嵌め込みの密室
三家明
第1話、パズル荘
私は食品量販店のレジで深夜の業務に勤しんでいた。賞味期限が迫った売れ残りのパンを回収していた。樹脂製の籠にそれらを入れ、両開き扉を通り作業員専用スペースに入ると、溜息をついた。
何よりも退屈である、二十代男性の終わりに差し掛かり、ずっとスーパーの従業員で構わないと思っていた。しかし、退屈だった、現に退屈である。周りの友人は結婚し疎遠になってゆくし、わたしは特に恋愛とも縁が無く、ただたださみしさがあった。ただ寂しさだけでは現状維持のままだっただろう。何より退屈なのだ、退屈さは現状に満足していないという事かもしれない、だが特に転職する気は起らなかった。
家に帰ると副業に関連する情報を調べ始めた。転職する気が無いなら副業でも探すしかあるまいという意気込みで。ただ、多くは単純作業の業務であり、賃金がめっぽう安く、私がすぐに飽きそうなものばかりだった。しかも背景が良く分からない情報が多く素人には何のことやら分からない。
何か紹介者は居ないだろうか。すると近所にある興信所の事をふと思い出した。仕事の相談や提案、問題解決と宣伝文で謡っていた。副業の探し方でも聞きに探偵事務所を使ってみよう、幸い明日は休日である、何万か金を持っていけば少しは何か助言でもしてくれるだろう。
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