小さなとまどい

第33話

ざわざわと廊下が騒がしい。土曜日は平日よりも見舞い客が多い。小さな子供も多い。



身体に繋がっていたチューブの何本かが外れ、ベッドから自由になった。

自由になるとやたらアチコチ歩きたい。

そこで飲み物を買いに自販機へいった。



自販機の前の長椅子は満席だ。床には子供や若い人が座り込んでいる。そんな人達を避けながら、点滴棒を押して自販機の前へ。



そこで小さな女の子が何を買おうか迷っていた。

彼女はリンゴジュースにしようか、イチゴ牛乳にしようか悩んでいるらしい。その真剣な後ろ頭が、何とも微笑ましく可愛らしい。

私は思わず笑顔になって、1Fにある売店まで行く事にした。



あの女の子は、小さな手に握り締めたお金で、一体どちらを選んだのだろう?

可愛らしい姿に癒された人は何人いただろう?

小さなとまどいに、いつもの自販機も、ボンヤリ可愛く見える正午すぎだった。

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