鈴の音

第39話

何処かで鈴の音がする。



チリンチリン…

ではなくて

コロコロコロリン…

と籠もる様な響きだ。



静かな昼下がりの廊下で、そんな鈴の音を聞いていると、何処か遠くで一人迷子になった様な、心細さを感じて胸が痛む。



コロコロコロリン…



もう何処で鳴っていても良かった。

ただ、もう少しこの鈴の音を聞いていたいと思った。


コロコロコロリン…



段々近づいてきたソノ音は、私の病室のドアを開けた。

父が両方に大きめの鈴が垂れたウチワをアオギながら、入ってきた。

私が欲しいと言っていた金魚の絵柄の大きなウチワ。



コロコロコロリン…



妙に懐かしい響きの中、二匹の金魚が思い思いに泳いでいた。

涼しい風が髪を揺らす。



コロコロコロリン…



懐かしい音は、いつしか優しい子守歌。

静かに夢におちていく。

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