第2話 side晶(あきら)

『(ヒソヒソ)がんばってね』


 森野もりのさん、あんなこというから……逆に金縛りにあっちゃったじゃないかよ。


 でも、漆原うるしばらさんに俺の事をより知ってもらえたのは良かったと思う。


 告白しても大丈夫かな?

 うーん……



『あわわわ!』


 え、漆原さんの声だ。


 あそこだな。


「どうしました!」


『あの、骨が』

「え? どこです?」

『あ、あれです!』


 あれか……


 ●●●●●●●●●


「あ、芳にぃ、イヌが死んでる」

『ああ、自動車に轢かれたんだな。ん、あれイヌじゃなくてタヌキだぞ』

「ねえ芳にぃ、あのままだとまた自動車に轢かれてしまうからかわいそうだよ。埋めてあげようよ」

『うん、晶は優しいな。でもね、生物が死ぬと肉が腐って細菌がいっぱいわくから危ないんだ。だから、直接触らずに手袋をしてホウキとゴミ袋を使おうか』

「うん」


 ●●●●●●●●●


 そうだ、今の段階では腐った肉が残ってるかどうかわからないから、直接触らないほうがいい。竹箒は集積場にあったな。


「漆原さん、集積場から竹箒持ってきますからちょっと待っててください」


 …………


 うん、やっぱり人間の骨じゃない……鳥だな。

 この大きさだと鳩かな?


 竹箒でひっくり返してみたけど腐肉などは残ってないみたい。というより、死後かなり経ってるみたい。


「漆原さん、たぶん鳩の骨で、死後かなり経ってるみたいで腐肉とかは残ってません」

『ちょっと見せてもらっていい?』

「はい」

『よかった。人間の骨じゃないのね。でもきれいに残ってるわね』

「え……そういえばそうだね。肉食動物に襲われたらもっとバラバラだろうね」


『ね、槙野君、埋葬してあげようよ』

「うん、そうだね」


 ホウキの柄で地面を掘って……柔らかいから助かるよ。


 …………


「うん、埋め戻し完了。成仏してくれよ」

『安らかに眠ってください』


『槙野君、手伝ってくれてありがとう』

「お役に立てて幸いです……」

『どうしたの?』


「あの……」

『はい』

「俺は……俺は、漆原さんのことが好きです。付き合ってください」


 くそっ、もっと気の利いたことを言おうと思ってたのに……漆原さんに向き合ったら、全部吹っ飛んじゃったよ。


 こんな凡庸な告白じゃダメかもしれない。

 涙が出そうだよ。


『どうしてそんな切羽詰まったような顔をしてるの? 大丈夫よ、槙野君の日頃の行いとか今日の鳩の骨に対する丁寧な扱いとか、とっても尊敬できるし、好ましいよ』

「え、じゃあ」

『もちろんYesです。こちらこそよろしくお願いします』


「やった。やったよ。漆原さんありがとう。本当にありがとう」

『もう、恋人同士になったんだから私のことは寿々花すずかって呼んで』

「じゃ、俺は晶って呼んでもらえますか?」


『ねえ、誰も見てないわよね』

「えっと、カヤの茂みがあって視線を遮ってますが……」


『ねえ』


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ご訪問ありがとうございます。


 ボランティア清掃で鳩(?)の白骨死体を見つけたことはあります。











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鳩の骨に対する丁寧な扱いとか、とっても尊敬できるよ 獅子2の16乗 @leo65536

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