第3話
義旭くんに睨まれたけど、あんなことで落ち込んでたら義旭くんの彼女なんてできない。
そう思って気にしてなかったんだけど、なんと義旭くん。
あれから口を利いてくれない。
……あれからって言っても、まだ一日しか経ってないけど。
それに文化祭で忙しくて話せない理由も沢山あるし。
でも周りの皆(主に秀)が「破局だな」なんて言ってくるから少し寂しい文化祭ニ日目。
一日目の義旭くんはずーっと生徒会。
だけど今日、義旭くんはニ時間だけ、クラスの手伝いをする。
「悪いな、伊達。忙しいのに」
「いや、平気。ウサ耳秀も見たいからな」
片方の口元だけ上げて笑う義旭くんに私の心臓が速くなる。
「義旭くんっ!働く時間、同じだよ!」
私の声に「あぁ」と小さく答えスーッとどこかへ行く。
「破局だな」
「米倉、言いすぎ」
面白そうに言う秀に結奈が怒る。
その怒るって行動が余計に私を不安にさせる。
義旭くんにシカトされるのは初めてのこと。
シカトってキツイんだね。
なんだか寂しいな、なんて思いながら私はウサ耳を付けて仕事に取りかかる。
「明日香ー、これ、運んで」
私は積極的に店を手伝う。
「いらっしゃいませっ!」
「おー、明日香ちゃん。本当に耳つけてる」
昨日見にきた松崎先輩達が笑いながら教室に入ってくる。
「伊達弟は?いる?」
店内をキョロキョロしながら先輩方が義旭くんを探した。
「まだいないですよ。あと30分後に来ます」
私が言うと先輩方は席についた。
「あいつ怖いけど、いないならいないで何か寂しいよな」
松崎先輩と一緒に来ていた先輩がメニューを見ながら呟く。
「あいつあっての明日香ちゃんだもんな」
「……そうですか?」
「そりゃ、そうだよー。
そりゃ、明日香ちゃんはめちゃくちゃ可愛いよ?
でも伊達弟の為に頑張る明日香ちゃんが一番、可愛い」
そう言って笑いながら注文した。
それに続いて他の先輩も言ってくる。
「伊達弟なんてもし明日香ちゃんと付き合ってなかったら、まじでただの冷たい後輩だからな」
そして私を見て微笑んだ。
「俺らが卒業しても二人、仲良くね」
「もちろんですよっ!私の愛は永遠です!」
秀に「破局寸前」って言われてます、なんて言えなかった。
まぁ、破局なんてしないから全然良いんだけどね。
「おーい!注文まだなんですけどー」
すごく大きな声が聞こえて振り返ると他校の人。
「うわー、南堵の制服だ」
松崎先輩が席を立って小声で呟く。
「ごめん、テイクアウトに変えてもらえる?」
南堵高校っていうのはこの辺ですごく評判の悪い私立校。
何かっていうと絡んでくるタチの悪い人達。
まぁ、良い人もいるんだろうけど……。
とりあえずこの人達はどう見ても良い人ではないよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます