嫌味な女

第23話

自販機に飲み物を買いに行くと、よく会う女性がいる。

いつも私の爪先から頭の天辺までジロジロ見ては、不愉快そうにフンっ!と横を向く。まるで私が彼女の憩いの空間を汚したかの様な態度だ。

50代位にみえる。

組んだ片方の足をユラユラ振りながら、腕も胸の位置で組んでいる。完全にクローズのポーズだ。



私に付き添っている看護士さんが「何にする?」と聞いた。私が迷っていると「決めてから来なきゃね。」とその女性が言った。一瞬、私も看護士さんも固まったが、聞こえなかった振りをして紅茶を買った。

何となくその場で飲む気になれなくて、病室へ戻った。



夕方の閑かな日差しを背に受けて、その女性は逆光になった。

座っている姿勢も安定していたし、付き添いの看護士もいなかったから、幾分元気な患者なんだろう。という事は、4~6人部屋なんだろう。



色々あるのかも知れない。


彼女が落ち着ける自販機の前。

何だか淋しくなった。

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