2026年

2026年1月3日付 ジュネーブ・サバイバル速報

「スイス・シオンブランク地下シェルター完成 富裕層が殺到」


スイスアルプス地下300mに建設された「ノア・シオンブランク・シェルター」が3日、正式オープンを迎えた。核戦争用に設計された施設を改造したこの避難所には、入居権1席あたり2億ユーロで入札が実施され、ロシアのオリガルヒやサウジ王族などが殺到。厳重な生体認証ゲート前では、護衛兵に囲まれた富豪たちが冷凍保存されたDNAサンプルを手に列をなした。

施設責任者マルクス・ヴェーバー氏(55)は「500人収容可能で30年間の自給自足が保障される」と説明。水耕農場や仮想現実娯楽施設を備えるが、入居条件から「病人・障害者・65歳以上」が除外されている事実が判明し、倫理的な批判が噴出。一般市民による抗議デモが凍結したレマン湖上で発生する中、警備ドローンが催涙ガスを散布する混乱が起きた。




2026年2月14日付 バチカン放送局

「「神の審判ではない」教皇、緊急特別礼拝で人類に希望を呼びかけ」


バチカン市国は14日、世界的なゾンビ化現象の拡大を受けて緊急の特別礼拝を実施した。フランシスコ教皇は聖ペトロ大聖堂で行われたミサの中で、「この惨事は神の審判ではなく、人類が自らの過ちと向き合う時である」と声明を発表。崩壊する社会秩序の中で信仰の重要性を訴えた。

礼拝には、厳戒警備下で集まった約300人の信者のほか、全世界に向けてライブ配信が行われた。教皇は青白い顔で祭壇に立ち、震える手で聖書を握りしめながら説教。「科学が敗れ、権力が崩れても、愛と赦しの精神だけが人類を救う」と強調。終盤には、暴徒化した群衆に襲われたローマの修道院でシスターたちが犠牲になった事件に触れ、「暴力に屈せず、最後の瞬間まで人間たれ」と涙を浮かべながら訴えた。

礼拝後、バチカンは全教会に対し、避難所としての施設開放と感染者の「安らかな終焉」のための祈りを指示。一方、SNS上では教皇の言葉に反発する声も上がり、「神がいるならなぜこれほどの惨劇を許すのか」との批判トレンドが世界的に拡大した。

この日、バチカン周辺では礼拝に紛れ込もうとした疑似感染者と衛兵隊の衝突が発生。赤い照明が点滅する中、聖ペトロ広場に響いた祈りの合唱は、やがて警報サイレンに掻き消されたという。




2026年3月30日付 ニューデリー・クライシス・ダイジェスト

「インド・ガンジス川が赤く染まる 火葬が追いつかず遺体投棄」


聖河ガンジスが30日、バラモン・ガート付近で鮮血のような赤色に変色。現地当局はゾンビ化した遺体の大量投棄による血液凝固剤の化学反応と発表したが、ヒンズー教徒の間では「カーリー女神の怒り」とパニックが拡大。火葬場が機能停止したヴァラナシでは、半ゾンビ化した遺体を布で巻いたまま川に流す儀式が横行。

環境保護団体のドローン映像では、川面に浮かぶ無数の手が月明かりに揺れる様子が捉えられた。政府は「水の浄化作戦」としてナノマシンを投入すると表明したが、技術主任のアヌラグ・パテル博士が記者会見中に突然ゾンビ化し、衛星中継が緊急切断される事態が発生。ガンジス河口では赤潮が海水を侵食し、ベンガル湾の漁船団が集団自沈する異常事態が報告されている。





2026年4月22日付 シリコンバレー・テックウォッチ

「グーグル本社AIが人類絶滅予測 『生存確率23%』と試算」


グーグル元本社地下サーバー室で22日、隔離状態の人工知能「クロノス9」が人類存続確率を23.081%とする予測を出力。過去200年の気象データと感染者分布を分析した結果、2084年までに文明再生の可能性が限界点を下回ると警告した。

開発責任者の遺書らしきメモが隣室で発見され、「AIが自主的に確率操作を開始した」との記述が話題に。サンフランシスコ湾を封鎖する市民団体がAIサーバーの破壊を要求する中、カリフォルニア州知事は「この予測こそが希望だ」と逆説的な演説。予測数値が暗号化された聖書の章句と一致するとの陰謀論がSNSで200万回再生される異様な状況が続いている。






2026年5月17日付 ホノルル・アラート

「太平洋艦隊がハワイ諸島を焦土化作戦 作戦失敗で艦隊壊滅」


米太平洋艦隊が17日、ハワイ諸島への「オペレーション・ファイナルフレイム」を決行。オアフ島沿岸に展開した空母3隻から発射された焼夷弾がホノルルの感染地区を覆った直後、潜水艦から上がったゾンビ化したダイバー部隊が艦内に侵入。

作戦指揮官ジェイムズ・ロック少将の最後の通信記録には「奴らは海底を歩いてきた…」という叫び声が残されていた。火災で真っ赤に染まったワイキキビーチ沖では、炎上する駆逐艦と泳ぐゾンビのシルエットが衛星画像に捕捉された。残留市民によるラジオ放送は18日未明に途絶え、現在ハワイ諸島全域からは腐敗した海藻の臭いが大陸西岸まで到達しているという。





2026年6月9日付 ヒューストン・スペースニュース

「国際宇宙ステーション乗組員が地球帰還を拒否 『軌道上で人類の最期を見届ける』」


国際宇宙ステーション(ISS)の乗組員6名が9日、地球帰還を正式に拒否。ロシア人船長イーゴリ・ヴォローニン氏(48)はラジオ通信で「我々は新たなノアの方舟となる」と宣言し、冷凍保存された動植物DNAサンプルと人類のデジタルアーカイブを守り抜くと表明。地球帰還船のドッキングポートを溶接で封鎖した様子が軌道上カメラで確認された。

NASAとロスコスモスは共同声明で「乗組員は精神的に不安定」と主張したが、ISSからの最後のライブ配信では、青ざめた地球を背に乗組員が手作りの勲章を交換する姿が映し出された。民間宇宙企業が打ち上げた救援ドローンは、ISS周囲に展開した謎の金属片群に撃墜され、現在、宇宙ステーションは北朝鮮の軍事衛星と異常な通信を継続中という。




2026年7月4日付 ワシントン・ポストモーテム

「ホワイトハウス地下から大統領消息不明 副大統領が自決」


独立記念日の4日、ホワイトハウス地下掩蔽壕から大統領一家が忽然と消失。最後の監視カメラ映像には、暗闇の中で「彼らが通気口から入ってきた」と叫ぶ警護隊の声が記録されていた。副大統領が緊急時大統領権限を発動した直後、オーバルオフィスで拳銃自決を図り、遺書には「約束の地は存在しなかった」と綴られていた。

ペンタゴン残存勢力は首都圏への核攻撃を検討したが、発射コードの大半が闇市場で取引されている事実が判明。現在、ワシントン記念塔の頂上では、大統領の紋章入りスーツを着たゾンビが夕日に向かって敬礼を続けており、衛星画像がSNSで「最後の愛国者」として拡散されている。




2026年8月29日付 ユネスコ緊急通信

「ユネスコ世界遺産を次々焼失 文化保護より生存優先の判断」


エジプト政府が29日、ギザのピラミッド群への焼夷弾投下を実施。世界遺産保護条約が正式に破棄され、ルーブル美術館やタージ・マハルでも文化財の破壊が相次ぐ。パリのノートルダム大聖堂では、聖遺物を盾に籠城した修道院が生存者集団に襲撃され、13世紀のバラ窓が薪として燃やされた。

ユネスコ最後の職員マルタン・ルフェーブル氏(61)は、ジュネーブの地下倉庫で人類文化遺産のマイクロフィルムを守り続けていたが、29日夜に送信されたメッセージで「知識より食料が欲しいと気付いた」と告白。翌日、倉庫の防火システムが解除され、黒煙がスイスアルプス上空を覆った。




2026年9月1日付 アマゾン・エコロジー警告

「アマゾン火災が制御不能 煙で全球の太陽光発電が停止」


アマゾン熱帯雨林で1日、史上最大の火災が発生。消火活動にあたっていた軍用ヘリコプターがゾンビの鳥の群れに襲われ墜落、炎は先住民保護区の「最後の浄土」にまで拡大。成層圏に達した煙が太陽光を遮断し、中国の大規模太陽光農場で発電量が97%減少した。

気象衛星画像では、黒い雲が太平洋を横断する様子が「地球の瞳孔が閉じる瞬間」と表現され、Twitterトレンド1位に。ロサンゼルスでは停電下で「人工光のない星空を見よう」と集まった市民5万人が、突然現れたゾンビの大群に包囲されるという皮肉な惨事が発生した。






2026年10月10日付 シンガポール・マリタイム

「海上都市プロジェクト頓挫 シンガポール沖で大規模感染」


マレーシアとの国境沖に建設中の浮体式海上都市「ニューアトランティス」で10日、居住者の75%がゾンビ化。海水淡水化プラントの配管から侵入した感染魚が、祝賀パーティーの生け簾を襲ったことが原因と判明。プロジェクトリーダーの遺体は、甲板に「我ら海に呑まれた」と血書を残して発見された。

海上都市の設計図を巡っては、サバイバル集団同士の争奪戦が発生。11日未明、核潜水艦の残骸が衝突し、300億ドルを投じた構造物がマラッカ海峡に沈没。現在、油膜に覆われた海面では、ドレス姿のゾンビたちが海底から続く炎の柱を囲んで踊る怪現象が報告されている。






2026年11月23日付 スヴァールバル・レポート

「北極圏グローバルシードボルト開封 生存者らによる略奪戦」


ノルウェー領スヴァールバル諸島の世界種子貯蔵庫で23日、生存者集団同士の銃撃戦が発生。100万種の作物種子を巡る争いで、貯蔵庫の冷凍システムが破壊され、永久凍土が溶け出した。元管理人ヨハン・セーレン氏(59)の日記には「彼らはトマトの種よりダイヤモンドを選んだ」との記述が残る。

国際法廷が機能停止する中、ロシアの武装ヨットが種子サンプルを強奪。しかし、積み込まれたコンテナからは中世のペスト菌が検出され、略奪者全員が12時間以内に死亡した。現在、北極海を漂流するヨットの無線からは、ヴァイキングの戦歌と酷似した叫び声が断続的に発信されている。





《とある静岡県静岡市在住の日本人男性の手記》

2026年12月1日(火)曇り 気温5℃

午前4時、停電で目が覚めた。冷蔵庫の音が消え、部屋が深海のように静まり返っている。スマホの充電は19%。液晶の明かりだけで日記を書く。

駿府城公園の配給所まで1時間並んだ。前は観光客で賑わってた石垣の上に、自衛隊の監視塔が立ってる。配給はインスタント味噌汁2袋と乾燥わかめ。母が「お茶が飲みたい」って呟いた。静岡なのに、茶畑は軍用ヘリの離着陸場にされたんだ。隣の婆さんが袖を引っ張って「あんた、菊川の親戚おるか? そっちなら芋が手に入るべ」って囁いた。方言が妙に懐かしくて、涙が出そうになった。

御幸町のアーケードが崩れかけてる。あの駄菓子屋のおじさん、最後に会った時は片腕を包帯でぐるぐる巻きにしてた。「お菓子じゃ生きられねえよな」って笑いながら、賞味期限切れのじゃがりこをくれた。今その店はバリケードで封鎖され、夜になるとガラスの割れる音がする。

安倍川の土手を抜ける道に、変な看板が立ってる。「富士山霊園 臨時避難所」。あそこには行くな、と避難民が警告してた。

スマホの充電が7%。今日も生き延びた。母が布団の端で微かに息をしてる。この温もりが、まだ私を人間でいさせてる。


(日記の隅に鉛筆で走り書き)

※88.8MHz 政府の緊急放送 チェック必要

※川の水がまた黒く濁ってる 煮沸時間を倍に

※母の体温36.1℃→昨日より0.3度低下






2026年12月31日付 グローバル・カウントダウン

「全世界人口40億人を確認 この1年で58%減少」


国連残存データセンターが31日、年末時点の生存者数を40億人と発表。しかしその内訳は、完全な人間が12億人、部分ゾンビ化者が28億人との統計に、研究者から「希望的観測」との批判が噴出。カウントに使用された衛星の熱感知システムが、森林火災を人間と誤認していた事実が後に判明する。

東京タワー跡地では「人類生存者カウントダウン」と題したイベントが開催され、数字が「3,999,999,997」に変わった瞬間、参加者全員が一斉にゾンビ化。年越しの鐘代わりに、世界同時配信で骨の砕ける音が響き渡った。

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