逃れの森

第8話

恐怖から、痛みから、逃げて逃げて逃げ切りたい。

白い安堵の森にいて、突然の痛みで引き戻される白い部屋。


暑さも寒さも感じない。

ただネットリと脂汗だけが、荒い息で波打つ胸を伝って流れる。


噛み締めた唇から流れる血の味。乾いた口に広がって吐き気が波の様に襲ってくる。


誰に掴まるつもりは無いけれど、つい空を掴むが如く伸ばした手を…

夢のなかで、あの人が握ってくれた。



静かな風が吹いてきて、私はまた白い眠りの森へ。

私の眠る揺りかごを揺するあの人の白い手が…

そっと拭った唇の血。



大丈夫だよ…



私一人頷いて、再び安堵の森で眠りにつく。

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