宮崎恋旅! 〜地味な俺に美少女3人?南国の夏〜

せろり

第1話:悠太のアパートにて

24インチのテレビ画面に、カラフルなゲームキャラ達が技名を叫びながら激しく動き回る。ボタンを押す音が連続し、次の瞬間、画面に「K.O.」の文字が浮かび上がった。


「よし!!また私の勝ち〜!」

由梨菜がコントローラーを頭上に掲げて勝ち誇ったように笑った。


「うーん。ちょっと手加減しすぎちゃったかなー。」

悠太は悔しさを隠そうとするように苦笑いで肩をすくめる。


「嘘ばっかり〜。ゆうちゃん、本気出しても私に勝てないんでしょ〜?」

由梨菜は悠太のシングルベッドの上で足を崩し、その大きな瞳で悠太の顔を覗き込むように言った。その屈託のない笑顔に、悠太は子供の頃の面影を見た気がして、少しだけ視線を逸らす。


「…いやいや、でも由梨菜ちゃんほんと上手くなったよね。」

曖昧に返事をしながら、悠太は机の上に置かれた由梨菜手作りのお弁当に目をやる。今日も鮮やかな卵焼きと色とりどりの野菜が詰まっている。


「ねえねえ、ゆうちゃん。」

「ん?」

「夏休み、宮崎に帰るんでしょ?」

「ああ、帰るけど?…」

「一つ提案があるんだけどさ…。私も一緒に連れてってよ!」


悠太は一瞬、耳を疑った。


「は?」


「いやだから、宮崎! 私も行きたいの。子供の頃行ったとき凄い楽しかったし、また遊び行きたいなーって。」

由梨菜がベッドから身を乗り出し、真剣な顔で言う。


「…もちろんいいけど。急にどうしたの?」驚いた悠太は、声が上ずっていた。


「だってさ、何か夏休みの思い出作りたいじゃん。それに、ゆうちゃんが一緒に案内してくれるなら安心でしょ?いいとこ連れてってよ!」

由梨菜は首を傾げて、おねだりをするような仕草で言った。


「まあ、別に構わないけど…」


勢いに押し切られ悠太が答えると、由梨菜は「やった!決まり!」と両手を叩いて喜んだ。


「それでさ、それでさ、どうせならフェリーで行こうよ!新幹線で神戸まで行って、神戸からフェリーに乗ったら旅っぽくて楽しいじゃん。」


「え、フェリー?マジで?」


「そう!デッキで風に当たりながら星空とか見たり、波の音を聞きながら夜景とか見て海を渡るの、めっちゃロマンチックじゃない?」

由梨菜が目を輝かせながら身振り手振りでフェリーの楽しさを語る。


悠太は少し考えたふりをしていたが、嬉しさを隠せない笑顔で頷いた。


「まあ、別に構わないよ…」

「やった!決まり!」


ただ、喜びの声を上げた由梨菜が続けて言った次の言葉に、悠太の思考が一瞬止まった。


「あとね、私が一緒に住んでる麻衣と、カフェの友達も一緒に行きたいって!」


「…友達?」  


「そう!二人とも面白い子だから、きっとゆうちゃんも気に入るよ」


「え、男?それとも女の子?」


「どっちもめっちゃ可愛い女の子だよ。私なんかと違って。ゆうちゃん興奮して、変なことしちゃだめだよ!そう言う人じゃないって言ってるから。」半分いたずらっぽく、半分本気を交えながら由梨菜は言った。


「てか、俺すげえ緊張するじゃん。女の子って。何喋ればいいかわかんないし」不安でどこか目をキョロキョロさせた悠太に、由梨菜は「あら〜!僕ちゃん緊張しちゃうよ〜んって?」と、ニヤニヤ笑いながら言う。


「そ、そこまでじゃないけどさ。」悠太が慌てて撤回すると、由梨菜は吹き出すように笑った。


由梨菜の無邪気な笑顔を見ながら、悠太はまだ見ぬ彼女たちを想像した。どんな子たちなんだろう?


あまりの不安と期待、興奮と緊張に喉が渇いた悠太は手に持ったペットボトルのコーラを一気に飲み干して呟いた。

「あ〜…なんか…、馬車馬のような夏休みになりそうだな…。」

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