ビチャ。あ、マスク外すの忘れてた。笑う店主。

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