壊れる…

第90話

バシッ!

何かを素手で叩く音が廊下で響いた。

私が振り向くと小学生くらいの男の子が、母親らしき中年の女性に叩かれていた。



「この子はすぐ甘えるのよっ!いつもそうなのっ!私が一番よく知っているのっ!こうするのが、この子にはあっているのっ!」

止めに入る看護士達を振り除けて、女性はなおも叩き続ける。

叩かれている子供は、声も出さずに唇を噛み締め、うなだれたまま、倒れない様に踏張っている。



人の心を壊していくのは、やはり人の心だと改めて感じた。そして壊した人の心も同時に壊れていくのだ。



心は脆い角砂糖の様だ。

静かに…

しかし一気に壊れて…

元通りには…

先ずならない。

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