第13話 不明な意思

くそ、あのパワハラ教師のせいで一時間も足止めを食らってしまった。結局、生徒会長は職員室付近にはいなかった。となれば、確実に生徒会室だ。しかし、生徒会室に着いた時、部屋の前には一人の女子生徒が立っていた。


「あの、生徒会長ってこの部屋にいる?」


「まず名乗るのが礼儀ってものじゃないんですか」


なんとも圧の強い女子だ。見た目がツインテールに猫目という時点で圧がかかりすぎている。


「ご、ごめん。俺は貝塚拓斗、生徒会長の奥出に用があってきたんだけど」


「私は生徒会書記担当の一年生です。会長に何用でしょうか」


「いや、詳しくは言えないんだけど、直接話をさせてくれないかな」


「怪しいですね。会長は激務の最中ですので、そもそもご案内しかねます」


どうしよう、すごく怪しまれている。これはどいてくれそうにない。


「そこをなんとか! 大切な話なんだ、今話せないと困るんだよ」


「みっともない頼み方ですね、三年生ともあろうお方がそんなのでどうするんですか」


「ど、どうして俺が三年生だってこと知ってるんだ?」


「ネクタイの色を見ればわかります。あなた、学年ごとにネクタイの色が異なるのをご存じないのですか?」


確かに言われてみれば、一年生は赤、二年生は青、三年生は緑、だったような気もしなくもない。


「いやあ、焦っていて忘れていたよ。で、生徒会長には会わせてくれない、かな?」


「ダメです、お引き取りください」


「わ、分かった。今日は忙しそうだから帰るよ。君も、仕事頑張ってね」


「あなたに言われなくとも大丈夫です。さあ、速やかにお引き取りください」


一回も笑顔を見せてくれなかった。そりゃ初対面っていうのもあるかもしれないが、あれは毛嫌い以外の何ものでもないぞ。正直傷ついたよ……。




翌日、休み時間は案の定会えない。放課後、お決まりのように生徒会室に向かう。


「またあなたですか」


「そんな顔しないでくれよ。別に迷惑かけに来たわけじゃないんだって」


「二日連続来るのがすでに迷惑です。お引き取りください」


まだ用件も言ってないのに、帰れなんて悲しすぎる。


「今日の仕事具合はどう? 今日はさすがに会わせてもらえると嬉しいなあ、なんて」


「しつこいです。お引き取りください」


どうしてこの子はこう頑ななんだ。少しぐらい会わせてくれてたっていいじゃないか。というか、こっちは先輩なんだぞ。


「うーん、今日も忙しいってことかな?」


「その通りです。お引き取りください」


「さっきからそればっかりじゃないか。もうちょっと先輩との会話を楽しまない?」


「あなたと話すことは何もありません、会長の仕事の妨げになりますので、お引き取りください」


二言目には『お引き取りください』なんだが、いい加減心が折れかかっている。


「分かった分かった。また明日来るよ、ごめんね」


「来なくて結構です。お引き取りください」


どうしてそこまで生徒会長に会わせたくないのだろう。もしや、怪文書の噂を鵜呑みにして俺を遠ざけてるとか。いや、それよりかは単純に俺が気に入らないといった様子だったな。どっちにしろ傷ついていることには変わりないんだが。




また翌日、休み時間は当然会えず、また放課後、生徒会室に向かう。


「いい加減にしてください」


「本当に会わせてくれるだけでいいんだって。ちょっとだけ、ね?」


「きもいです。お引き取りください」


おいおい、それはただの悪口だろうよ。いくら後輩でも許さない、ってことにはならないけど。


「じゃあ、どうやったら会わせてくれるんだい?」


「あなたと会長が会うことは今後一切ございませんので。お引き取りください」


「ど、どういう意味?」


「そのままの意味です。なので、二度と生徒会室には近づかないでください。そろそろ、先生を呼んでもいいんですよ」


これはまずい。さすがにストーカーと思われても仕方ない、かもしれないけど俺はあいつに会わなくちゃいけないんだ……!


「それだけは、やめてほしい。真剣にお願いするから、一度だけ会わせてくれないか?」


「結局、そのザマですか。本当に目も当てられないですよ、その姿」


「どうして俺をそんなに目の敵にするんだよ、俺だって一応先輩なんだぞ?」


「別にあなたでなくとも生徒会室には入れません。勝手な被害妄想しないでください」


生徒会長はどういう教育してるんだ。生徒会室には誰も入れないなんて、一体誰が決めたんだよ。


「じゃあ、先生も入れないのか?」


「それは例外です。この学校の教員ですので」


「ズルいじゃないか」


「何子供みたいなこと言ってるんですか。いい加減大人になってください」


「俺はまだ子供だ、未成年なんだ。仕方ないだろ」


後輩はとても大きなため息をついて、俺を再度睨みつけた。


「屁理屈言ってないで、お引き取りください」


俺はふと思った。毎回休み時間に奥出が教室にいないのは、この後輩のせいなのではないかと。


「もしかして、生徒会長を独り占めしたいのか」


「何ですか急に、もしそうだとしたら何だというのですか? あなたには関係のないことです」


「いつも俺の行動を見越して、休み時間に奥出を連れだしていたのは君だね?」


「そんな確証のないことを言われましても困ります。確かに休み時間に少し生徒会の仕事を手伝ってもらったりはしていますが、わざとやっているとでも?」


もはやそれしか考えられない。だが、相手の言うように証拠がない。


「拓斗、苦戦しているようだね」


「友人か、部活はどうしたんだよ」


「今日はオフだ。それより、困ってるんじゃないのかい?」


いつもいいタイミングで来てくれる友人。もしかして盗聴器でも仕掛けられているのだろうか。まあ、それは冗談として、救世主が現れてくれてとても助かる。


「邪魔をするな、と忠告したはずですが」


「邪魔をするつもりはないさ。ただこのばかを迎えに来ただけだよ」


後輩と友人はどうやら顔見知りらしい。


「おい、それってどういう……」


「いいから行くよ。もう一つ悪評がたってもいいのかい?」


「分かった。後でちゃんと説明してもらうからな」


俺たちはひとまず生徒会室を離れ、教室に戻ることにした。




教室に着くと同時に、俺は友人を問い詰めた。


「どういうことか説明してくれ」


「あの後輩ちゃん、なかなか頭のきれる子でね。今の状態で生徒会長に会うのは無理な話さ。だから別の作戦を立てようと思ってね」


「なんでもっと早く言ってくれなかったんだよ」


「僕だって考える時間が必要だったのさ。さあ、別の方法を考えようじゃないか」


なぜ友人が俺の状況を把握しているかはさておき、俺にだって考えがある。


「それは既に考えてある。あんまり使いたくはないんだが」


「おお、珍しい。言ってみてくれよ」


「俺の弟、海斗に調査をお願いしようかと思う」


弟の海斗は同じ高校の一年生、つまりあの後輩と同じ学年だ。クラスはどうか知らないが、俺より確実に優秀な奴だから、上手くやってくれるはずだ。


「それはいい考えだね。そういえばしばらく会っていないけど、元気にしているかい?」


「ああ、兄さん兄さんってべったりだよ。こんな俺をそんな風に慕ってくれるのは海斗だけだ。学校では学級委員長らしいし、俺なんかより充実した日々を送ってると思うぞ」


「あの子はずっと兄弟を欲しがっていたからね、君が貝塚家に迎え入れられてからは、いつも楽しそうだった」


まったく可愛い奴め。俺のほうこそ助けられたっていうのに、義理でも本当の兄弟のように仲良くできて俺は嬉しいよ。自慢の弟だ、きっと何か掴んでくれるはず。

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